本記事は、相馬一進氏の著書『ぼくたちに、もう社員は必要ない。 ひとり社長のビジネス拡大戦略』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
チームメンバーを募集する3つのポイント
グラデーション組織では、チームメンバーを募集するときに重要な3つのポイントがあります。
1つ目は、できる限り「ダイレクトリクルーティング(直接採用)」をすることです。
ダイレクトリクルーティングとは、簡単に言えば会社が「直接」候補者を見つけること、もしくは候補者に「直接」会社を見つけてもらうことです。ブログやYouTubeなどで会社の情報を発信したり、店舗ビジネスでは店先に求人の看板を置いたりして、そこから採用する方法です。
このダイレクトリクルーティングの対義語は、インダイレクトリクルーティング(間接採用)です。採用媒体に人材募集広告を掲載したり、人材紹介会社に依頼したりして、採用活動を行うことです。会社と候補者の間に、採用媒体などが入ります。一般的によく利用されるリクルーティングの方法です。
ダイレクトリクルーティングをおすすめする最大の理由は、採用媒体で採用するよりも、会社の価値観にマッチした人が来やすいからです。
もちろんリクルーティング活動のコストが下げられる点もメリットです。
すべての採用媒体が悪いとは言いませんが、一般的に、採用媒体を使わないほうが良い理由があります。
採用媒体に掲載すると、横並びで他の多くの企業と比較されてしまうことです。すると大手企業のほうが、報酬が高かったり福利厚生が良かったりして見劣りしてしまいます。
そして、全く同じ福利厚生や報酬だった場合、人は安心感から自分がよく知っている名前の会社のほうに行きます。たとえば、エッセンシャルと日本マイクロソフトが並んでいたとしましょう。両者が全く同じ福利厚生や報酬だった場合、普通の候補者は日本マイクロソフトを選びますよね。少なくとも私が候補者ならそうします(笑)。
このように、採用媒体は仕事探しをしている人が比較検討しやすい形になっています。そうすると、よほどの高収入で福利厚生が良く、かつ知名度がある会社でなければ、うまく採用できないのです。
2つ目のポイントは、「衛生要因」ではなく、カルチャーフィットを意識することです。
「衛生要因」とは、アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」の中で提唱された概念です。
ハーズバーグは、1959年、200人のエンジニアと経理担当事務員に対して、次のような調査を行いました。「仕事上でどんなことに不幸や不満を感じたか」と「仕事上でどんなことに幸福や満足を感じたか」についてです。
その結果、こんなことがわかりました。
人が不満を感じるときは、その関心は「自分たちの作業環境や条件」に向いています。一方、仕事に満足を感じるときには、その関心は「仕事そのもの」に向けられています。
ハーズバーグは、この2種類の感情を、こう名づけました。不満足に関わる要因は「衛生要因」、満足に関わる要因は「動機付け要因」です。
このように、仕事に対する満足をもたらす要因と不満足をもたらす要因は異なるものです。つまり、不満足の原因である「衛生要因」をとりのぞいたとしても一時的な効果しか見られず、やる気の源にはならない。そうフレデリック・ハーズバーグは結論づけています。
労働時間や報酬などの衛生要因について考えてみましょう。週に何日間、何時間働くのか。時給はいくらなのか。そのような要因が衛生要因です。
この衛生要因にフォーカスして募集すると、給与目的の人(お金欲しさの人)や、短時間労働が目的の人(できる限り楽して稼ぎたい人)ばかりが集まってしまいます。ですから、こうした衛生要因を前面に出して募集すればするほど、集まってくるメンバーはカルチャーフィットとは縁遠くなってしまいます。
中小企業の場合、衛生要因よりも会社のカルチャーを前面に出すことをおすすめします。会社の理念、価値観、どういう仕事をしているのか、それらを前面に出します。これらを出せば出すほど、会社の方向性と個人のやりたいことが共鳴している人が来てくれます。
そういう人は、「この会社を通して世の中を変えるのだ」という強い思いを持って仕事をしてくれます。当然、高いパフォーマンスを出してくれます。
もし衛生要因を前面に出して採用してしまった場合、そういう人は、もっと条件の良い会社があったらそちらに移ってしまいます。もっと報酬の高い会社を見つけたり、優秀な人であればヘッドハンターからより好条件で声が掛かったりすれば、そちらの企業に移ってしまうはずです。
残念ながら、多くの企業は「うちは高収入です」と衛生要因で人を採用しようとしています。いわば、札束で相手の頬をひっぱたくような採用方法です。これでは札束をもっとたくさん持ってひっぱたける会社には負けてしまいます。
もちろん安い給料でこき使えと言っているのではありません。衛生要因ばかりを伝える採用方法では、会社への思いが低い人が集まりやすいということをお伝えしたいのです。
3つ目のポイントは、リクルートメントマーケティングを意識することです。
ただ単に、店先や街中で、看板やポスターに「社員募集」「アルバイト募集」と書いておけば採用できるような時代は終わりました。
今はどこの会社も人手不足です。団塊の世代と呼ばれる人たちが定年で会社を辞めて、人手が足りなくなっています。それによって若者の失業率は下がり、道端に看板を出していたぐらいでは、人は集まらないのです。
大手のコンビニでさえ夜間のスタッフが確保できず夜間営業をやめてしまった店舗もあります。都心のように人口が多い都市でさえ人手不足なのですから、地方であればなおさらです。
こういった時代には、真剣にマーケティングを意識してリクルート活動をしないと人が集まらないでしょう。まるでお客さんをマーケティングするかのように、候補者をマーケティングする。これがリクルートメントマーケティングです。
集客のためにブログを書いたり、YouTubeで発信をしたりしている人はいますが、候補者を集めるためにブログやYouTubeをやっている人の話はあまり聞いたことがありません。おそらくほとんどいないと思います。
エッセンシャルでは、毎週1回私が候補者に向けてブログを書き続けています。
つまり、集客をするのと同じぐらいの意識を持って、リクルートメントに力を入れてほしいのです。