iDeCo(イデコ)は私的年金制度として税制優遇が手厚いため、会社員にとってもメリットがある。ここでは、これから加入したいと考えている会社員に向けてiDeCoの始め方を解説しよう。初心者が迷いがちな金融機関や商品の選び方、注意点などもあわせて紹介したい。

1,iDeCo(イデコ)とは?メリットとデメリットを解説

会社員のiDeCo(イデコ)の始め方は?金融機関選びから商品選びまで3つのステップを徹底解説
(画像=SB /stock.adobe.com)

まずはiDeCoの制度と、加入するメリットやデメリットを確認しよう。

iDeCo(イデコ)は60歳未満が加入できる私的年金制度

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、自分で積み立てたお金を自身で運用して60歳以降に受け取る、任意加入の私的年金制度だ。掛金や運用益などに対する税制上の優遇もある。20歳以上60歳未満なら原則誰でもiDeCoに加入できるが、勤め先で企業年金に加入する一部の会社員など、加入できないケースもある。

iDeCo(イデコ)には3つの税制優遇メリットがある

iDeCoのメリットは掛金の拠出時、運用時、受け取り時にあるが、これから始める場合は特に拠出時と運用時のメリットが大きい。

iDeCoの拠出時には掛金の全額が所得控除の対象になり、所得税と住民税が安くなる。例えば所得税率20%・住民税率10%の場合、月2万円拠出すれば年間7万2,000円(=2万×12ヵ月×30%)の税金が抑えられる。これが毎年続くため、仮にiDeCoの運用で利益が出なかったとしてもお得な制度だ。特に所得税率の高い人ほどiDeCoの大きな恩恵が受けられる。

iDeCo運用時にも税金面で優遇が受けられる。投資で得た利益には20.315%の税金が発生するが、iDeCoでは非課税の取り扱いだ。たとえば投資で100万円の利益が出た場合、税金が差し引かれた後の手取りは79万6,850円となるが、非課税ならばそのまま100万円が手に入る。iDeCoの運用は長期に及び、掛金や運用状況によって数百万円単位で利益が発生する可能性もあるため、税金の有無は運用成果に大きく影響する。

iDeCo(イデコ)のデメリットは引き出し制限と手数料

iDeCoは私的年金制度という位置づけであり、一度拠出した資金は60歳まで引き出しできない。運用商品の変更は自由だが、途中で資金が必要になっても換金できない仕組みである点は注意したい。逆に考えれば確実にiDeCoで老後資金の積立ができるため、自分年金作りとしては適した制度である。

iDeCoは口座維持に手数料がかかることもデメリットだ。加入時は1回のみ2,829円かかり、運用中も月額で最低171円発生する。iDeCo 加入時の手数料は共通であるものの、運用中の手数料は金融機関によって異なる。所得控除できるため手数料がかかってもiDeCoはお得だが、専業主婦(夫)など所得のない場合はコストの発生する口座で運用することになるので、iDeCoではない別の選択肢を検討するほうがいいかもしれない。

2,iDeCo(イデコ)の始め方——ステップ1:金融機関選び

iDeCoを始める際には、まずは金融機関選びが重要になる。iDeCoは、金融機関によって取り扱い商品や手数料が異なる。金融機関は、以下の3つのポイントを比較して選ぼう。

選び方1,商品ラインアップ

iDeCoで購入できる商品は、金融機関によって3本しかないところもあれば大手ネット証券のように数十本取り扱うところもある。重要なのは運用したいと思える商品があるかどうかだ。

積極的な運用ではアクティブファンドを比較したり、保守的な運用では債券系やバランスファンドの取り扱いを確認したりする必要があるだろう。金融機関のホームページからはiDeCoの商品ラインアップを閲覧できる。どんな運用をしたいかまだわからない場合は、資産カテゴリーごとにバランスよく商品がそろっている金融機関を検討するといいだろう。

選び方2,サポート体制

iDeCoの金融機関選びはサポート体制も比較したい。日頃から運用をしていたりウェブ手続きに慣れていたりすれば優先度は低いかもしれないが、必要なサポートがほしい場合はチェックしておこう。

iDeCoのサポート体制は一般的にウェブ、コールセンター、窓口だが、3つとも用意されている金融機関はさほど多くない。例えばウェブが苦手なのでコールセンターや窓口の問い合わせ先もほしいような場合は、事前にサポート体制の確認をしておきたい。平日が忙しい人は、土日祝に相談ができるかもチェックするといいだろう。

選び方3,手数料水準

iDeCoの金融機関選びでは、口座管理手数料と商品の手数料も比較しよう。

口座管理手数料はどんなに安くても月額171円はかかるが、高いところだと611円発生する金融機関もある。iDeCoは途中で口座解約ができず投資期間が長期に及ぶため、コストがなるべく安いほうが有利だ。手数料は、海外株式のインデックスファンド同士など似た商品を比較するとわかりやすい。

3,iDeCo(イデコ)の始め方——ステップ2:申込書の取り寄せ・提出

iDeCoに申し込むには、金融機関から「申込書」を取り寄せて必要事項を記載の上で返送する。会社員の場合は、勤め先の事業主に記入してもらう書類がある。

会社員は「事業主証明書」が必要

iDeCoの申し込みの際、会社員は申込書とは別に「事業主の証明書」を勤め先に提出し、戻ってきた証明書を申込書とセットで金融機関に送る必要がある。これはiDeCoの加入希望者が厚生年金保険の被保険者であることと、企業年金の加入状況の確認が必要だからだ。戻ってきた事業主の証明書を見ると、自分の掛金限度額がわかるようにもなっている。会社員の場合、iDeCoの掛金限度額は以下のいずれかだ。

会社員(第2号被保険者) 掛金限度額
会社に企業年金がない 月額2万3,000円(年額27万6,000円)
企業型確定拠出年金に加入 月額2万円(年額24万円)
確定給付企業年金と企業型確定拠出年金に加入 月額1万2,000円(年額14万4,000円)
確定給付企業年金のみに加入
(※iDeCo公式サイトより筆者作成)

iDeCo(イデコ)の掛金と商品を決めて金融機関に必要書類を提出する

事業主の証明書にはiDeCoの掛金額の欄があり先に記入してもよいが、見られたくない場合は書類が戻ってきた後で記入しても問題ない。しかしiDeCoの掛金を給与天引きで支払う「事業主払込」を選択する場合、事業主が代わりに掛金納付をする必要があるため記入しておくとスムーズだ。いずれにせよ事業主の証明書にチェックされた限度額を参照し、無理のない範囲で掛金を設定しよう。

iDeCoで運用する商品は、一般的には申込みの時に一緒に選ぶ必要がある。後から変更もできるため、選べない場合は元本確保型の商品を一旦選択し、必要書類を提出しよう。というのもiDeCoの所得控除は掛金納付がないと適用されないため、早く開始したほうが税金面で有利になるからだ。iDeCoの書類提出から加入まで通常1〜2ヵ月かかることからも早めに手続きしたい。

4,iDeCo(イデコ)の始め方——ステップ3:運用商品選び

iDeCoの商品選びについては、以下の3つのポイントがある。

ポイント1,資産クラスごとの特性を知る

iDeCoの運用商品は、リターンは期待できないが元本の変動がない「元本確保型」と、価格変動はあるが将来的にリターンの期待できる「投資信託」がある。投資信託は何にどんな投資をしているかを確認する必要はあるが、原則として高いリターンを期待できるものはリスク(価格変動)も大きい。一般的に資産クラスの違いによるリスクとリターンの関係は以下のイメージだ。

2.会社員のiDeCo(イデコ)の始め方は?金融機関選びから商品選びまで3つのステップを徹底解説
(画像=※金融庁のサイト「知るぽると」より引用)

バランス型は1つの投資信託で複数の資産を組み合わせており、組入資産の割合次第でリスクとリターンが異なる。次に解説する資産配分を自分で行う必要がないため、初心者に向いている。

ポイント2,リスク許容度に応じて資産配分をする

資産クラスごとの特性を把握したら、リスク許容度に応じて何の資産にどのくらいの割合で投資するのか資産配分を決定しよう。

リスク許容度とは「どの程度価格変動を受け入れて投資できるか」を指し、安定性と収益性のバランスの取り方を表す。一般的に投資は長期になるほどリターンが安定するため、iDeCoのように途中解約ができない場合は運用期間も長くなりリスクも受け入れやすくなる。もちろんリスク許容度は個人ごとにも異なるため、安定性と収益性のどちらを重視したいかによって資産配分を決定しよう。

資産配分の目安として、「自分の年齢=安定資産」と考えれば簡単だ。例えば40歳なら40%を債券に投資し、60%を株式に投資する。こうしておくことで資金が必要な時期が近づくにつれリスクも抑えられるため、守りながら増やす運用ができる。あくまでも目安だが、数値を決めていれば年齢を重ねても資産配分の調整を行いやすい。

資産配分を決定したら、各資産クラスに合わせて個別銘柄を選んでいこう。

ポイント3,個別銘柄を比較して決定する

個別銘柄を比較する時は、同じ種類・同じ資産クラスの投資信託同士を比べるようにしよう。

投資信託の種類は、市場平均に連動するインデックスファンドと積極的にリターンを追求するアクティブファンドがある。手数料の低さやわかりやすさからインデックスファンドのほうが初心者向きと言われるが、しっかり分析できるならアクティブファンドを選んでもいいだろう。ただしiDeCoは商品数が絞られており選択肢が少ないため、違いの生じにくいインデックスファンドが無難かもしれない。

インデックスファンドの比較ポイントとして、最低限以下を確認しよう。

・信託報酬(運用管理費用)
・純資産総額
・ベンチマーク

信託報酬は保有中にかかる手数料のことで、同様の商品なら安いほうがいい。純資産総額は投資信託の規模を表すが、10億円未満など小さすぎる場合は運用を中止し換金する繰上償還になる可能性がある。ベンチマークは日経平均株価などの指数を指し、運用成果の比較基準のことだ。同じ日本株インデックスファンドでも、ベンチマークが日経平均株価かTOPIXかで運用方針が異なるため確認しておきたい。

アクティブファンドは上記に加え運用方針や運用成績なども分析する必要があり、運用結果がファンドマネージャーの腕に左右される面も大きい。初心者の場合そこまで調べるのは難しい可能性があるため、わからなければインデックスファンドを中心に選択しよう。自分のリスク許容度に近いバランスファンドがあれば、それを選ぶのもいいだろう。

5,iDeCo(イデコ)を会社員が始める場合の注意点

会社員の場合、企業年金の状況によってはiDeCoに加入できないケースもある。企業型確定拠出年金に加入している人はiDeCoを利用できない可能性が高い。例えば企業型確定拠出年金に加入しており、自分でも掛金拠出(マッチング拠出)をしているならiDeCoは利用できない。そうでない場合も加入できないことがあるため、iDeCoの利用を考えているのならばまずは会社に確認したい。

6,iDeCo(イデコ)に加入できない会社員も始められるようになる

会社員は比較的企業年金などが充実しており、iDeCoを始めるにあたり制約もあるが、法改正によって2022年10月から約750万人の会社員が新たに加入対象に加わる。企業型確定拠出年金のマッチング拠出と同時利用できない点は同じだが、企業型で掛金拠出をしていなければiDeCoで自分年金を増やすことが可能だ。会社員は選択肢が増えるため、iDeCoをうまく活用してほしい。

執筆・國村功志(資産形成FP)
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも行っている。CFP®️、証券外務員一種

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