不動産投資を始める場合、マンションやアパートといった現物不動産のほかに「J-REIT」を購入する方法もあります。J-REITは少額から不動産に投資できるため、初心者でも比較的始めやすいでしょう。今回はJ-REITの利回りや種類、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
J-REITとは
J-REIT(不動産投資信託)とは、複数の投資家から集めた資金を一つにまとめ、オフィスビルや商業施設、マンションなどの収益不動産に投資し、その賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。投資信託の一種ですが、投資対象は株式ではなく不動産になります。
J-REITは証券取引所に上場しており、株式と同じように売買できるのが特徴です。個人では購入するのが難しい、都心のオフィスビルや商業施設などにも少額から投資できます。不動産の取得や維持管理などは専門家が行うため、時間や手間がかかりません。
ARES(一般社団法人不動産証券化協会)によると、2021年2月末現在、J-REITは62銘柄が上場しており、時価総額は約15兆円です。
J-REITの利回りが高い理由
J-REITは、投資金額に応じて定期的に分配金を受け取れます。2021年2月末現在、J-REITの平均分配金利回りは3.71%で、10年国債利回り(0.15%)や東証1部株式利回り(1.96%)に比べると高めです。
J-REITは「収益の90%超を分配する」などの一定の条件を満たすと、実質的に法人税が免除されます。他の金融商品よりも分配金を出しやすい仕組みがあるため、分配金利回りは高い傾向にあります。
J-REITの種類
J-REITは、保有不動産の用途などに応じていくつかの種類に分けられます。ここでは、J-REITの保有不動産の用途や種類について確認していきましょう。
保有不動産の主な用途
2021年2月末現在、J-REITの保有不動産の用途別比率は以下の通りです。
- オフィス:40.8%
- 商業施設:16.6%
- 住宅:14.0%
- 物流施設:18.3%
- ホテル:7.9%
- ヘルスケア:1.3%
- その他:1.3%
オフィスビルの割合が最も高く、J-REIT全体の4割を占めています。また、商業施設や住宅(マンションなど)、物流施設の割合も比較的高めです。割合は小さいものの、ホテルやヘルスケア(病院、高齢者施設)に投資を行う銘柄もあります。
J-REITは3種類に分けられる
J-REITは以下の3つに分類できます。
- 単一用途型:特定の用途の不動産に投資する
- 複合型:2つの用途の不動産を組み合わせて投資する
- 総合型:3つ以上の用途の不動産を組み合わせて投資する
単一用途型は、「オフィスビル特化」「住居特化」など、特定の用途の不動産に投資を行うJ-REITです。複合型は2つ、総合型は3つ以上の用途の不動産を組み合わせて投資を行います。
J-REITの投資対象不動産は、用途によって特徴が異なります。たとえば、オフィスビルや商業施設は賃料が景気に左右される傾向にあります。また、住居は景気の影響を受けにくく、ホテルは観光客数に影響を受けます。
J-REITに投資する際は、不動産の用途ごとの特徴を踏まえた上で銘柄を選定することが大切です。特定の用途の不動産に投資したい場合は単一用途型、複数の用途の不動産に分散投資をしたい場合は複合型や総合型を選ぶといいでしょう。
J-REITのメリット
J-REITのメリットは以下の通りです。
少額から不動産投資ができる
不動産を購入するにはまとまったお金が必要です。しかし、J-REITなら少額から不動産投資を始められます。最低投資金額は銘柄によって異なりますが、10万円台で購入できる銘柄が多く、中には数万円から投資できる銘柄もあります。
また、オフィスビルや商業施設、物流施設など、個人が直接購入するのが難しい不動産に投資できるのも魅力です。J-REITを利用すれば、少額からさまざまな種類の不動産に分散投資ができます。
分配金利回りが高い
J-REITの平均分配金利回りは約4%で、中には利回りが5%を超える銘柄もあります。決算期を迎えるたびに分配金を受け取れるので、複数の銘柄に投資して毎月分配金を受け取ることも可能です。インカム収入を目的に投資を行う場合、J-REITの分配金利回りの高さはメリットといえるでしょう。
換金性が高い
マンションやアパートを売却するには買い手を見つける必要があるため、現金化に時間がかかります。J-REITは証券取引所に上場しているので換金性が高く、早期に売却可能です。急にまとまったお金が必要になっても、証券会社を通じて売り注文を出せば数日で現金化できます。
J-REITのデメリット
一方で、J-REITには以下のようなデメリットもあります。
元本割れリスクがある
J-REITは株式と同じように価格が変動するため、購入時より価格が上昇すれば売却益を得られますが、下落して元本割れするかもしれません。受け取った分配金の合計額を上回る売却損が発生すれば、最終的な投資結果はマイナスとなります。
J-REITの分配金利回りの高さは魅力ですが、売買タイミングを見極める必要があるでしょう。特に分配金を受け取る権利が確定する「権利付き最終日」前後は、投資口価格が大きく変動する傾向にあるので注意が必要です。
融資を利用できない
投資用マンションやアパートは高額ですが、金融機関の融資を利用して購入できます。収益不動産からの家賃収入でローンを返済できるため、全額自己資金で投資するよりも効率よく資産を増やすことが可能です。
一方で、J-REITは融資ができないので、自己資金で投資しなくてはなりません。ローン返済の心配はないものの、資産を増やすまでに時間がかかります。投資金額が小さいうちは、大きな利益は期待できないでしょう。
毎月定額の収入を得られない
J-REITは、現物不動産投資のように毎月定額の収入を得られないのもデメリットです。投資用マンションやアパートは毎月家賃収入を得られるため、給与以外の副収入や年金代わりとして活用できます。
J-REITは、年1~2回の決算ごとに分配金を受け取る仕組みです。複数の銘柄を組み合わせて毎月分配金を受け取ることも可能ですが、銘柄によって投資口価格や分配金利回りは異なるので、毎月定額の収入を得るのは難しいでしょう。
J-REITを売買する方法
証券会社で口座開設すると、株式と同じようにJ-REITを売買できます。J-REITは株式と同じ売買手数料がかかるので、なるべく手数料が安い証券会社を選ぶのがおすすめです。
一般的にネット証券は手数料が安い傾向にあり、中には一定額まで手数料無料で取引できる証券会社もあります。J-REITに投資する場合は複数の証券会社を比較して、手数料が安い会社で口座開設しましょう。
投資信託やETFを通してJ-REITに投資することも可能
J-REITは個別銘柄だけでなく、投資信託やETFを利用してJ-REIT市場全体に投資することも可能です。たとえば、東証REIT指数に連動する投資成果を目指す投資信託やETFを購入すれば、J-REIT全銘柄に少額から分散投資ができます。特定の銘柄に投資するより、リスクの軽減が期待できるでしょう。
また、投資信託であれば積立投資にも対応しています。証券会社が毎月自動的に購入してくれるので、初心者でも無理なく投資に取り組めます。
ただし、投資信託やETFを保有している間は「信託報酬」と呼ばれる手数料がかかります。運用期間が長くなるほど、信託報酬が投資成果に与える影響は大きくなります。投資信託やETFでJ-REITに投資する場合は、複数の商品を比較してなるべく信託報酬が低いファンドを選びましょう。
少額から不動産に投資したいならJ-REITを検討しよう
J-REITは、少額からオフィスビルや商業施設などの不動産に投資できるのが魅力です。金融機関の融資は利用できませんが、現物不動産に比べると気軽に投資を始められます。少額から不動産投資を試してみたい場合は、J-REITを検討してみてはいかがでしょうか。(提供:Incomepress )
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