絵画やアートを趣味にする富裕層は多いでしょう。中でも絵画を購入する「アートファンド」は会社経営者や個人事業者にとっては、税制上のメリットがあることで注目されています。その概要を紹介します。

オフィスに彩りを添える絵画のメリット

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(画像= William W. Potter/stock.adobe.com)

オフィスの応接室や医療機関の待合室などには多くの場合、1~2枚の絵画が飾られています。絵画は人の心を和ませ、空間に彩りを添えてくれます。展示している作家によっては、会社のステータスを上げてくれるメリットもあるでしょう。絵画は単に趣味というだけではなく、投資になることはよく知られています。多くの名画の例を見るまでもなく、絵画は最も高騰が著しい資産アイテムといえます。

しかし、美術品が事業資産として減価償却できることは、あまり知られていないかもしれません。

税制改正で「アートファンド」に注目

2015年に税制改正が行われ、美術品に対する減価償却の対象になる基準が大幅に緩和されました。改正前は20万円以下の美術品が対象でしたが、改正後は100万円以下に対象が広がったのです。そこで節税メリットのあるアートファンドが注目されるようになりました。

20万円では市場価値が上がる絵画を探すのは困難でしたが、100万円までであれば将来性のある作家の作品も購入可能になります。アートファンドの仕組み(ACFアートファンドの例)は、たとえば、60万円で購入した絵画を法定耐用年数の8年間ロビーなどに展示します。その間、毎年定められた減価償却費を計上して節税します。そして、8年後減価償却期間が終了した時点で、税制上の残存価値はなくなります。

しかし作家の人気が上昇し、市場価値が100万円に上がっていれば、会社や個人事業者にとって大きな含み資産となります。逆に価値が下がっている場合には、売却の際にキャピタルロスが生じます。しかし、すでに経費として償却しているので、実質的な損は無いと考えられます。これがアートファンドの大きなメリットなのです。アートファンドは会社経営者だけでなく、個人事業者も利用することができます。

ただし、減価償却の対象となる「価値が減少する絵画」として認められるには条件があります。それは、ロビーなど不特定多数の人が鑑賞可能な場所に展示してあることです。原則として同じ場所で展示する必要があり、途中で経営者の自宅などに移動させると税務署に指摘される恐れがあります。

アートファンドを利用するための注意点

アートファンドを利用する際に注意すべきことは、事業に供する目的で買う必要があることです。個人事業者が趣味で購入して自宅に保管しているだけでは経費として認められません。たとえば、アートカフェのような絵画を展示する必要がある事業には最適といえるでしょう。

また減価償却資産なので、償却が終わるまでは売却ができませんから余裕資金で購入するようにしましょう。アートファンドは新しい形のビジネス投資として、今後も注目を集めそうです。