仮想通貨(暗号通貨)交換所大手の米コインベースが、2021年4月14日にアメリカの株式市場に上場した。仮想通貨交換所が米国市場に上場するのは初めてのことだ。しかし、この上場が「仮想通貨バブルの終焉」だと分析する市場関係者もいる。なぜだろうか。
ナスダック市場に上場したコインベースとは?
コインベースは、2012年に設立された仮想通貨交換会社だ。アメリカ国内では交換所として最大規模を誇る。創業したのは元IBMエンジニアのブライアン・アームストロング氏らで、同社の株主には日本の三菱UFJフィナンシャル・グループも含まれていることで知られている。
そのコインベースが、4月14日、「COIN」というティッカーシンボルで米ナスダック市場に上場を果たした。取引初値は381ドルで、まもなく株価は429ドルまで上昇したが、その後、株価は下落した。4月23日は一時282ドルまで株価が下がった。
一般的に、上場直後の銘柄は値動きが激しい。そのため、一時的な急落で今後のコインベースの株価のトレンドを判断することは早計だが、仮想通貨交換所の初の上場であるにも関わらず、想定以上の下落だという印象を持った個人投資家も少なくないようだ。
コインベース上場が「バブルの終焉につながる」との声
コインベースの上場に関しては株価の推移に注目が集まっているが、もう1つ、よく話題に上がるトピックがある。それは、コインベースの上場が仮想通貨バブルの終焉につながるのではないか、という点だ。どういうことか。
仮想通貨の価格の上下は株価と同様、買いと売りのバランスによって決まり、買いが多いと価格は上がっていく。そして一般的に、人々がその仮想通貨を買いたいと思う理由は、将来の価格がより上がるという期待感があるからだ。
コインベースの上場前、仮想通貨交換所が米国市場で初の株式上場を果たすという話題性から、仮想通貨の価格がさらに上がるのではと期待感が高まり、買いの需要が増えた。しかし、コインベースの上場でこのような値上がりにつながる好要因は全て出尽くした、という声がある。
好要因が全て出尽くしたともなれば、その後は買いの需要が落ちていく懸念が高まる。だから、仮想通貨の投資家界隈では、コインベースの上場が仮想通貨バブルの終焉につながるのではないか、という声が聞こえてくるようになったのだ。
コインベース上場後、仮想通貨は700万円台から500万円前半に急落
ではコインベースの上場後、仮想通貨の価格はどのように推移したのか。結論から言えば、コインベースが上場した4月14日をピークに、仮想通貨の価格は下落トレンドに入った。
4月14日、仮想通貨の代表格であるビットコイン(BTC)は一時700万円を超えた。しかしその後、じわじわと価格が下落し、18日には600万円台を割り、23日には500万円台前半まで落ち込んだ。
ただし、仮想通貨の価格の下落はコインベースの上場だけが原因とも言えない。情報の真偽は明らかになっていないが、Twitter上でアメリカ政府が仮想通貨に80%の税金を課すという情報が流れた。このことも下落に拍車をかけた。
しかし、ビットコインの下落が始まったタイミングとコインベースの上場のタイミングが符合することを考えると、「コインベースの上場が仮想通貨バブルの終焉」という予測も無視できない状況であると言えよう。
仮想通貨が今後もっと値上がりしていく可能性はある?
別の見方をすると、700万円を超えたビットコインが10日足らずで150万円以上急落したのは、やはり仮想通貨に対する信頼性の低さも影響したと考えられる。
ビットコインの存在はすでに誰しもが知るところだが、当初の予想に比べると、ビットコインは実社会で「通貨」として利用されていない。ほとんど普及が進んでおらず、日本でも一部の大手家電量販店などで利用できるようになるなど話題になったのは一時的だった。
このような状況の中、仮想通貨は今後値上がりしていく可能性はあるのだろうか。正直なところ、誰にもそのことは読めないし、投資の専門家が言うことも、必ず当たるというわけではない。
ただし、コインベースの上場のような、値上がりの期待感が高まりそうなトピックが仮想通貨業界にないわけではない。たとえばその1つが「ビットコインETF」だ。
ビットコインETFとは、ビットコインを投資対象に含んだ上場投資信託のことを指す。もし、ビットコインETFがアメリカの証券取引所で取り扱われるようになれば、仮想通貨交換所で口座を持っていない人でも間接的に仮想通貨に投資をすることができるようになり、仮想通貨市場の裾野が広がる。
仮想通貨、いまはまだ「ハイリスク」の投資手法
注目度が高まっている仮想通貨だが、いまはまだ「ハイリスク」の投資手法だと言わざるを得ない。株式投資に比べると、何が下落要素になり、何が上昇要素になるのかが不透明だ。仮想通貨に投資するかどうかは、この点をよく念頭に置いて考えたい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
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