資産運用に興味があるけれど、なんとなく投資に踏みだせないという人には「少額投資」という選択肢があります。資産運用の必要性を少しでも感じているのなら、少額投資に強い証券会社を選び、数百円~数千円で投資を始めてみましょう。将来に向けた資産形成の第一歩となります。
目次
少額投資とは?
投資や資産運用をはじめるには、100万円などある程度まとまった資金が必要であると思われがちです。しかし近年は、ネット証券の広がりなどにより「少額投資」といった選択肢もでてきました。そもそも、少額投資とはどのようなものなのでしょうか。まずは少額投資の概要や、少額投資に向いている人の特徴について見ていきましょう。
少額投資の概要
少額投資とは、数百円や数千円といった少ない金額で投資することです。多くの証券会社で少額投資が行えるサービスが増えたことで、多くの人にとって資産運用が身近なものになりました。老後資金などに不安を持つ人が多いなか、少ない金額で投資できる「少額投資」の活用は、今後も増加していくことが予想されるでしょう。
少額投資に向いている人
少額投資はどのような人に選ばれているのでしょうか。一例として、少額投資が向いている3つのタイプを以下に紹介します。
・少額投資に向いているタイプ1:投資資金があまりない人
少額投資に向いているタイプの1つめは、投資資金があまりない人です。余裕資金があまりなくても、月数千円など少額を投資することで将来に向けた備えづくりが少しずつできるようになります。
・少額投資に向いているタイプ2:いきなり大金を投資するのが怖い人
最初から大きなお金を投資することに不安がある人も、少額投資から始めることに向いています。投資は、値動きにより資産が増減します。そのため、投資経験が浅いうちに大金を投資するのはハイリスクとなります。少額からスタートし、少しずつ投資に慣れていくとよいでしょう。
・少額投資に向いているタイプ3:とりあえず投資をやってみたい人
株や投資信託の取引をスマホなどから簡単にできるようになったことで、なんとなく投資に興味がある、始めてみたいと思っている人もいるでしょう。資産運用を成功させるには、実際に投資を体験してみるのが一番です。自分が使いやすいツールや証券会社を選び、気軽に少額投資を始めてみましょう。
少額投資のメリットとデメリット
少額投資をより楽しむには、メリットとデメリットを確認しておくことが重要です。
少額投資のメリット
少額投資は比較的誰でも始めやすいことに加え、以下の2つのメリットがあります。
・少額投資のメリット1:金銭的ハードルが低い
少額投資のメリットの1つめは、金銭的ハードルが低い点です。先述のとおり、大きな金額での投資では金銭的に不可能な人や不安を感じる人でも、少額であれば投資をスタートしやすいでしょう。
・少額投資のメリット2:リスクに慣れることができる
少額投資のメリットの2つめは、リスクに慣れることができる点です。これまでに預貯金や現金しか持っていなかった人は、値動きがある金融商品への恐怖心があることも少なくありません。しかし実際の投資では、値動きによるリスクを抑えた安定的な資産運用を目指すコツもあります。少額投資をしながら投資のポイントやコツを覚えていくことで、リスクに少しずつ慣れていくことができるでしょう。
少額投資のデメリット
少額投資には、いくつかのデメリットもあります。デメリットをあらかじめ知っておくことで、投資開始後のギャップを軽減できます。
・少額投資のデメリット1:資産を大きく増やすことが難しい
少額投資のデメリットの1つめは、資産を大きく増やすことが難しい点です。元本が少ない少額投資では、得られるリターンも限定されます。
・少額投資のデメリット2:手数料が割高になることもある
少額投資のデメリットの2つめは、手数料が割高になるケースがある点です。少額投資は、通常の投資とは異なる手数料体系が適用されます。手数料が高い場合、せっかく得た儲けを相殺してしまう恐れがあるということに注意が必要です。
・少額投資のデメリット3:投資対象が限られる
少額投資のデメリットの3つめは、投資対象が限られることです。少額投資の多くは、各証券会社が独自に行うサービスです。そのため、投資できる商品や銘柄が限られることもあります。また、証券会社によっては少額投資に対応していない場合もあるため、あらかじめ確認しておくことが重要です。
少額投資を始める方法といくらから始められるのか
ここからは、実際に少額投資を始めるにあたって必要な情報を確認していきます。
少額投資の種類
少額投資できる金融商品は、株式や投資信託・ETFなどが一般的です。それぞれの特徴を、表1で確認してみましょう。
▽表1.少額投資ができる金融商品の特徴まとめ
金融商品の種類 | 特徴 | 狙える利益 | リスクリターンの大きさ |
---|---|---|---|
株式 | 成長が期待できる企業の株式を購入し、利益を目指す。 | ・売却益 ・配当金 ・株主優待 | ハイリスク・ハイリターン |
投資信託 | 投資の専門家(運用会社)が運用する投資信託(ファンド)に投資し、利益を目指す。 | ・売却益 ・分配金 | ミドルリスク・ミドルリターン |
ETF (イーティーエフ) | 市場に上場する投資信託。投資信託の1つでありながら、市場価格でのリアルタイムな取引ができる。 | ・売却益 ・分配金 |
株式投資は大きな値上がりを狙える一方、損失額が大きくなる可能性もあるハイリスク・ハイリターンな金融商品です。投資信託は、運用会社が複数の銘柄に資金を分散投資するため、ミドルリスク・ミドルリターンといわれます。
ETFは「上場投資信託」と呼ばれる、市場に上場している投資信託です。日経平均株価やTOPIX(トピックス)といった指標に連動する値動きを目指します。投資信託は通常、1日1回決定する基準価額で売買されますが、市場に上場するETFは、株と同様にリアルタイムでの価格で取引できる点が特徴です。
株は1株から購入できるため、数百円あれば投資を始めることができる(単元未満株)
株式を少額投資するには「単元未満株」を利用します。通常の株式投資は、単元株単位(100株)で取引されるため「株価×単元株数」の資金が必要です。たとえば、1株1,500円の銘柄の最低投資額は、15万円(1,500円×100株)となります。
一方、単元未満株取引は、1株から投資できます。さきほどの銘柄では、1,500円あれば投資を始められるのです。単元未満株を取り扱う証券会社には、以下の7社があります。サービス名とともに確認しましょう。
・SBI証券:S株
・SBIネオモバイル証券:S株
・auカブコム証券:プチ株
・マネックス証券:ワン株
・岡三オンライン証券:単元未満株
・LINE証券:いちかぶ
・SMBC日興証券(日興フロッギー):キンカブ
単元未満株の取引手数料や注文受付時間・約定のタイミングなどは、証券会社により異なります。いくつかの証券会社を比較検討したうえで、自身の投資スタイルに合った会社で取引をスタートしましょう。
最近では貯めたポイントで投資をすることができる「ポイント投資」も
少額投資には、ほかのサービスで貯まったポイントを投資する「ポイント投資」もあります。ポイント投資ができる証券会社の一例を、表2に紹介します。
▽表2.ポイント投資ができる証券会社の一例
証券会社 | 利用できるポイント |
---|---|
SBI証券 | Tポイント |
楽天証券 | 楽天ポイント |
日興フロッギー | dポイント |
LINE証券 | LINEポイント |
ポイント投資を利用すれば、自己資金を使わずに投資にチャレンジできます。貯まったままのポイントがある人は、失効前にポイント投資で活用しましょう。
少額投資を始める際に証券会社を選ぶ4つのポイント
少額投資は、証券会社により取り扱いの有無やサービス内容が異なります。長期で納得のいく取引をするには、投資スタイルに合った証券会社選びが重要です。
証券会社を選ぶポイント1:最低投資金額
証券会社を選ぶポイントの1つめは、最低投資金額です。投資予算と照らし合わせ、無理なく楽しみながら投資が始められる証券会社を選びましょう。少額投資を始めたいというのであれば、単元未満株の取引や100円からの積立投資などをを行っている証券会社が良いでしょう。
証券会社を選ぶポイント2:手数料が安い証券会社
証券会社を選ぶポイントの2つめは、手数料の安さです。金融商品の取引手数料は、証券会社によって差があります。手数料は投資においてコストとなるので、証券会社を選ぶ際には、手数料がいくらかかるか確認しましょう。
証券会社を選ぶポイント3:サービス・商品の品揃え
証券会社を選ぶポイントの3つめは、サービスや商品の品揃えです。投資家が希望するサービスや商品の取り扱いがなかった場合、そのほかの証券会社で投資をするか、投資を諦めるしかありません。投資をより楽しむには、サービスや商品が充実している証券会社であることが大切です。
証券会社を選ぶポイント4:NISA制度の対応有無
証券会社を選ぶポイントの4つめは、NISA制度への対応の有無です。NISA(少額投資非課税制度)は、投資から得た利益にかかる20.315%の税金が非課税となる制度です。税金は手数料と同じく、投資におけるコストとなります。効率のよい資産運用を目指すためには、NISA口座の活用も重要です。
証券会社によっては、NISA口座での取引で手数料が安くなるサービスが行われています。たとえばSBI証券は、NISA口座での国内株式売買手数料が恒久的に無料です。少額投資でNISA制度を利用するなら、証券会社独自のサービスがないかも確認しましょう。
少額投資を始められる証券会社はどこ?徹底比較してみました!
最後に、実際に少額投資が始められる5つの証券会社と、1つのサービスについて解説します。今回紹介する証券会社は、以下の5社です。
・ネット証券口座開設数第1位の「SBI証券」
・ネット証券における2019年新規口座開設数第1位の「楽天証券」
・LINE Financial株式会社と野村ホールディングス株式会社が共同出資するスマホ証券の「LINE証券」
・Tポイント投資ができるスマホ証券の「SBIネオモバイル証券」
・SMBC日興証券が運営する「日興フロッギー」
上記の証券会社が提供する少額投資のおもなサービス内容を、表3にまとめます。
▽表3.少額投資ができる証券会社5社のおもなサービス内容比較
少額投資対象商品 | 最低投資額 | 手数料(税込み)(※) | 定期メンテナンス | 自動積立 | 独自サービス | |
---|---|---|---|---|---|---|
SBI証券 | ・投資信託 ・国内株式 | ・投資信託:100円 ・株式:1株(S株利用時) | ・投資信託:購入時手数料無料 ・株式:99円 ・S株:約定代金×0.55% | 営業日7時~7時30分 日曜日4時30分~5時30分 | 投信積立:100円以上1円単位 | PTS取引なら、手数料が5%割引。夜間取引は手数料無料。 |
楽天証券 | ・投資信託 | 投資信託:100円~ | ・投資信託:購入時手数料無料 ・株式:99円 | 月~金曜日:15時30分~17時15分 火~土曜日:3時~6時 日曜日:2時30分~3時30分 | 投信積立:100円以上1円単位 | 投信積立は、毎月5万円まで楽天カードクレジット決済ができる。楽天ポイントでポイント投資も可能。 |
LINE証券 | ・投資信託(30銘柄) ・国内株式 | ・投資信託:100円 ・株式:1株(いちかぶ利用時) | ・投資信託:購入時手数料無料 ・株式:買付は0円、売却時は176円 | 記載なし | 投資信託:毎月1,000円から | 「いちかぶ」の取引は平日夜21時まで可能。単元未満株ながら、リアルタイムな取引ができる。 |
SBIネオモバイル証券 | ・国内株式 ・IPO | ・国内株式:1株(S株利用時) ・IPO:1株 | ・株式:月額220円 ・IPO:月額220円 | 毎日:4時~6時頃 金曜日16時~20時頃 日曜日2時~4時頃 | 国内株式:100円から100円単位。ひと月に5日まで設定可能 | Tポイントで株やFXを購入できる。 |
日興フロッギー | ・国内株式 | 国内株式:100円~ | 株式:買付は0円、売却時は0.5% | 半年ごと | フロッギー口座と同時に開設されるSMBC日興証券口座から、100円以上100円単位で株式(キンカブ)の定期定額買付が可能。 | 単元未満株を株数ではなく、金額指定で買える。 |
※国内株式の売買手数料は、1注文ごとに手数料が発生するプランで10万円購入時のものとする。
上記のほか、少額投資ができるサービスに、おつり投資アプリ「トラノコ」があります。トラノコでは、買い物のたびにスマホに登録したおつり情報が更新され、5円以上1円単位で投資が可能です。
運用はリスクの大小でわけられた3つのトラノコファンドでおこないます。そのため、ファンド選定などの手間がありません。トラノコで必要な手数料は、月額利用料300円+運用報酬0.33%(税込み)です。無駄遣いしていないのに資金が貯まらず運用ができないと悩んでいるなら、トラノコを活用して投資資金の確保から投資まで一括で実現しましょう。
まとめ:少額投資を始めて資産形成の基盤づくりをしよう
ネット証券やスマホ証券では、少額投資サービスの提供が増えています。数百円~数千円から始められる少額投資は、資金があまりない人や投資に不安がある人も比較的始めやすい投資だといえるでしょう。
少額投資できる金融商品や最低投資額・投資対象銘柄数などは、証券会社によって異なります。自分に合った証券会社を選び、将来に向けた資産形成をスタートしてはいかがでしょうか。
文・N.ヤマモト
都市銀行にてファイナンシャルプランナーとして主に、富裕層の資産形成・運用相談を担当。投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産形成についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている。