外食業界は、新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けている。多くの企業が赤字に転落しているようだ。2021年2月に通期決算を迎えた8社をピックアップし、各社の業績に迫っていく。

コロナ禍で外食産業に大打撃

外食大手赤字ランキング、3位はリンガーハット、2位はドトール、ワースト1位は?
(画像=Satoshi/stock.adobe.com)

長引くコロナの影響は消費者の行動にも変化をもたらし、比較的感染が収まっている地域においても外出を避ける傾向にあり、各業界に暗い影を落としている。とりわけ、感染リスクが高いとされる飲食・外食産業への打撃は大きい。緊急事態宣言下の営業自粛をはじめ、各都道府県による時短要請なども相次ぎ、客足が遠のくばかりか営業そのものが制限されている状況だ。

規模の大きい店舗は休業補償も足りず、営業時短命令を受けた飲食チェーンのグローバルダイニングが、東京都を相手に訴訟を起こす事態にまで発展している。

2020年に倒産した飲食店は780件に

実際、経営が成り立たたなくなり倒産を余儀なくされた飲食店は、過去最多を記録しているようだ。帝国データバンクが発表した「全国企業倒産集計2020年報」によると、2020年の1年間に倒産した飲食店は780件に上り、過去最多とのことだ。

一般社団法人「日本フードサービス協会」が発表した「外食産業市場動向調査 2020年年間結果報告」によると、外食産業全体の売上は前年比84.9%で、1994年の調査開始以来最大の下げ幅だという。

業態別では、テイクアウトやデリバリー需要を拾いやすいファーストフードが同96.3%と健闘しているものの、ファミリーレストラン同77.6%、喫茶同69.0%、ディナーレストラン同64.3%、パブレストラン・居酒屋同50.5%となっており、特に飲酒業態への影響が深刻だ。

2021年2月決算企業の赤字6社を赤字額でランキング

2021年2月に通期決算を迎えた外食大手8社のうち、実に6社が赤字決算となった。売上高並びに売上高の増減とともに紹介する。

企業名当期純利益売上高※()内は前期比
クリエイト・レストランツHD▲138億円744億円(46.6%減)
ドトール・日レスHD▲109億円961億円(26.7%減)
リンガーハット▲87億円340億円(28.0%減)
吉野家HD▲75億円1,703億円(21.2%減)
SFP HD▲56億円174億円(56.7%減)
ハイデイ日高▲29億円295億円(30.0%減)

逆に黒字の企業も……コメダと壱番屋

苦境の外食産業だが、中には黒字を確保した企業もあった。「コメダ珈琲店」を運営するコメダホールディングスは、売上高288億円(前期比7.6%減)で当期純利益は35億円(同33.2%減)を計上した。また、「カレーハウスCoCo壱番屋」などを展開する壱番屋も、売上高は442億円と14.1%減ではあったが、当期純利益は17億円(同46.7%減)だった。

コメダは、専用メニューの導入によるテイクアウトやデリバリー、店舗物販の強化を推進し、収益向上を図ったようだ。一方、壱番屋も店内売上高が既存店ベースで前期比28.1%減と大きく減少したものの、ウーバーイーツや出前館といった配達代行の導入を進め、宅配とテイクアウトを合計した弁当売上は同34.3%増となっている。

赤字各社は赤字からの脱却策をどのように描いている?

吉野家ホールディングスは今後、テイクアウト・デリバリーのニーズを追求し、商品開発に加え、デジタルツールの機能強化や積極的な販促を展開し、客数回復に努めるという。加えて、中食・内食市場に切り込むため、国内外で冷凍牛丼販売を強化するための生産体制の強化や、中国工場への設備投資を行っていく方針だ。

ドトール・日レスホールディングスは、テイクアウトメニューの拡充や売店商品の拡大、消費動向に合わせた卸売事業を充実させることで、事業の再構築を図っている。2021年4月には、ドトールコーヒーの公式通販サイトを開設し、自社ECサイトを通じて製品を顧客に直接販売する「D2C」にも着手した。次期連結業績については、売上高1,221億円、当期純利益43億円を見込んでいる。

クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、徹底した固定費削減とスクラップ&ビルドなどに取り組み、損益分岐点の低減を図る。2022年2月期は、消費行動は従前と同様の水準まで完全には戻らないと想定した上で、27億円の当期利益を目指している。

今期と来期が勝負の年に

現在は、コスト削減や業態転換、テイクアウト・デリバリー対応など、各社ができる限りの取り組みを進めている状況だ。

コロナ禍のダメージを強烈に受けた2021年2月期の赤字は致し方なく、勝負は今期の2022年2月期、そして来期の2023年2月期となる。一定の対策を講じた上で再度赤字となれば、組織の存亡の危機につながりかねない。黒字企業の取り組みなどを参考に、各社がV字回復するよう願っている。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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