株を買った人は、誰でも値上がりを期待します。しかし、昨今はさまざまな情報が溢れているため、値上がりする株を予想するのは難易度が上がっています。そこで今回は、「どのような点に着目して株の値上がりを予想すればよいか」について解説します。どの情報を優先し、どの情報を捨てるのか。企業の決算情報から、多くの投資家が注目する情報サイトまで、24時間アクセスできる、ネット時代ならではの銘柄探しのコツを考えていきます。
目次
前提として株価を予想するのは難しい
基本的に企業は四半期ごとに決算報告を行いますが、その他に来期の業績の見通しなども予想して公表します。その際、業績予想を修正する「上方修正」や「下方修正」が発表されることも少なくありません。値上がりする株を予想するだけでなく、株価に影響を与える業績予想でさえ当てることは難しいといえます。なぜ、それほどまでに株の値上がりを予想することは難しいのでしょうか。
株価の予想はなぜ難しいのか
経済に精通したアナリストでさえも、株価を予想することは難しいといわれています。アナリストなどが発表する株価予想は、現在の株価や業績、トレンドがベースになっていることが多いでしょう。そのため、上昇トレンド中であれば値上がりの予想が多く、下降トレンドの最中であれば値下がりの予想が多くなります。現在の株価や業績と大きくかけ離れた予想をする人は、あまりいません。ほとんどが、予想外の株価の動きを想定していないのです。
また「株は思惑で買って事実で売れ」という株の相場格言があるように、株価は感情で動くことも少なくありません。事実が発表される前に、株価がすでに上昇していることもあります。このことからも、値上がりする株を予想することはおろか、株価の予想自体が難しいといえるでしょう。
予想を鵜呑みにせず、さまざまな観点から情報を仕入れ、総合的に判断する
株価の値動き予想は、証券会社のサイトや経済紙などで確認できます。しかしそれらを鵜呑みにして株を購入すると、値下がりしてしまうこともあるでしょう。そのため他の観点でも情報を収集し、それらを照らし合わせることが大切です。
株の値上がりを期待するなら、現在の株価が割安なのか割高なのか知っておく必要があるでしょう。その場合は、PER(株価収益率)を参考にします。PERは、株価を一株あたりの純利益で割ったものです。PERの数値が小さければ割安と判断できるため、銘柄選びの際に役立ちます。
また決算の内容も、株価の動きを知る手掛かりになります。業績が好調であれば、今後の値上がりが期待できます。本業で稼いだ利益を表す「営業利益」は特に重要です。これまでの推移だけでなく、決算短信では次期の予想も確認しましょう。
投資家には、これらを考慮して総合的に株価の動きを予想するスキルが求められます。
投資家が注目しているサイトや株価が上昇しやすいテーマに注目する
株式に投資する際に活用したいのが、投資家が注目しているサイトや株価が上昇しやすいテーマの選定です。実際に利益を出している投資家が利用しているサイトは、とても参考になります。また、経済の傾向を読んで、時流に乗った株価が上昇しやすいテーマを探すことも大切です。テーマは、投資家が注目しているサイトなどでも情報を収集できます。
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株の値上がり予想に役立つサイトは?
株の値上がりを予想するための情報を自分で収集しようとすると、時間がいくらあっても足りません。株の値上がり予想に役立つサイトを利用すれば、効率よく欲しい情報を収集できます。ここからは、そのようなサイトを利用するべき理由と、値上がりする株を探すために利用すべきサイトを紹介します。
株の値上がり予想にサイトが有効な理由
株価の値上がり予想にサイトが有効な理由は、投資家が購入、あるいは注目している株を知ることができるからです。株価は、需要と供給で決まります。株を欲しい人が多ければ値上がりし、株を手放したい人が多ければ値下がりします。
現在値上がりしている銘柄は、すでに買い手が多い状態なのです。現在値上がりしている銘柄のなかには、好材料が出たものもあるでしょう。サイトを活用すれば、上昇しそうな銘柄を知ることができます。
株の値上がり予想に役立つサイト1:「みんなの株式」
「みんなの株式」では、株価やニュース、「買い予想数上昇ランキング」などを閲覧できます。みんなの株式が独自に集計している「個人投資家の予想(最新48時間)」をもとにランキング形式で発表されるため、現在注目されている銘柄がわかるでしょう。「株価値上がりランキング」や株価の値動き上昇率からも探せるため、すでに値上がりしている銘柄も確認できます。
みんなの株式では、株をテーマ別に探すこともできます。人気のテーマや急上昇のテーマがわかるため、それも判断材料になるでしょう。
株の値上がり予想に役立つサイト2:「QUICK Money World」
「QUICK Money World」はさまざまなデータをもとに、自分の欲しい情報をスクリーニングできるサイトです。「コンセンサス株サーチ」では、QUICKが集計したプロの意見をもとにした値上がり予想銘柄のほか、業績予想まで閲覧できます。
「値上率ランキング」や「注目株ランキング」では、リアルタイムで上昇している銘柄を探せます。また、QUICKが作る五角形のスコアチャートからさまざまな企業を比べることもできるため、一目で銘柄の全体像が掴めるでしょう。
株の値上がり予想に役立つサイト3:「FISCO」
「FISCO」は、有料でアナリストのレポートやトレーダーの手法を販売しているほか、無料でマーケットの最新情報が得られるサイトです。マーケット最新情報のなかの「出来た株・動いた株」では、最新の個別株の動きが詳細に記されています。
銘柄名はもちろん、その時点の株価や値幅、株価が動いた理由も記載されているため、個別株の動向を探るのに役立つでしょう。
国策テーマを知って値上がりしそうな銘柄を予想
「国策に売りなし」という相場格言があります。「国策に関連する業種や銘柄は値上がりしやすく、発展しやすい」という意味です。国策とは、国が特定の目的を達成するために行う政策のこと。現時点で進められている国策を知っておくことは、株の値上がりを予想する上で非常に重要です。
現在の国策には、どのようなものがあるでしょうか。
国策テーマ1:ペーパーレスや電子化への取り組み「デジタル庁」
デジタル庁は、2020年に内閣総理大臣に就任した菅首相が発表した新設省庁です。省庁と地方自治体のデジタル化を推進し、行政手続きの迅速化を目指します。また、国民の健康保険証や運転免許証などをマイナンバーカードと統合し、手続きの簡易化やペーパーレス化を進める方針です。
総務省は2021年度の概算予算で、デジタル庁の自治体情報システム標準化や行政手続オンライン化などの予算を38億8,000万円計上しており、大きな資金が動く見込みです。関連銘柄には、「NTTデータ(9613)」や「日本電気(6701)」などがあります。
NTTデータグループの主なセクターは、ITサービスです。公共・社会基盤事業では、過去に行政のシステムを構築した経験もあります。日本電気もNTTデータグループ同様、パブリック事業において官公庁や公共のシステム構築やサポートを行っています。
国策テーマ2:世情が追い風に「オンライン診療」
2018年、厚生労働省はオンライン治療の保険適用化などに向けて動き出しました。オンラインや電話で診察ができるため、医師や看護師と接触することなく受診でき、薬は薬局から届く仕組みになっています。
当初は初診に関しては病院での受診が必須でしたが、2020年には初診もオンライン診療が可能になりました。病院に行くことに抵抗のある人や病院に出向くことが難しい患者にとって、うれしいサービスとなるでしょう。
関連銘柄には、「エムスリー(2413)」や「メドピア(6095)」などがあります。エムスリーは、医療従事者向けサイトの運営や治験のほか、ICTやIoT事業を行う会社です。NTTドコモやソニーと資本業務提携を結び協業するなど、大手企業とのタッグが注目されています。
メドピアも医療関係者専用サイトを運営しており、医師から寄せられた処方実感の情報を提供しています。最近では、以前は海外向けサービスだったスマホから医師に医療相談ができるサービスを、国内向けに拡大しました。
国策テーマ3:より速い通信速度へ「5G」
5Gとは、5世代移動通信システムのことです。通信速度が高速になるほか、リアルタイムのゲーム対戦などで問題になっていた遅延を解消し、多数のデジタル製品との同時接続も可能になります。オンラインゲームやスマホ、デジタル家電が普及している今、需要は拡大の一途をたどるでしょう。
関連銘柄には、「アンリツ(6754)」や「オプトラン(6235)」などがあります。アンリツは、基地局向けの通信系計測器などのシェアが国内外で大きい企業です。5Gに対応した製品も多くリリースしていることから、今後の値上がりが期待できます。
オプトプランは、光学薄膜装置を製造する企業です。光学薄膜は、ブルーライトカットや反射防止膜などの加工をレンズに施す際に用いられます。スマートフォンをはじめ、車載カメラや認証センサーなどに使用されており、5Gが普及すれば需要はさらに拡大するでしょう。
ネット証券は投資テーマに関する情報提供コンテンツも多い
ネット証券では株を売買するだけでなく、株を探すこともできます。SBI証券には、簡単に少額からテーマ株に投資できる「テーマキラー!」というサービスがあり、話題のテーマに関連する10企業に分散投資ができるうえに、単元未満株を活用するため5万円から購入可能です。
楽天証券の「マーケットスピードⅡ」では、テーマ別の関連銘柄をランキングで見ることができます。気になるテーマは最大30件まで保存できるため、後日でもすぐに見返すことができるでしょう。
マネックス証券ではテーマ株を一覧で見られるほか、アクセスランキングや急上昇ランキング別で見ることも可能です。テーマ別急騰落ランキングもあるため、大きく下げている銘柄とそのテーマも確認できます。
このようにネット証券を賢く使えば、株の売買だけでなくテーマ株を調べることもできるのです。
過去のテンバガー銘柄の特徴から探す
過去のテンバガー銘柄の特徴から、値上がりする株を予想する方法もあります。テンバガーとは、株価が10倍になった銘柄のことです。これまで、どのような銘柄がテンバガーになったのでしょうか。特徴と併せて見ていきましょう。
テンバガー達成銘柄と特徴とは?
コールセンターなどへの派遣事業や、障害者雇用支援を目的とした農業事業を行う「エスプール(2471)」の株価は、一時期4.7円をつけていましたが現在は950円を超えています。子育て支援や高齢化社会など、現在社会問題になっている部分にアプローチするソーシャルビジネスは、時代とマッチしているといえるでしょう。今後もこのような社会問題に取り組む会社は、注目されるかもしれません。
半導体やエネルギー・環境関連の装置を作る「レーザーテック(6920)」は、100円台から1万円超まで成長した銘柄です。次世代の半導体製造技術である「EUV」の加速により、半導体テーマ株は軒並み盛り上がっています。EUVの導入スケジュールが順調である同社は、さらに営業利益を伸ばすと予想されています。
まとめ:情報を取捨選択し、情勢に合わせて投資方針も軌道修正を
株価は、企業の業績だけでなく国策などによっても変動します。移り変わりの激しい世界の状況を予想することは困難です。値上がりする株を予想する際は、業績だけでなく国策やテーマなど、さまざまな観点から企業を見る必要があります。また、過去にテンバガーとなった銘柄の特徴を知れば、将来値上がりするお宝銘柄を発掘できるかもしれません。
株の値上がり予想に役立つサイトを活用すれば、投資家が注目している銘柄を知ることもできます。気になるテーマや国策から株の値上がりを予想し、投資に役立ててください。
文・丸山 希
フリーランスライター。第3子出産を機に、2018年11月より資産運用を開始。NISAでETFやREIT、個別株の売買を行う。その後は米国株へも挑戦。投資をきっかけに政治や経済などお金のことに興味を持ち、より知識を深めたいとの思いから、現在FP2級取得を目指している。