物件を購入するため、組むローンには不動産投資ローンと住宅ローンがあります。不動産投資に利用する物件は不動産投資ローンを組んで購入しますが、住宅ローンは借入目的が居住用の住宅の購入に限られるため、基本的には不動産投資に利用できません。
しかし、1つの建物に住居用のスペースと賃貸用のスペースを備える賃貸併用住宅であれば、住宅ローンを利用して不動産投資にも利用できる物件を購入できます。本記事では住宅ローンが組める賃貸併用住宅のメリットとデメリットについて解説します。
賃貸併用住宅とは
賃貸併用住宅は住居としての役割と、賃貸で収入を得る役割の2つを合わせ持った住居のことです。設計のパターンは、大きく分けて1階部分は居住用で2階部分を第三者に貸し出すスペースにする上下に分ける設計と、縦割りに分割する設計の2種類です。
建物の階数を増やす場合は、賃貸部分と住居部分だけでなく、店舗や事務所を併設した賃貸併用住宅もあります。他にも戸建住宅とアパートを合体させるタイプや、アパートの一部を自身の住居として利用する不動産投資に特化した賃貸併用住宅も存在します。
賃貸併用住宅は住宅ローンで融資が受けられる
賃貸併用住宅は不動産投資に利用可能でありながら、不動産投資ローンよりも金利が安い傾向にある住宅ローンで融資を受けられる物件です。ただし、住宅の床面積に占める居住用スペースの割合が50%以上であることを多くの銀行が条件としています。
店舗や事務所も併設した物件や、アパートやマンションに住宅部分を併設した物件はこの条件を満たすことが難しいです。しかし、住居部分と賃貸部分を半分に分けた賃貸併用住宅であれば住宅ローンで融資を受けられます。
銀行によっては、居住用スペースの割合が50%以下であっても住宅ローンで融資が受けられる場合もあります。しかし、後ほど詳しく解説する住宅ローン控除の要件にも床面積が50%以上であることが指定されているので、住宅ローン控除を受けるために賃貸併用住宅を購入するなら、居住用スペースの割合に気をつけましょう。
投資用物件と比較すると収益は下がる
賃貸併用住宅は賃貸機能も有する住宅であるため、住宅部分からは利益が発生せず純粋な投資用物件と比較すると収益は落ちます。また、住宅ローンではなく不動産投資ローンで物件を購入したほうが金利は高いですが、融資限度額は大きくなりやすいです。
よって、不動産投資をメインに収益を得たいと考えている方に賃貸併用住宅は不向きです。しかし、住宅の購入をメインに考えている方で不動産投資に興味があるなら、住宅用の物件と投資用の物件を分けて購入する必要がないメリットがあります。
住宅をメインにするなら家賃収入を住宅ローンの返済に充てる運用方法が考えられます。通常の住宅と異なり、家賃収入を返済原資にできるので返済の負担が軽減されます。居住用の物件の購入をメインに不動産投資も検討するのであれば最適になりやすい物件です。
賃貸併用住宅のメリット
賃貸併用住宅のメリットとしては、次のようなものがあります。
- 住宅ローン控除が受けられる
- 家賃収入で返済負担が軽減される
それぞれ詳しく解説していきます。
1.住宅ローン控除が受けられる
賃貸併用住宅を住宅ローンで購入すると、節税効果が高い税額控除が受けられる住宅ローン控除(住宅借入金特別控除)が受けられます。控除率は住宅ローンの年末残高の1%です。例えば、住宅ローンの年末残高が3,000万円であれば、「3,000万円×1%=30万円」の税額控除になります。
ただし、住宅ローン控除を受けるためには下記の条件があります。
- 床面積が50平方メートル以上で、居住部分が50%以上
- 新築又は取得から半年以内に居住する
- 控除を受ける各年の12月31日に居住している
- 合計所得金額が3,000万円以下
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
賃貸併用住宅の設計の条件は、全体の面積に占める居住部分の割合を50%以上にしたうえで、居住部分の床面積を50平方メートル以上にする必要があります。設計を間違えるとその時点で住宅ローン控除が受けられなくなるので気をつけましょう。
賃貸併用住宅を実際には居住用として利用しない場合は、住宅ローン控除が適用されません。住宅ローンの借入目的にも反するので、賃貸併用住宅は必ず居住用の物件として利用するようにしましょう。
住宅ローン控除には所得制限があり、その年の合計所得金額が3,000万円以下であることが条件となっていますが、このコロナ禍における状況を考慮して令和3年度税制改正で住宅ローン控除の条件を緩和しました。令和3年1月1日から令和4年12月31日までに入居するのが条件となりますが、居住部分の床面積が40平方メートル以上、50平方メートル未満で合計所得金額が1,000万円以下の方でも控除を受けられるようになります。ただし年度ごとに判定されるので、昨年は控除を受けられても所得によっては、今年は控除が受けられない可能性があります。
住宅ローン控除を受けるためには住宅ローンの返済期間を10年以上にする必要があります。返済期間短縮型の繰り上げ返済を利用した結果、返済期間が10年以下になってしまった場合も住宅ローン控除が受けられなくなるので気をつけましょう。
2.家賃収入で返済負担が軽減される
賃貸併用住宅は賃貸部分で発生した収入を住宅ローンの返済原資にできます。給与収入や貯蓄のみを返済に充てる通常の住居よりも返済の負担を軽減可能です。
ローンを返済した後も賃貸部分を運用し続ければ安定した収益が得られます。最初は居住用のスペースとして利用し、後から賃貸部分として運用するケースでもリタイア後の重要な収入源となるでしょう。
賃貸併用住宅のデメリット
賃貸併用住宅には以下のようなデメリットもあります。
- 設計の難易度が高い
- 売却が難しくなる
それぞれについて解説していきます。
設計の難易度が高い
賃貸併用住宅は自身の居住が前提の物件であるため、自宅として快適に利用できるように設計しなくてはなりません。さらに入居者も満足する設計でなければ空室リスクが高まるので、それぞれが快適に生活できる設計にする必要があります。
設計を間違えれば普段の生活が不便になるだけでなく、入居者との距離が近いためにトラブルに発展する可能性も考えられます。そのうえで、住宅ローン控除の条件を満たす必要があるので、通常の住宅と比較すると設計の難易度は高いです。
売却が難しくなる
賃貸併用住宅は物件の性質上、買い手が見つかりにくいです。なぜなら、居住専用の物件を求めている方に賃貸併用住宅は需要がないからです。
設計に失敗すると投資用の物件としての価値も減少するので、さらに買い手が見つかりにくくなる悪循環が発生します。最悪の場合は、買い手が見つかる内装に改修する必要も出てくるでしょう。
賃貸併用住宅は設計に失敗したときのリスクが高いので慎重に計画しましょう。物件を売却することになっても問題がないように収益性を考えた設計にして、投資用物件としての価値を高めることが重要です。
賃貸併用住宅を不動産投資に利用するなら計画的に
住宅ローンで賃貸併用住宅を購入し、不動産投資に利用するなら計画性が重要です。なぜなら、住宅ローン控除の条件を満たしたうえで、自身も入居者も快適に過ごせる収益性の高い物件が理想になるため設計難易度が非常に高いからです。
しかし、上手く設計できたのであれば、不動産投資ローンよりも低い金利かつ税制的にも有利な住宅ローンを利用し、通常の住宅にはない家賃収入を得られるようになります。賃貸併用住宅は通常の住宅や、投資用物件以上に計画性を持って設計するようにしましょう。(提供:Incomepress )
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