年内の日経平均3万2,000円台到達は可能か
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成長業種主導で年内の日経平均3万2,000円台到達は可能

野村証券 シニア・ストラテジスト / 伊藤 高志
週刊金融財政事情 2021年4月27日号

 ゴールデンウイーク明けから、3月決算企業の決算発表が本格化する。野村証券では、4月16日時点で全業種(除く金融)の2020年度経常増益率を前年度比1.3%減とみている。20年度の予想増益率は、新型コロナ感染拡大に伴い下方修正が進み、昨秋ごろには同20%を超える減益を見込んでいた。その後の世界経済のⅤ字型回復などから、最終的に前年度比ほぼ横ばいで着地するとみられる。

 他方、株価は昨年8月ごろにはコロナ前の水準を回復し、足元ではコロナ前をはるかに上回る水準に達している。期中で業績の方向性が180度変わったとはいえ、20年度利益で現在の株価を説明するのは難しく、将来の利益を先取りしていると考えるのが自然だろう。そこで、新型コロナの影響が希薄になるであろう22年度において、各業種がどの程度の利益水準に達するのか、見てみよう(図表)。

 全業種(除く金融)ベースでは、過去のピークである18年度の経常利益に対し、22年度には111%に回復するとみられている。18年度経常利益を上回ると予想される業種には、新型コロナを契機に、①加速するIT投資、②拡大する環境対応、③それらを後押しするための企業の設備投資、④生活スタイルの変化──などの恩恵が大きいという特徴が見られる。他方、製造業ではコモディティー色の強い素材や資源、非製造業では個人向けサービス(空運、電鉄)は回復が遅れる。これらがコロナ前の需要に戻るには相当な時間を要しそうだ。

 業績面での二極化を受け、株式市場でも評価の二極化が進んでいる。全業種(除く金融)を上回る利益水準が見込まれる業種の平均株価純資産倍率(PBR)は、3倍を超えている。前述の4類型は、具体的には、電機精密や自動車、ロボット、ソフトウエア等の業種からなる。これらはもともと日本企業の中でも収益性が高い上、新型コロナを契機に、従来想定を大きく上回る需要が期待できることが高評価の源泉である。

 このように、株価がコロナ前の水準を更新すると予測した背景には、より収益性・成長性の高い業種に需要が集まり、株式市場でもそういった業種をより高く評価する「掛け算」の存在が指摘できる。IT投資や環境対応に国や企業が資源を傾斜配分する構図が崩れる可能性も低い。年内に日経平均株価が3万2,000円程度に達するために、さほど困難は伴わないだろう。

年内の日経平均3万2,000円台到達は可能か
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(提供:きんざいOnlineより)