インフレ(物価上昇)という言葉は、一度は聞いたことがあるワードだと思います。しかし、インフレは単なる物価の上昇だけでなく、経済全体の動きと密接な関係にあります。では、インフレとは実際にどのような状態で経済に影響を与えるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
インフレとは?
インフレとは「インフレーション」の略式名称で、物価の上昇を意味します。物価の上昇には2019年10月の郵便料金の値上げのような消費税率引き上げによるものもあれば、2020年の4月から値上げした食用油のような原材料の高騰によるものまで、その原因は多岐に渡ります。
インフレには良いインフレと悪いインフレがある
インフレにはその原因によって2つのパターンがあります。
一つは、景気が良くなり、需要が拡大するために起こるインフレです。物価は需要と供給のバランスによって決まることから、需要が多くなればそれに応じて物価もあがります。通常、インフレとは景気が良くなって需要が増えることによって発生すると言われています。しかし、そうではないインフレもあり、それは景気が後退しているにもかかわらず、物価が上昇するケースです。このことを「スタグフレーション」といいます。
景気後退局面においては、需要が減り、商品が売れないことによって物価が下がるのが一般的ですが、スタグフレーションの状態では、需要を満たす供給ができないことが原因で物価が上昇するという現象が起きていることです。商品を供給するには、当然ながら原料費や運送費、人件費などのコストがかかります。しかし、人手不足による人件費のアップや材料価格の高騰により、その費用を上乗せする必要が発生するため、景気が後退しているにもかかわらず、必然的に物価が高くなるという結果を招くことになります。
現在、日本は景気がそこまで回復していないにもかかわらず、物価が少しずつ上昇しているという、「スタグフレーション」の状況下にあると言えるでしょう。
インフレが金利に与える影響とは?
では、インフレが金利に与える影響とはどのような仕組みなのでしょうか。
物価の上昇が金利に影響する
インフレによる物価の上昇でよく言われるのは「お金の価値が下がる」ということです。例えば、これまで100円で買えていたコーヒーが200円に値上がりすると、それまで持っていた100円の価値は半分の2分の1に下がることになります。
このように日本円の価値が下がると、為替に影響を与えます。つまり「円の力が弱くなる=円安」になる可能性が高まることから、輸出企業においては有利に働き、企業利益が増えることにつながります。その結果、賃金が上昇して消費の拡大につながり、最終的には景気拡大局面に向かうこととなります。
そして景気拡大局面においては、長期金利が上昇しやすくなると言われています。なぜなら、日本銀行の金融政策の目標は、物価の安定にあるからです。
インフレは住宅ローンに影響する?
インフレが住宅ローンに及ぼす影響として注目すべきは、ローン金利でしょう。一般的にインフレが金利の上昇につながる点については上記で述べたとおりですが、実際はどうなのでしょうか。
住宅ローンの金利が決まる仕組み
住宅ローンの金利はタイプによって指標が異なります。半年ごとに金利が見直される変動金利については「無担保コールレート」という指標を用いて決まります。この「無担保コールレート」とは、短期金融市場における代表的な取引で、翌営業日を返済期日とするものにかかる金利のことをいいます。
そして、固定金利は長期金利の代表的な指標である、「新発10年国債」の利回りによって決定されます。
ちなみに2021年4月16日時点の無担保コールレートはマイナス0.014%、新発10年国債の利回りは0.085%となっています。
住宅ローンの金利は景気に左右される
住宅ローンのみならず、各種ローンに適用される金利は景気と密接に関係があります。
一般的に、景気がよくなるときは消費者の購買意欲が増します。景気とともに個人消費が増大すれば、企業はモノを多く生産し設備に投資する意欲が増えることが予想されています。これらによって、一般的に資金需要が高まることが見込まれるため、金利が上がると考えられています。反対に、景気の後退とともに個人消費が減退すれば、企業はモノの生産を控えるため、資金需要が低下し、金利は下がると言われています。
住宅ローン金利が上昇した際の影響
住宅ローン金利が上昇した際の影響を一番に考えなければいけないのは、変動金利を選んでいる人でしょう。
変動金利の場合、半年に1度金利が見直されることとなっていますが、「5年ルール」そして「125%ルール」というものが存在します。前者は金利が見直されたとしても5年間は毎月の返済額は変わらないというもの、そして後者は5年後に返済額の見直しを行ったとしても、見直し前の125%までが限度とされています。そうすると、大幅な金利上昇があった場合、利息が毎月の返済額を上回り、未払い利息が発生する可能性があります。
今後金利が上昇する可能性は?
日本銀行における金融緩和政策については、目標としている物価上昇率の指標となる消費者物価指数が2021年2月時点で前年同月比0.2%の上昇(※生産食品及びエネルギー領域は除く)となっており、2022年の物価上昇率も0.7%にとどまると予想しています。そして、2021年3月に行った緩和政策の点検の結果、これまで0%程度としていた長期金利の変動幅については、プラスマイナス0.25%程度とすることを明確にしています。したがって、今後は若干の金利上昇の可能性があるものの、その幅についてはそこまで大きくないのではないかと予想されます。
今後の日本経済の動向は?
コロナワクチンの接種が開始され、今後の収束そして経済活動の再開が予想されていますが、実際に今後の日本経済の動向についてはどのように考えるべきなのでしょうか。
景気の動向を知るにはGDP
景気の動向を知るための一つの指標としてGDPが挙げられます。GDPとは「国内総生産」のことで、国内で一定期間の間に生産されたモノやサービスの付加価値の合計金額のことをいいます。このGDPが前年同期や前期と比べてどのくらい増減したのかを見ることで、国内の景気変動や経済成長を推定することができます。
内閣府が2021年3月に発表した「2020年10~12月期四半期別GDP速報」によると、日本の2020年10月~12月のGDPについては前期と比べ、年率で11.7%増と大幅な伸びとなっています。これは輸出・鉱工業生産が、自動車関連から資本財や情報関連に裾野を拡げながら増加を続けており、その影響から企業収益や業況感の改善を通じて、製造業を中心とした機械投資の持ち直しにつながった結果といえます。
とはいえ、2020年は年間全体で見るとマイナス4.8%となっており、2021年に入ってからも、長引く新型コロナウイルス感染症拡大の影響で回復の勢いは衰えています。実際に日本銀行が2021年1月に発表している「経済・物価情勢の展望」を見ても、2021年度の実質GDPの伸びの見通しは3.9%、そして2022年においては1.8%と、今後の経済成長については若干の伸びを期待は期待できるものの、大幅な景気回復までには至らないと考えられています。
2022年の税制改正に注意しておこう!
コロナ禍における土地価格の下落が顕著になっている今、2021年の税制改正によって住宅ローン控除適用期間の契約および入居期間の要件が延長となったことから、住宅の駆け込み需要が予想されます。とはいえ、今回の税制改正においては、「住宅ローンの年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率の在り方を2022年度税制改正において見直すことする」とされていることには注意が必要です。
なぜなら、2022年の税制改正においてそのような見直しがなされれば、2021年において住宅を購入したとしても、契約時の適用金利が1%よりも低い場合、控除率1%の恩恵を受けることができるのは2021年の1年分のみとなってしまうからです。
もちろんまだそうなるとはっきり決まったわけではありませんが、今後の住宅ローン金利についてはそこまでの大幅な上昇は考えられにくいこと、そして税制改正の今後の動向を鑑み、住宅の購入そして金利プランの選択には慎重に考えて判断する必要があるといえるでしょう。(提供:Incomepress )
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