近年、少子高齢化の加速によって社会問題となっている人手不足。ここにコロナ禍が直撃し、企業は一段とオフィスのスリム化や生産性の向上を目指す必要が生じています。今回は、組織運営のメソッドを武器に急成長を遂げている識学の安藤広大社長を、金融アナリストの三井智映子さんがインタビュー。安藤社長の識学との出会いから成長持続に向けたポイントなどを伺います。(※インタビューでは、撮影時以外のマスク装着やソーシャルディスタンスの確保など、新型コロナウイルスの感染防止に対する十分な配慮を行っています)

無駄を省きシンプルに―組織運営を変革!
(画像=末松正義、ZUU online)

識者プロフィール

安藤広大 KOUDAI ANDO
識学代表取締役社長/福島ファイヤーボンズ オーナー
1979年大阪生まれ。2002年に早稲田大学を卒業後、株式会社NTTドコモに入社。2006年にライク株式会社に入社し、主要子会社のライクスタッフィング株式会社にて取締役営業部長などを歴任した。2013年に組織運営メソッドの「識学」と出会い独立を決意。2015年に株式会社識学を設立し、2019年には東証マザーズへの上場を果たす。2020年には導入社数が2000社を突破。
三井智映子 CHIEKO MITSUI

金融アナリスト
北海道小樽市出身。NHK教育「イタリア語会話」でデビュー。2011年東京にはモーターショーにてMCデビューを果たす。2014年1月に「五木ひろし特別公演」で八重次役を務めたほか、数々の番組に出演。2012年10月からフィスコリサーチレポーターとしてYahoo!ファイナンスで株価予想などを行うほか、テレビ、雑誌、Webなど活動の場を広げた。2013年に『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門 』(講談社)を出版。2020年に独立し、解説投資の記事執筆やセミナー講師、動画配信などに従事。わかりやすい初心者向けの投資解説が武器。ツイッター@chiekomitsui、ブログ https://ameblo.jp/mitsui-chieko/

現在の流行がベンチャー企業を苦しませている?

三井 早速ですが、まず御社の主軸である「識学」とはどのようなものなのかお話いただけますか?

安藤 識学は、人間の意識構造に基づいたロジックです。人は物事を正しく認識できるかどうかでその人の考えや動作など全てが決まってくるわけで、物事を正しく認識できないとさまざまな誤解や錯覚が生じてきます。

世の中には決められた仕組みがたくさんありますが、その仕組みに対して勘違いを起こしてしまうと、社会の仕組みから弾かれることになりますよね。識学はそうした齟齬(そご)をなくし、人が誤解や錯覚を起こさないよう、体型化したものです。

三井 なるほど・・・。ただ、それだけだと具体的なイメージが湧かないですね。

安藤 自分が高い給料を得るためには、会社が利益を積み重ね、自分がその利益に貢献することが必要です。ところが、ちょうど識学を立ち上げた頃、「会社が高い給料を払うことで社員のモチベーションが上がり、会社の成長につながる」などといった“勘違い”が流行していました。モチベーションを上げるために高給を支払うというのは順序が逆です。こうした考えが横行したせいで、いま苦しんでいるベンチャー企業がたくさんあるんですよ。

三井 「ない袖は振れない」という語がありますが、確かに資金に余裕がないのに高給を払うというのは会社運営の手法としては違っている気がします。そもそも「識学」というロジックはどのように開発されたものなのでしょうか?

安藤 識学は私が開発したわけではなく、福冨謙二(現在は当社の主要株主かつ社員)というかたが考案されました。私が識学に出会った時、素晴らしいロジックだと思ったのですが、知名度もなく、世の中に普及はしていませんでした。自分でこのロジックを実際に試してみたところ、確実な成果が挙げられることがわかったので、これをビジネスにしようと考え、会社を立ち上げました。

三井 識学と出会う前は、何をされていたのですか?

安藤 早稲田大学卒業後、NTTドコモに就職したのですが、大企業であるがゆえに、いくら頑張っても収益に貢献しているという実感が得られなかったんです。自分がいてもいなくても変わらないと感じながら、このままずっとここで働くのはいやだなと。

その頃は、携帯電話が一気に普及し、固定電話事業が厳しくなっていた時代です。固定とモバイルの垣根がどんどんなくなって、将来的にNTTグループは1つになるのではないかとも感じていました。そうなれば、自分が40代になった頃に人材が余ることになりますからね。そこで、NTTドコモは4年で辞め、ライクという人材派遣会社に転職しました。当時はまだコンプライアンスという考えが普及しておらず、よく会社に寝泊まりしていましたね(笑)

三井 ライクは2005年に東証マザーズに上場していますね。

安藤 自分が転職したのはちょうど上場直後くらいです。3年程度で子会社の取締役になり、グループのナンバー3、ナンバー4くらいの立ち位置を得ることができたのですが、社長との考え方の相違などもあって辞めてしまいました。

B.JPG
(撮影=末松正義)

識学普及のためのスピード上場

三井 識学の考案者である福冨さんとは、その頃に出会われたわけですか。

安藤 そうです。友人が人材系の仕事をしていて、その友人に福冨を紹介されました。「識学」とはどのようなものか興味があったので、自分で受講してみたところ、これは面白いなと。

三井 個人で受講されたのですか?

安藤 はい、確か20万円くらい払って受講しました(笑) その頃はまだ実際にビジネスにするイメージは持っていませんでしたが、当時勤めていたベンチャー企業で識学のロジックを試してみたんです。