投資は興味を持ったその時がはじめ時です。どれだけ優秀な投資家でもタイミングを狙って勝ち続けるのは至難の業です。そもそも投資の時期や売買のタイミングを考える必要のない「つみたてNISA」をご紹介します。

目次

  1. つみたてNISAでの投資は早く始めるほど効果が高い
  2. 投資初心者は、まずはつみたてNISA口座を開設しよう
  3. 投資に関する「誤解」
  4. つみたてNISAとは?
  5. 大事なのはどこに投資するか

つみたてNISAでの投資は早く始めるほど効果が高い

金融
(画像=SergeyNivens/stock.adobe.com)

つみたてNISAを始めるタイミングは測れない

投資というと、一般的には「安く買って高く売る」という認識があります。この記事を読まれている方の中には、つみたてNISAについても安値で購入して最も高値で売却したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、つみたてNISAではこのようなタイミングを図る必要はありません。なぜならつみたてNISAは、複利運用の長期つみたてにより、相場変動のリスクを軽減して利益を生む仕組みだからです。
確かに相場が安い時につみたてNISAを始めれば利益は大きくなるかもしれませんが、20年という運用期間の中でどのような景気変動が起こるかは、プロの投資家でも予想できることではありません。
したがって、より多くの複利効果を享受するためには、早く始めるのに越したことはありません。

複利運用効果の恩恵

複利運用とは、利息にも利息が付き投資資産が雪だるま式に増えていく効果を言います。例えば、100万円を年利2%で運用する場合、単利運用では毎年2万円の利息を得ることができます。複利運用では、この2万円を元本に組み入れることにより、利息部分もあわせて運用するイメージです。

2年目は102万円(100万円+2万円)に2%の利率で利息がつきます。2年目の利息は2万400円となり、長期にわたって複利運用することにより大きな差が生じるのです。早期につみたてNISAを利用して、長期・積立・分散投資することにより、大きなアドバンテージを得ることができます。

つみたてNISAなら20年間非課税制度を使うことができる

通常の株式投資などでは、配当金や株式などを売却した場合の譲渡益については20.315%(復興特別所得税込み)の税率で課税されます。一方、つみたてNISAでは20年間の長期にわたって利益を非課税で運用することができます。老後資金の運用などを考慮すると、この違いは大きな差となります。

つみたてNISAをどの証券会社で始めるかは悩みどころですが、ネット証券であれば、多くの投資商品の中から選ぶことができます。キャンペーンを行っているネット証券も多いので、以下から選んでみると良いでしょう。

つみたてNISAネット証券比較ランキング
ネット証券
会社名
投資信託
取扱数
手数料 少額投資

手数料、IPO、外国株
全てトップクラス
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投資初心者は、まずはつみたてNISA口座を開設しよう

つみたてNISAを利用した長期・積立・分散投資には大きなメリットがあります。金融庁もかなり力を入れて推奨しています。「人生100年時代」を生き抜くには、公的年金と預貯金だけで老後資金を作るのが難しくなっているということです。

つみたてNISAによる長期・積立・分散投資で、時間を味方につけた複利効果、ドルコスト平均法による平均単価の引き下げ効果、6つの分野(6資産)への分散投資によるリスク回避が可能です。

特に、複利効果は早期に開始したほうが時間の恩恵による大きなメリットを享受できます。まずは、金融機関のHPなどを確認し、NISA口座を 開設してみてはいかがでしょうか。

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投資に関する「誤解」

ビジネスパーソンの中には、忙しくて資産運用ができないとこぼす人がいます。また忙しさ以外にも、タイミングや資金面などを理由に投資に対して二の足を踏んでいる人もいるかもしれません。

投資に対する障壁の多くは誤った認識に基づくものも少なくありません。ここでは代表的な「誤解」を取り上げます。

投資に関する誤解1:投資はタイミングを狙って行うもの

資産運用(株式投資)の一般的な認識では、投資のタイミングが最も重要で難しいと考えられています。最高のタイミングとは、最も安値で購入して最も高値で売却することですが、そのような神業的な株式投資は、その道のプロでもなかなかできるものではありません。

基本的に株価は、世の中の動きを瞬時に織り込んでしまうので、タイミングを狙った株式投資では素人に勝ち目はありません。心理的にも株価が上がっている人気の株式を買って、株価が下がり始めると不安になり売ってしまう、ということが往々にしてあります。近年ではAI(人工知能)の発達もあり、タイミングを狙った株式投資は人間が太刀打ちすることは難しくなりつつあるようです。

投資に関する誤解2:専門的な知識がなければ投資では成功できない

株式投資はゼロサムゲームといわれています。勝った人がいれば必ず負けた人が存在します。専門的に研究している、その道のプロでも株式市況を予測するのは不可能であり、まして勝ち続けることは困難です。

『会社四季報』を熟読して、チャートを分析し、株価の動きを追い続けても、株式市場の株価は理解不能な動きをすることもあります。よほどの運と才能に恵まれなければ、長期間(数十年)にわたり勝ち続けることは難しいと思われます。資産運用には比較的専門知識を必要としない、長期・積立・分散投資という投資方法も存在します。

投資に関する誤解3:お金が少ないからできない

まとまった資金がないから投資ができない、という声をよく聞きます。一株数万円単位でしか買えないのでは?という誤解を持っている人は、一部上場企業の有名な会社の株式をイメージされているのかもしれません。

株式の中には一株数百円のものもたくさんあります。100株単位で購入すれば数万円で株の売買が可能です。また多くの証券会社は、少額(単元未満株)から株式投資できる商品も数多く取り揃えています。

さらに、投資信託という商品も存在します。投資信託は投資家から集めた資金をまとめて、運用のプロが株式や債券などに投資・運用する商品です。取引される単位は1口1円で、多くの投資信託は1万口あたりの基準価格で取引されます。

投資に関する誤解4:投資は少額でやっても意味がない

小さな金額で投資をしても儲からないのでは?という声もよく聞きます。しかし、現在大手都市銀行の定期預金口座の預金利率は年利で0.002%です。この金利で100万円を1年間預けたとしても、利息は20円です。また、ここから税金が差し引かれた手取りは15円です。

空前の低金利時代ですが、経済的には物価を上昇させようとする動きがみられます。物の価値が上昇するということは、お金の価値が目減りするということに他なりません。日銀による「2%のインフレターゲット」という政策がありますが、物価が2%上昇するということは、今日100円で買えたハンバーガーが明日102円になっているということです。

定期預金利率の0.002%では、物価の上昇に追いつきません。お金は実質目減りしているので102円のハンバーガーが買えないことになります。まして、タンス預金ではまったく利息が付きません。お金の置き場所をしっかり考える必要がありそうです。

金融庁の資料では、先述の投資信託を利用した長期・積立・分散投資で20年積み立て投資した場合、年利4%の利回りを確保できています。少額積立であっても、時間を味方につけることによる複利効果もあり、大きな効果が期待できます。

投資に関する誤解5:忙しくて時間がないから自分にはできない

忙しく働く社会人では、タイミングを計って売買する投資スタイルは、時間の確保が難しいと思います。

一方、長期・積立・分散投資は、ビジネスパーソンなど多忙な人にとって理想的な投資スタイルです。金融機関に口座を開設し、積立投資金額・配分などを設定してしまえば、自動で積立投資をしてもらえます。その金融機関にお金を預けておくだけです。

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つみたてNISAとは?

老後資金などを目的に長期的な視点に立って資産運用する場合、投資信託による長期・積立・分散投資が適しています。投資信託は、運用のプロが国内外、株式・債券などのさまざまな投資先に分散投資する商品です。長期間の積立投資によって複利効果を得られるのもメリットです。さらに、国の税制優遇策である「つみたてNISA」を活用すれば、節税しながら長期投資ができます。

つみたてNISAの投資制度について

つみたてNISAとは、少額(定額)での長期・積立・分散投資を促進するための非課税制度(2018年1月スタート)です。つみたてNISAの対象商品は金融庁が厳選した投資信託のみです。手数料が安く、頻繁に分配金が支払われない商品などが対象で、長期・積立・分散投資に適したものとなっています。

つみたてNISAでは、毎年40万円を上限として、対象商品に投資することができます。その期間は最長20年間で1人最大800万円となります。非課税なので、投資(購入)した投資信託などを保有している期間に得た分配金や、売却して得た利益(譲渡益)に税金(約20%)が課税されません。

▽つみたてNISAの特徴

確認項目 特徴
利用できる方 日本在住の20歳以上の方(口座を開設する年の1月1日現在)
非課税対象 一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益
口座開設可能数 1人1口座
非課税投資枠 新規投資額で毎年40万円が上限(20年間で最大800万円まで)
非課税期間 最長20年間
投資可能期間 2018年~2037年(2024年の改正により、2042年まで延長)
投資対象商品 金融庁が厳選した公募株式投資信託およびETF

非課税枠の取り扱いは、現在、つみたてNISAでは2037年までとなっています。投資信託などを購入できるのは2037年(2024年に改正予定)までです。2037年に購入した投資信託などについても20年間(2056年)まで、非課税で保有することができます。

一般NISAとの違い

NISA制度には他に、「一般NISA」もあります。両者の違いは下表の通りです。

▽一般NISAとつみたてNISAの違い

一般NISA つみたてNISA
対象者 日本在住の20歳以上の方
投資可能期間 2023年12月まで 2037年12月まで
非課税期間 投資した年から最長5年間 投資した年から最長20年間
年間投資上限額 120万円 40万円
投資対象商品 上場株式および公募株式投資信託など 公募株式投資信託およびETF
投資方法 一括買い付け・積立も可能 積立投資

※投資可能期間は2024年の改正により、それぞれ5年間延長 一般NISAとつみたてNISAの大きな相違点は、投資手法の違いにあります。一般NISAでは基本的に一括買い付けが基本となり、その非課税投資期間も5年間に限られます。年間投資上限額は120万円であり、投資対象商品には上場株式も含まれます。一般NISAは、ある程度の株式投資スキルが求められる投資方法となります。

また、もう1つの大きな相違点として、一般NISAは非課税期間終了後にロールオーバー制度が認められており、非課税期間終了後も翌年度の非課税枠を利用してさらに5年間非課税で運用することが可能です。この場合、時価で翌年の買い付け可能枠に移管することになります。

時価が120万円を超えている場合も全額移管することは可能ですが、買い付けをすることはできません。移管された時価が120万円に満たない場合は、その満たない金額分を買い付けすることができます。なお、つみたてNISAはロールオーバー制度を利用できません。

つみたてNISAの威力が発揮される局面

つみたてNISAは、年間40万円までと非課税投資枠が限られます。そのため、定期的な積立投資が適しています。この積立投資なら、ドルコスト平均法の手法により、相場の上下、購入するタイミングなど、煩わしい作業を回避することができます。ドルコスト平均法は、定期的に一定金額で投資信託などを購入することにより、購入価格の平均単価を引き下げることを目的としています。

毎月定額で買い付けることから、価額(基準価格)が低い時は多く買い付けることができますが、価額が高いときは少なく買い付けるという投資手法です。つみたてNISAは、ドルコスト平均法の手法により、買い付け平均単価を低く抑えることが可能となります。

放ったらかし運用ができる

つみたてNISAを利用した投資手法(長期・積立・分散投資)では、毎月定額での投資を行うことで、相場の上下や購入のタイミングなどを考慮する必要もなく、口座を開設した金融機関にお金を預けておくだけで、設定した金額で資産運用してくれます。現在では、毎日100円からの運用が可能となっており、毎月の上限額3万3,333円(年間40万円)の範囲内で投資できるので、設定の自由度が非常に高くなっています。

▽つみたてNISAのメリットおよびデメリット

メリット デメリット
非課税で運用できる 元本が保証されていない
少額投資が可能 損失の面倒はみてくれない(損益通算不可)
タイミングの判断が不要 非課税枠を翌年に持ち越せない
比較的、専門的な投資知識を必要としない 所得控除は適用されない
いつでも換金(売却)できる
年齢の上限設定がない
低コストで運用できる
複利効果の恩恵をうける
長期の運用でリターンが安定する
ドルコスト平均法による恩恵をうける

大事なのはどこに投資するか

つみたてNISAでは金融庁が指定した公募株式投資信託およびETFへの投資が可能です。この商品の投資可能な分野を下記の表にまとめてみます。

▽つみたてNISAで投資できる投資信託およびETFの投資先

投資運用先 株式 債券
日本国内 国内株式 国内債券
先進国 先進国株式 先進国債券
新興国 新興国株式 新興国債券

個別のどの商品に投資するかではなく、どのようなバランスで投資資産を配分するかが、重要になってきます。また、定期的なメンテナンス(リバランス)を施すことにより、最適なパフォーマンスを維持することができます。投資資産を分散することにより、リスクを分散する考え方です。

自分に合ったリスク許容度を選ぶ

上記の表は、6つの分野に分類されています。これは分散投資における基本的な考え方です。日本国内・先進国・新興国に分類され、その地域の株式および債券にかかる投資信託というイメージです。

それぞれにリスクが潜んでおり、どのような配分で投資するのかは自身の判断になります。それぞれに潜むリスクはありますが、自身がどこまで許容できるのかで、運用利回りに影響します。

日本国内の株式・債券のみに投資する場合は元本割れリスク、日本国内と先進国の株式・債券に投資する場合は元本割れリスクと為替リスク、日本国内と先進国および新興国の3つの地域に投資する場合は元本割れリスクと為替リスクとカントリーリスクを許容します。

リスク強度とリバランス

リスク強度は、新興国>先進国>日本国内となります。新興国とは、これからさらに発展を目指している国々で、具体的にはBRICsが発行している投資信託などです。また、新興国ではカントリーリスク(デフォルト)などのリスクも含んでいますので、比較的ハイリスク・ハイリターンの投資先となります。

また、当初自分自身が決定した投資配分が、時間の経過によりバランスを崩すことがあります。「国内株式5:国内債券5」の割合で毎月定額の積立投資を開始していた場合、時間の経過により、「国内株式7:国内債券3」という割合になる場合もあります。これは、株式のほうがよりパフォーマンスに優れていることもあるからです。

このように、バランスが崩れていると、投資スキーム全体のリスクヘッジが損なわれている状態になります。この場合、元の5:5のバランスに戻す必要があります。これを「リバランス」といいます。一定期間に必ず実施することにより、パフォーマンスを上げることができます。

文・内宮 慶之
ファイナンシャルプランナー。大阪市天王寺区でFP事務所を開業しており、講師業・相談業・執筆業を主としている。会計事務所に長く在籍していたこともあり、法人と個人のバランスを考慮したコンサルティングを得意とする。相続についての相談実績も多数。趣味は山登りで、自然のなかにいることが何よりの癒し