近藤 繁社長
近藤 繁社長

 中小企業支援事業をメーンとするフィンテック企業がココペリ(4167)だ。2018年4月に立ち上げた新事業が軌道に乗り、昨年12月には東証マザーズにも上場。サービスを利用する中小企業のみならず、間に入る金融機関にもメリットをもたらす主力事業のビジネスモデルで、今、注目を集めている。

近藤 繁社長
プロフィール こんどう・しげる
1978年生まれ、愛知県出身。2002年、慶應義塾大学理工学部卒業後、みずほ銀行に入行、中小企業向け融資業務に従事。06年、ITベンチャー企業に転職し、上場準備に携わる。07年、ココペリインキュベート(現ココペリ)を設立、代表取締役CEOに就任(現任)。

既に57金融機関が導入
中小企業経営支援PF

 同社のセグメントは、ビジネスプラットフォーム事業の単一セグメントだ。具体的なサービスは、金融機関を通じて中小企業を支援する「Big Advance」(以下、BA)、中小企業データの活用に特化した同社独自のAIモジュールである「FAI」、そして、ITサポートの3つ。FAIに関しては、企業データをAIで分析、アウトプットをBA内にフィードバックしている。同社の近年の売上伸長の裏には、主力事業であるBAの立ち上げおよび本格稼働がある。

 BAはBtoB SaaSモデルの中小企業向け経営支援プラットフォームだ。18年スタートと、同社の事業では最も新しいが、売上は今期2Q時点で全体の8割以上を占めている。全体の枠組みとしては、まずココペリ社が、地方銀行や信用組合といった金融機関と契約を結び、その金融機関ごとに「〇×BigAdvance」という名でシステムを構築する。金融機関の取引先のうち利用を希望する企業は、月額利用料を支払うことで、ビジネスマッチングや福利厚生、社内間もしくは金融機関とのビジネスチャットといったシステム内の様々なサービスを使えるようになる。取引先へのシステムの説明や入力サポートといった実務的な部分は、各金融機関が担う。

 導入にあたり金融機関が同社に支払う費用は、初期費用+月額利用料。また、サービス利用企業(会員)が支払う月3000円の料金は、金融機関と同社間での折半となる。

 この仕組みの利点は、中小企業主体の会員企業が、自前では揃えきれない機能を少額の費用で補完できるようになると共に、金融機関側も、このサービスを介して取引先との関係を深め、ビジネスに繋げていく機会を得られる点にある。また、各BAはシステム連携しており、利用する金融機関が異なる企業同士のビジネスマッチングも可能。同じ金融機関の取引先同士での従来型のマッチングとは異なり、その母数の多さや範囲の広さから、成約率は高いという。

「このシステムではマッチングニーズの登録ができ、現在は月に3000件以上の商談申込が行われております」(近藤繁社長) 

 こうしたBAのヒットにより、売上は増加。前期売上高は4億1300万円、今期予想は10億円(前期比142・5%増)の見込みとなっている。

金融機関とは「競合」せず
「協業」の道を

 同社は07年創業。以来、一貫して中小企業支援を行う。当初はバックオフィスのサポートを通じ、中小企業に直接アプローチしていた。15年には、中小企業向け専門家相談プラットフォームであるSHARESをリリース。利用者数は伸びたが、一方で、ジレンマも生まれた。

「WEB広告をたくさん打っても、届くのはあくまでWEBを活用している特定の人だけ。本当に困っている、本当にサービスを届けたい人には、なかなか届かないと感じていました」(同氏)

 模索を続ける中で、経済産業省主催の2017年度「飛躍 Next Enterprise」プロジェクトに採択され、アメリカ・シリコンバレーを視察。業界の成熟度が日本よりも先行する彼の地で、金融機関と協業した形での中小企業支援の着想を得る。

「当初は金融機関とフィンテック企業は競合すると言われていましたが、我々が行った時には、金融機関とフィンテック企業は協業しており、それを見た瞬間に、日本のフィンテックもこちらに行きつくだろうと思いました。そのため最初から、金融機関とは競合しない、フィンは金融機関がやってください、我々はテックをやります、一緒にやっていきましょう、と。それがけっこう大きなきっかけになりましたね」(同氏)

 また、地方金融機関の側でも、近年では厳しい経営環境下にあり、地域の企業と関係を深めるきっかけを求めていた。

会員企業はこの3年で
15万社を目標に

 こうしたマーケットの背景を受け、同社は2018年4月、横浜信用金庫と共同開発したBAを発表。以降、金融庁、財務局、第二地方銀行協会等から講演・登壇依頼やレポート掲載等が相次ぎ、各方面からの注目度は高まっていった。BAの導入金融機関は、発表から丸2年後の20年3月には42社、そして現在では57社へ。それに伴い、会員企業数は3万8773社にまで増大した(※20年12月末時点)。

 今後に関して近藤社長は、「より多くの中小企業を支援していくため、まずは2〜3年で金融機関100社、会員企業15万社、というところを目指している」と話す。なお、仮に15万社が会員となれば、同社としては、会員企業からの収入だけで年間27億円の売上が見込める計算だ。

「日本は中小企業が多く、働く人も70%が中小企業。中小企業が成長していかないと日本も成長していかないし地方も沈没していってしまう。そこを何とかしたいという思いがあります。今、これだけテクノロジーが進化してくると、小さくてもたとえばいいモノを作っていればいきなり世界で売れたりするわけで、光る会社は色々なところに進出していけるチャンスです。中小企業が誇りをもって生きていけるような、そういう世界を創りたいと考えています」(同氏)

(提供=青潮出版株式会社