先物への投資経験がない方であっても、「日経平均先物」の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。先物取引はリスクの高い投資というイメージが強く、敬遠される傾向があります。

しかし、先物は現物の値動きに大きな影響を与えるメジャーな存在であり、先物主導の相場展開になることもしばしばです。つまり、日経平均株価は日経平均先物の影響を強く受けているということです。日経平均先物を知ることによって先物取引による利益を狙っていくことも可能になります。また、先物を知ることは株式投資の相場観を養うのにも役立ちます。

そこで当記事では、先物とは何か、という初歩的な疑問にもお答えしつつ日経平均先物投資に知識と投資方法について解説します。

目次

  1. 日経平均先物とは
  2. 日経平均先物と一緒によく登場する用語解説
  3. 日経平均先物の売買動向
  4. 日経平均先物の予想
  5. 日経平均先物を始める手順
  6. まとめ:短期と中期の目線で日経平均予想をしていこう

日経平均先物とは

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「日経平均先物」とはどんな商品なのでしょうか。そもそも「先物」とは何なのでしょうか。

先物取引とは?

先物とは、ある期日にある金融商品を、あらかじめ取り決めた価格で取引することです。先物取引では取引の時点で未来の売買の条件を約束しておき、その期日が来た時点でその商品の売買を行います。

世界初の先物取引市場は江戸時代の大阪の米市場であるといわれています。天候や天災によって米の価格は大きく変動するため、その不確定要素によるリスクを回避する目的で「米をあらかじめ取り決めた価格で買う権利」が売買されていました。現在では大豆やコーンといった穀物類や貴金属、石油など実にさまざまなものが先物で取引されています。

日経平均先物とは?

日経平均先物は、株価指数である日経平均株価を対象とする先物商品です。日経平均株価とは日本経済新聞社が東証一部に上場している銘柄のなかから主要なものを225銘柄選び、それらの株価をもとに算出した指数です。日本にはほかにも東証株価指数(TOPIX)などの株価指数があります。

日経平均株価と日経平均先物の関係

日経平均株価は、東証一部に上場している代表的な225銘柄の株価の平均値を加工した指数です。それに対して日経平均先物は指数取引と呼ばれるもので、未来の日経平均株価がどうなるかを予測したうえで購入するものです。

日経平均先物では、以下のような流れで利益を上げることができます。

(1)新規エントリー
日経平均先物を買う、もしくは売ることで新規エントリーします。

(2)建玉を保有する
先物取引にエントリーをすると未決済の先物を保有することになり、これを建玉(たてぎょく)といいます。買いのエントリーであれば買い建玉、売りのエントリーであれば売り建玉を保有します。

(3)建玉を決済する
保有している建玉を決済することで取引終了となります。買い建玉を買った時点よりも日経平均先物が値上がりしていれば利益確定となり、逆に値下がりしたところで決済をすると損失確定となります。売り建玉の場合は、その逆です。

日経平均株価は株式市場の趨勢を知るための指数であるに対して、先物である日経平均先物は株価指数そのものの未来を予測して取引するデリバティブ商品です。このデリバティブ取引とは対象となる金融商品(原資産といいます)の価格をもとに取引価格が決まる金融派生商品のことで、日経平均先物の場合は株価指数が原資産です。

取引所での取引量を見ると、すでに現物株よりも日経平均先物とTOPIX先物を足した数量のほうが大きくなっており、主に海外の投資家が活発に先物取引をしています。取引量の多さゆえに現物が先物取引の影響を受けることが多くなっており、先物価格につられる形で現物株の価格が上下することがあります。

日経平均先物と一緒によく登場する用語解説

先物取引には特有の用語がたくさんあるので、ここでは日経平均先物に投資するにあたってよく登場する用語に絞って解説します。

日経平均ラージ/日経平均ミニ

日経平均先物には、大きく分けて2つの種類があります。1つは「日経平均ラージ」と、もう1つは「日経平均ミニ」です。

日経平均ラージは、日経平均株価の1,000倍を取引単位としています。しかしこの日経平均ラージは機関投資家など大口投資家向けのものであり、個人投資家が取引をするには規模が大きすぎるということで、その10分の1である日経平均株価の100倍を取引単位とする日経平均ミニも用意されています。

レバレッジ

レバレッジを日本語にすると「てこ」です。てこの原理では小さな力で重いものを動かすことができますが、これになぞらえて少ない資金で大きな金額の投資ができることをレバレッジといいます。レバレッジをきかせられることは先物取引のメリットですが、日経平均先物でもこのレバレッジをきかせた取引が可能です。

レバレッジをきかせた取引では、証拠金を差し入れるだけで数倍、数十倍の投資ができるようになります。

証拠金/追証

取引金額の一部を差し入れることで取引が可能になる先物取引の世界では、差し入れる資金を証拠金といいます。現物株取引では取引金額の全額が必要になりますが、先物では数十分の1で済むため、少ない投資金額であっても大きな利益を狙うことができます。

しかしその一方で、損失が出たときのリスクも大きくなります。相場が逆行するなど思惑どおりの相場展開にならず保有している先物の含み損が証拠金額よりも大きくなってしまうと、証券会社が定める最低証拠金額を下回ってしまいます。この場合は証券会社のルールにより、追証(追加証拠金)が必要になります。追証を補充しなければ、保有している先物は強制的に決済されます。

限月

先物には取引期限があり、その期限のことを限月(げんげつ)といいます。限月になると、あらかじめ取り決められた期日、価格で決済が行われます。金先物や原油先物など商品先物の場合は、限月が到来すると商品の受け渡しとなりますが、日経平均先物は株価指数なので商品の現物がありません。こうした先物で利益を上げるには限月までに反対売買(買い建玉を売る、もしくは売り建玉を買い戻す)による決済をすることになりますが、最終的な期日まで先物を保有したままだと自動的に強制決済となります。

SQ(特別清算指数)

SQとは「Special Quotation」の頭文字をとったもので、日経平均先物などの株価指数先物の清算価格のことです。日経平均先物は限月になると強制決済となりますが、SQはこの際の価格です。

踏み上げ

大口の機関投資家などが、日経平均株価が下落するという読みから日経平均先物の売りを仕掛けていたものの、実際には日経平均先物がその予測に反して上昇してくると損失拡大を食い止めるために日経平均先物の買い戻しをします。これを踏み上げといい、踏み上げによって大量の買い戻し注文が入るため、先物には上昇圧力がかかります。

外国人投資家

外国人投資家とは日本の金融市場に投資をしている外国籍の投資勢力のことで、日本の証券取引所で売買をしている勢力のなかでも、外国人投資家は大きな存在感を有しています。「投資家」という言葉のニュアンスから個人投資家のような人を想像するかもしれませんが、市場で外国人投資家と呼ばれているのは海外の機関投資家やヘッジファンド、年金基金など大口の投資家を指すことが多いです。

日本の株式市場では外国人投資家の存在感が大きく、外国人投資家の売買シェアは約6割から7割に上ります。

実需筋/投機筋

市場参加者には大きく分けて、実需筋と投機筋があります。実需筋とはその投資対象を本当に必要として売買している勢力のことで、投機筋は値動きによる利益のみを狙っている勢力です。

たとえば原油先物取引では、石油卸会社など原油の仕入れを考えている実需筋は原油を調達する際の価格を安定させる目的で先物を購入します。その一方で投機筋は原油の入手を目的としてはおらず、原油先物の値動きを利用して利益を狙っています。

オーバーナイト

オーバーナイトとは、保有している先物をその日のうちに決済せず、翌営業日に持ち越すことです。日経平均先物の取引時間には日中立会と夜間立会があり、平日の8時45分から15時15分が日中立会、16時30分から翌5時30分までが夜間立会で、取引が可能です。このように日経平均先物はとても取引時間が長く、諸外国からの取引にも対応しています。

以前はここまで取引時間が長くなかったため、建玉を翌日に持ち越すオーバーナイトは、アメリカ市場などの動きが取引時間外に発生するためリスクが高くなるとされていました。しかし現在では深夜でも日経平均先物の取引が可能なので、相場が動くような事象があってもすぐに取引できるため、オーバーナイトに以前ほどのリスクはないと考えられています。

日経平均先物の売買動向

日経平均先物の価格は、どのように動くのでしょうか。

短期では需要と供給のバランスで決まる

先物市場であっても現物市場と同じく、需要と供給のバランスによって価格が決まります。買いが優勢であれば先物価格は上場し、売りが優勢であれば下落します。

投資家は現物の日経平均株価が今後どう推移するかを予想しているので、値上がりを予想している投資家が多ければ先物も買いが強まり、その逆であれば売りが強まります。買いと売りのどちらが優勢になっているかで先物の価格が決まります。

「裁定残」から需給状況がわかる

証券取引所から発表されている「裁定残」とは、裁定取引のために行われる現物株売買における未決済残高のことです。この裁定取引とは相関性が高い金融商品同士で価格のギャップが起きている際に、そのギャップを狙って利益を狙う取引のことです。日経平均先物の場合、先物価格が日経平均株価よりも高ければ先物を売って日経平均株価の構成銘柄の株を買う、もしくはその逆といった具合です。

この裁定取引が行われることにより、日経平均先物と日経平均株価はそれぞれの価格が接近して連動性を保つことができます。この裁定取引がまだ行われていない先物の残高(裁定残)が多いと、「やがて裁定取引が行われる」と見込むことができるため、需給状況を知る参考になります。

東証で売買されている日経平均先物については、東証から日々ポジションの状況が発表されています。買いと売りのそれぞれについて数量が発表されるので、買いのほうが多ければ「先物の買いが積み上がっている」、売りのほうが多ければ「先物の売りが積み上がっている」と判断できます。

2020年の動きを見ると、前年の年末にかけて日経平均株価が大きく上昇したため先物の売り建玉を保有していた投資家がそれ以上の損失拡大を食い止めるための買い戻しを行う踏み上げが起き、裁定売り残が大幅に縮小しました。これによって膨大に積み上がっていた外国人投資家による先物売りが縮小したと考えられます。

しかし再び4月にかけて裁定売り残は急激に増加し、実際に日経平均株価も暴落しました。ここまでは「日経平均株価は下落する」という売り勢力の思惑どおりではあったのですが、その後日経平均株価は急回復し、膨大に積み上がっていた先物の売りポジションは再び踏み上げとなり、その流れは8月頃まで続きました。

ご存じのように日経平均株価は2020年の後半に大きく上昇し、外国人投資家も安易に先物売りを入れやすい状況ではなくなりつつあります。なぜなら、安易に売りを入れすぎると損失を被るリスクが高まっているからです。

日経平均先物の予想

日経平均先物投資では、値動きの予想はどのようにすればよいのでしょうか。基本的には需給のバランスで価格が決まる市場原理なのですが、それに加えて知っておきたいポイントを解説します。

短期的には需給の動向、中期的には業績で決まる

先物には買いと売りがあるので、それぞれの勢力の綱引きです。買いが優勢であれば価格上昇、売りが優勢であれば価格下落です。しかしこれは短期的な値動きについてであり、中期的な値動きは日経平均株価を構成する企業の業績で決まる傾向が強くなります。

日経平均株価を構成する企業の業績がよければ指数全体の上昇が見込まれるため、先物にも買いが入りやすくなります。その逆に業績が芳しくない場合は先物も売り優勢となります。

日経平均先物を始める手順

ここまで解説してきた日経平均先物について、実際に始めてみたいとお考えの方にその手順を解説します。個人投資家にも広く門戸が開かれている投資商品なので、手軽に始めることができます。

手順1:総合口座の開設

証券会社の総合口座を開設します。先物・オプション取引のサービスメニューがあることが条件になりますが、ほとんどの証券会社で取り扱いがあります。

手順2:先物・オプション取引口座の開設

総合口座を開設したら、そのなかに先物・オプション取引口座を開設します。

手順3:証拠金の入金

先物取引に必要な証拠金を入金します。すでに解説したとおり、証拠金は取引金額の全額ではありません。わずかな金額で大きな金額を動かすことができるのはレバレッジの魅力ですが、その一方でリスクも高くなるので、思わぬ相場の変動で証拠金不足になって追証が発生することのないよう資金的にしっかりと余裕をもたせてください。

手順4:取引ができるネット証券会社を比較

日経平均先物の取引は、多くの証券会社で取り扱いがあります。それぞれの証券会社では手数料が異なるため、手数料の安い証券会社を選んで取引コストを抑えることをおすすめします。

▽主なネット証券による日経平均先物の取引手数料

証券会社名日経平均先物ラージ手数料日経平均先物mini手数料
SBI証券250円35円
楽天証券250円35円
マネックス証券250円35円
松井証券200円35円
SBIネオトレード証券191円33円
むさし証券500円50円
岡三オンライン証券300円40円

主要証券会社の先物取引手数料を見ると、SBIネオトレード証券の安さが際立っています。この会社の旧名は「ライブスター証券」で、先物手数料が安いことで定評がありました。

まとめ:短期と中期の目線で日経平均予想をしていこう

日経平均先物は投資効率がとても高く、すでに取引所での取引量は過半数を占めるメジャーな投資商品です。個人投資家としてもそのメリットを享受したいところですが、価格予想がキーとなります。

短期的には需給の動向が重視され、中期的には企業業績が重視される傾向がありPERとEPSをかけることで株価が予想できるとされています。そこから日経平均株価を予測すればトレードの精度が向上する可能性があります。

文・田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。