東京都23区の人口動態はコロナ禍で転出超過に転じる
(画像=PIXTA)

コロナ禍で転出超過に転じた東京都23区の人口動態

(総務省「住民基本台帳人口移動報告」)

データサイエンティスト 博士(経済学) / 久永 忠
週刊金融財政事情 2021年4月27日号

 新型コロナの影響が続く中で、東京一極集中の流れは変わったのか。総務省の住民基本台帳人口移動報告をもとに、都道府県レベルの人口移動を捉えてみよう。

 住民基本台帳人口移動報告は、市区町村の住民基本台帳から人口の移動状況を明らかにすることを目的とし、市町村に届け出があった転入者の住所・性別データなどをもとに総務省が作成している。毎月の移動者数を掲載した月報と、年間の移動者数をまとめた年報が公表されている。

 人口移動の特徴は、年度の切り替わりによる進学・就職、人事異動に伴う転勤などを主因として、毎年3月にピークが存在することである。通常このピークは、東京・大阪・愛知など大都市圏においては転入超過、大都市圏以外では転出超過というかたちで表れる。

 コロナ禍の下、人口移動には変化が表れている(図表)。2020年5月における東京都の移動者数は、総務省が外国人を含む移動者数の集計を開始した13年7月以降で初めて、1,069人の転出超過となった。翌6月には一時的に1,669人の転入超過になったが、7月以降は転出超過に再び転じ、12月には過去最大となる4,648人の転出超過となっている。

 これらの数字を掘り下げると、東京都23区(特別区部)とそれ以外の市域部では様相が異なる。20年5月の人口移動は、東京都特別区部が1,314人の転出超過であった一方で、同市域部は245人の転入超過であった。昨年12月においても、東京都特別区部が6,211人の転出超過に対し、同市域部は1,563人の転入超過であった。

 次に、神奈川県・埼玉県・千葉県を含む東京圏に目を移してみよう。昨年7月以降、東京都の転出超過とほぼ同数の転入超過が、神奈川県ほか東京都の隣接県で表れている。また、同期間において東京圏の人口移動はゼロを中心に増減を繰り返す傾向にあった。これらの事実に基づいて推察すると、東京都特別区部から同市域部および隣接県への移動が大多数を占め、東京圏を脱するような転出はほとんどなかったように思われる。

 テレワークの進展や「密」を避ける観点から、3月の人口移動のピークでも、今年は例年のような東京都の転入超過とはならないのではないか。4月27日の公表が注目される。

東京都23区の人口動態はコロナ禍で転出超過に転じる
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(提供:きんざいOnlineより)