株式投資を行う主な理由は、いうまでもなく資産を増やすことです。個人投資家であれば「10倍株や100倍株を見つけ、億超えの資産を作りたい」と誰もが思うでしょう。株式投資で成功をつかむためには無意味な勉強をやめ、正しく経験を積むことが大切です。
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株式投資は勉強をしても意味がないのか?
株で利益を上げることは簡単ではなく、勉強したからといって安定的に設けを出せるようになるとは限りません。しかしながら、株式投資には勉強が必要不可欠です。投資初心者はもちろん、ベテランも学び続けることが必要でしょう。ただ、初心者にとっては、株式投資は学習範囲が非常に広いため、なにから手をつけるべきかが悩みどころです。
勉強は必要だが、間違った勉強法では意味がない
株式投資は、始めてすぐ一気に上級者レベルに達することはありません。初心者には初心者向けの勉強、上級者には上級者向けの勉強が必要です。株式投資を始めたばかりの人が上級者向けの勉強をしても、必要な知識は身につきません。
わからない言葉ばかりで先に進めないときは立ち止まるのではなく、そのわからない言葉を知るための勉強に切り替えます。そうやって、1つひとつ解決していくうちに知識が増えていきます。せっかくの勉強を無意味にしないためには、自分の習熟度を正しく把握することが重要です。
自分で答えを見つけるために勉強をする
学習方法として一般的なのは、書物から知識を得ることです。投資について書かれた書籍は、未経験者の興味をひくための「きっかけ本」、初心者に向けた「入門書」、具体的な投資理論や戦略を解説する「指南書」、投資家の体験を紹介する「体験記」など、さまざまなジャンルに分類され存在しています。
しかし、書かれていることがすべてではありません。あくまでも参考資料とし、自分のなかで答えをみつけることが大切です。
「元本10万円から1億円」といった成功体験記は生存者バイアスに注意
投資家の体験を紹介する「体験記」を読むうえで、最も気をつけなくてはいけないことは「生存者バイアス」です。
生存者バイアスとは、成功者のみに注目し、同じ道を選んで失敗したデータを検証しないということです。成功者1名の裏で、数百人、数万人の失敗者がいるかもしれません。同じことをなぞっても、同じように成功できるとは限らないのです。
体験記で参考になる部分は、投資方法や銘柄の選び方、投資判断基準などです。こういった方法もあるという情報として仕入れておくことで、自分の判断材料を増やすことができます。
「絶対!間違いない!」「これをしないと危ない!」と書いてあったら避けるほうが安全
どのジャンルでも散見されますが、派手な煽り文句や刺激的な表現を使う書籍は避けたほうが賢明です。こういった書籍を読んで得られるものは、知識ではなく「夢」です。
「儲かる!」という夢を見ることはできますが、夢を現実にする方法は知ることができません。なかには、必要以上に不安を煽ってから「夢」を与えるものもあります。どちらも、覚めてしまえば何も残りません。
多くの人が支持をする「ベストセラー」「ロングセラー」は良書が多い傾向にある
発売したばかりの書籍が人目に触れやすく、売り上げがよいのは当然のことです。一時的に多くの人の手に渡り、多くの目で精査され、次第に淘汰されていきます。
一方で発売から数年経過してもなお上位にランクインする書籍は、時代を超えて支持されるだけの価値があると考えられます。鮮度が重要な情報もありますが、長年読み継がれる普遍的な指南もまた、身につけるべき知識の1つといえるでしょう。
ストック&フローのバランスを意識することが大切
ストックとは貯蔵、フローとは流れを意味します。ここでは、勉強して蓄えられた知識のことを「ストック」、知識に基づいた実践を行うことを「フロー」と表現します。
どの分野でも同様ですが、勉強している実感が得られるのは、インプットをしているときです。しかし、インプットばかりで知識を貯め込んでいても役に立ちません。実践で使うことで、はじめて成果につながります。
しかしながら、勉強したとおりにいかないこともあります。覚えたつもりが忘れてしまうこともあるでしょう。それは、課題が見つかったという成果にほかなりません。ストックだけでなく、適宜フローを行って習熟度を確認することが、効果的な学習のコツです。
株式投資 入門編「投資の勉強をはじめる前の基礎固め」
ストック&フローを実践するために、まずは基礎を固めることが必要です。この先、多くの情報をインプットする土台を作るということを意識して、勉強をはじめましょう。
お金の基礎知識、マネーリテラシーを身につける
まずは、お金の知識とそれをうまく活用する能力(マネーリテラシー・金融リテラシー)について、自分の理解度を確認します。金融庁では、最低限身につけるべき金融リテラシーとして、次の4つを挙げています。
・家計管理:適切な収支管理 など
・生活設計:ライフプランを踏まえた資金計画 など
・金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択:保険やローン、投資などの金融商品についての理解やリスク管理 など
・外部の知見の適切な活用:適切な相談機関について など
日常生活のなかでで自然と身につくものから、意識的な勉強が必要なものまで多岐にわたっています。
【参考】金融庁 最低限身に付けるべき金融リテラシー(PDF)
『節約・貯蓄・投資の前に いまさら聞けない お金の超基本(坂本綾子著・泉美智子監修/朝日新聞出版)』は、知っておくべきお金の知識を機能別にわかりやすく解説する実用書で、教科書に適しています。また、日本証券業協会の「投資の時間」や全国銀行協会の「教えて!くらしと銀行」でも、身近な疑問をわかりやすく紹介しているので、参考にしてみましょう。
専門用語を読み飛ばさないための辞書を用意する
投資や金融についての勉強を進めていくと、耳慣れない専門用語がたくさん出てきます。正しい意味を理解するために、専門用語の辞書を用意しましょう。
この場合、単語をダイレクトに検索でき、図解や具体例を交えた丁寧な解説が得られる金融企業の公式サイトがおすすめです。スマホで閲覧できるため、いちいち別の書物を開く手間がなく、勉強を中断せずに調べられる点も優秀です。
前項で紹介した全国銀行協会や日本証券業協会、あるいは多くの銀行・証券会社の公式サイトに「用語解説」ページが用意されています。使い勝手や説明文が好みのものを選ぶと、ストレスなく勉強がはかどります。
さまざまな投資スタイルを知り、選択肢を増やす
一口に株式投資といっても、さまざまな投資スタイルがあります。それぞれに特徴があり、どれが正解というものはありません。自分の目指すゴールや好みに合った投資スタイルを選ぶことが重要です。
自分に合っているものを選ぶためには、どのような投資スタイルがあるのかを知っておく必要があります。保有期間はどのくらいなのか、攻めるのか守るのか、どのくらいの利益を狙うのか、自分にとってのゴールを思い描くことも大切です。次第に絞り込んでいけるように、まずは選択肢を増やしましょう。
株式投資 初級編「ストック&フローを積み重ね、知識を増やす」
基礎固めを終え、投資方法の学習や流れの確認を済ませたら、実際の取引に移ります。それまでに、証券会社の口座開設や入金を済ませておきましょう。口座開設から取引まで、インターネット上で完結するネット証券が気軽にアクセスできて便利です。
ストックした知識を、実践で活かす
これまでに学習した知識のなかから、自分で銘柄や投資方法を選びます。一般的に安全だといわれている方法でも、教科書として選んだ書籍通りの方法でも、自分が興味のある方法でもかまいません。自分が思うように、自由に選びましょう。ただし、このときの投資資金は「勉強費用」として割り切れる程度の金額にしておくことです。
ここで重要なことは、次の2点です。
・「噂通り」「教科書通り」の動きはしないということを学ぶ
株価は生き物です。過去のなにかと条件が似ていても、同じ動きをするとは限りません。学んだことをうまく再現できなかったと感じる場面も出てくるでしょう。しかし、そういうものだと知ることも今後の投資活動において貴重な経験となります。
また、自分自身の観察も重要です。取引をはじめる前には、売却についてのルールを決めておくことが鉄則です。しかし、いざ始めると欲や未練が出てしまい、ルールを守れなかったというのはよく聞く話です。自分の精神状態がどのように変わるのかを知ることも、大切な勉強です。
・実際の株式投資で感じた悩みや疑問を、そのまま放置しない
一連の取引を終えて疑問に思った点、どうするべきか悩んだ点が今回の成果です。学習し直してしっかりと理解を深めることで、次のステージへと進めるのです。
投資の本質が記された名著に挑戦する
ロングセラーのなかには、著名な投資家が記した書籍が多く存在します。長年、投資の世界で戦ってきた投資家たちの言葉には、実践者ならではの説得力があるものです。
たとえば『バフェットの財務諸表を読む力(メアリー・バフェット、デビッド・クラーク著/徳間書店)』では、財務諸表の解説とともに、投資をするうえで守るべきルールが紹介されています。『賢明なる投資家(ベンジャミン・グレアム著/パンローリング)』では、投資スタイルごとに異なるアドバイスが丁寧に述べられています。どちらも刺激的な煽りは一切なく、本質を淡々と述べる穏やかな良著です。
初心者のうちはピンとこなかった内容が、投資を経験したあとならばリアルに感じられることでしょう。
株式投資 中級編「効率よくフローを行うための情報を集める」
初級編では、投資知識のストックを目的とした勉強を中心に行ってきました。次のステップでは、フローのための情報を仕入れ、投資戦略を考えるということについて学びます。
実践に向けた情報収集
株式投資では、常に判断することを求められます。どの銘柄を選ぶのか、いつ買うのか、いつ売るのか、すべての投資判断に欠かせないものが「情報」です。
まずは日常生活のなかで、気になる新商品やサービスなどにアンテナを張りめぐらせましょう。投資のヒントは、身の回りのいたるところからみつかります。日本経済新聞や経済誌、テレビの経済番組などメディアにも目を光らせておくと良いでしょう。しかし、インターネットで表示される個人発信の情報は、真偽がわからないため、避けたほうが賢明です。
・情報収集法1:会社四季報を読み込む
会社四季報は、年4回発行されている情報誌で、日本の上場企業の概要・財務情報・株価の推移などが掲載されています。発行元である、東洋経済新報社独自の業績予想は、投資家のなかでも参考にしているという人が多い必読ポイントです。
ネット証券のなかには、口座開設者に向けて会社四季報の内容を提供しているところもあります。気になる商品やサービスに出会えたら、すぐに会社四季報で会社概要や業績を確認するクセをつけましょう。
・情報収集法2:決算説明資料や決算短信から会社を読み解く
会社四季報を見て興味が深まった会社は、公式サイトも確認しましょう。
「決算短信」「事業報告書」などの財務情報、「経営方針・戦略」「経営計画」など会社の方向性についての資料がまとめられたIRページは情報の宝庫です。掲載データだけでなく、情報の見やすさ探しやすさ、サイトの雰囲気や更新頻度など、その会社がIR活動をどのように考えているかを知ることもできます。
また、情報の更新によって株価がどう動くかを観察することで、集めるべき情報と、重要視しなくてもいい情報を見極める力もついてきます。
株価動向は定期的に確認すべき
株式投資の基本は、売買差益を得ることです。銘柄候補はリスト化して、株価の動きをチェックしましょう。中長期的に保有し、値上がり益や配当金を期待する投資スタイルでない場合、毎日や週に一度など、新聞やネットで定期的に株価をチェックするようにしましょう。
その際に注目する点は、「出来高」と「上昇率・下落率」です。出来高は、売買が成立した株数を示しています。一方の「上昇率・下落率」は株価の動きを示しています。株価が上昇すると企業価値が高まり、資金や人材を集めやすくなり、経営が安定するということが想像できます。下落は、その逆のことを指しています。
・上昇した株式の特徴を分析し、テンバガーの可能性を探る
上昇率の高い株式の特徴を、自分なりに分析することも実践に向けた勉強の1つです。
証券会社が提供するチャート分析ツールでは、さまざまなテクニカル分析を行えます。投資方法と同様に、多くの分析方法のなかから自分に合った方法を探すために、まずはいくつか試して選択肢を増やしましょう。
テンバガー(10倍株)を狙うためには、過去にテンバガーを達成した銘柄情報や、近年テンバガー候補といわれている銘柄情報は必見です。自分なりの気づきを得るまで、徹底的に検証しましょう。
メンタルについて書かれた本を読み、自分をコントロールする方法を学ぶ
投資の実践をくり返していると、「もっと儲けたい」「損をしたくない」という欲に惑わされて、予定外の行動をしてしまうことがあります。また、期待どおりの成果が得られずに、落ち込むこともあるでしょう。悩んで迷って自信を失いそうなときは、投資家の心得について書かれた書籍を読むタイミングかもしれません。
『デイトレード(オリバー・ベレス)』では、陥りやすい心理状態ごとに回避するためのポイントを解説しています。『マーケットの魔術師(ジャック・D. シュワッガー)』は、16名のトップトレーダーへのインタビューで構成された本です。幾多の失敗を経て成功した彼らが、どのように失敗を受け止め、乗り越えたかがわかります。投資テクニックではなく、メンタルについて説くベストセラーです。
投資家として経験を積み、また1つ壁を乗り越えようとしているタイミングだからこそ、胸に響くものがあるでしょう。
まとめ:正しい経験を積むことが、成功へと続く唯一の道
投資で成功するために必要なのは、正しい経験を積むことです。勘任せではギャンブルと同じ、本で読んだ手法を理解せずになぞっていても長くは続きません。古今東西の手法を学び続ける姿勢は不可欠で、勉強に意味がないということは決してありません。
まず、基本的なマネーリテラシーを身につけ、基礎知識を学んでおくことが重要です。それから、ストック&フローを意識して、インプットと実践を行います。うまくいかなくても検証をくり返し、失敗を糧にしたその先にあるものが、自分でつかみ取った成功なのです。
文・高井怜
国内生命保険会社にて生命保険・損害保険の営業職、大手外資保険会社にて顧客相談室を経験。退職後は、保険についての「わからない。めんどうくさい」を少しでも解消できればと、保険・金融記事の執筆を開始。関心分野は、保険や年金など生活に密着した金融サービス。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。