投資をするとき、税金の話は気になるものです。どんなときに課税がされるのか、確定申告はどうしたらいいのか、投資を始める前に確認したいところです。本記事では、ネット証券でこれから投資を始めようと考えている方はもちろん、すでに投資を行っているものの税金のことがよくわからなくてもモヤモヤしているという方に向けて、税金や確定申告の基本、確定申告の必要性の有無、必要な場合の具体的な方法などを解説します。

目次

  1. 投資で儲かった場合の税金の取り扱いを知ろう
    1. 確定申告とは?
    2. 確定申告が不要になるケースもある
  2. 「ネット証券」の確定申告方法は?
    1. 3つの証券口座、それぞれの違い
    2. NISA口座での運用ならば確定申告は不要
  3. 「特定口座」(源泉徴収あり)でも確定申告したほうが得する人は?
    1. 複数の証券会社に口座開設をしていて、片方で利益、片方で損失がある場合(損益通算)
    2. 翌年以降に損失を繰り越したい人
  4. 確定申告の方法は?
    1. 確定申告の期間
    2. 申告書類の準備
    3. 配偶者控除などの適用を受ける場合「合計所得金額」に注意!
  5. 税金と確定申告の知識を学ぶと同時に、利益もしっかりあげよう

投資で儲かった場合の税金の取り扱いを知ろう

ネット証券か否かにかかわらず、投資で儲けが出た場合には税金が発生します。株式投資で得られる利益にはキャピタルゲイン(譲渡益)とインカムゲイン(配当収入)がありますが、これらには一律で20.315%の税金がかかります。

一般的な証券口座の場合はこの税金を納めるための確定申告が必要になるので、最初に投資の利益と税金、確定申告の関係について理解しておきましょう。

確定申告とは?

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までに発生した1年間の所得を税務署に申告することです。「確定」という名称になっているのは、確定申告をすることによってその人の1年間の所得額とそれに応じた所得税などの税額が確定するからです。

投資の利益に対する税金には、「譲渡益課税」と「配当課税」の2つがあります。譲渡益課税とはキャピタルゲインに対する税金で、配当課税はインカムゲインに対する税金です。いずれも税率は一律20.315%となっていますが、この内訳は以下の通りです。

所得税15%+復興特別所得税(所得税に対して2.1%)+住民税5%=20.315%

復興特別所得税とは東日本大震災の復興に用いられる財源として2037年まで発生する期間限定の税金です。税率は所得税に対して2.1%なので、15%に対する2.1%として0.315%が上乗せされます。15%と0.315%を足したものに5%の住民税を加算するので、合計が20.315%というわけです。

確定申告が不要になるケースもある

投資で利益が発生したら納税の義務が生じるため、基本的には確定申告が必要です。しかし、以下のようなケースに該当する方は納税の義務がそもそもないため、確定申告も不要になります。

  • 年収が2,000万円以下で、投資の利益が年間で20万円以下
  • 投資以外の所得がない人で、年間の利益が38万円以下
  • まだ利益が確定していない(含み益)

3つめの「まだ利益が確定していない(含み益)」とは、まだ投資した商品を売却しておらず、利益が確定していない状態を指します。実際に売却をしておらず利益も確定していないので、当然、税金も確定しない、ということです。
 

「ネット証券」の確定申告方法は?


ここでは、ネット証券と確定申告の関係について解説します。証券口座には3つの種類があり、その種類によっては確定申告が不要になります。

3つの証券口座、それぞれの違い

ネット証券に限らず、証券会社の口座には税金の取り扱いによって3つの種類があります。この3つについて知っておく必要があるので、一つずつ見ていきましょう。

・3つの証券口座その1:一般口座

税金の扱いについて特別な機能を持たないのが、一般口座です。投資で利益が出た場合は投資家自身が確定申告をして、納税をする必要があります。

確定申告のためには利益額を自身で算出し、さらに必要経費と通算したものを申告することになるため、税金に詳しくない人や投資初心者、さらにはこうした税務が煩雑に感じる人には不向きといえます。

・3つの証券口座その2:特定口座(源泉徴収あり)

特定口座とは投資によって得られた利益の計算や申告を簡素化するために設けられている口座のことで、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。

源泉徴収ありの特定口座では投資家自身が利益額の算出をする必要がなく、確定申告も不要です。納税は証券会社が口座の預り資金から源泉徴収(天引き)します。確定申告について不安や心配がある人は、特定口座の源泉徴収ありを利用するのがいいでしょう。

・3つの証券口座その3:特定口座(源泉徴収なし)

特定口座のうち「源泉徴収なし」の場合は確定申告をする必要があります。ただし、証券会社で作成される年間取引報告書や支払通知書を使用して、簡単な確定申告の手続きだけで納税を完了させることができます。しかも2019年4月からは証券会社の書類を添付する必要がなくなったため、より手続きは簡素化されています。

「源泉徴収あり」の特定口座だと利益発生時にそれに応じた税金分が拘束されるため、実質的に投資元本が減ってしまうことになりますが、源泉徴収のない特定口座であれば確定申告によって自ら納税をするため、最終的に年間を通じて得られた投資の結果から確定申告をすることになります。これにより、源泉徴収のある特定口座のように取引ごとに資金が拘束されてしまって資金効率が低下することを防止できます。

NISA口座での運用ならば確定申告は不要

投資の利益に対する税金の優遇制度として知られているのが、NISA(少額投資非課税制度)です。NISAは年間120万円(つみたてNISAは年間40万円)を上限とする投資に対する譲渡益と配当金それぞれが非課税になる制度です。NISAの範囲内で投資をしている以上は確定申告の必要はありません。

NISAは最長5年間(つみたてNISAは最長20年間)まで非課税枠を利用できるので、税金の分も含めて投資の利益をしっかり自分の資産として増やしていきたい方には利用価値の高い制度です。

▽確定申告が必要な人/不要な人
 

確定申告の必要有無 口座や取引の種類 税率と納税方法
不要 特定口座(源泉徴収あり) 税率20.315% \ 確定申告は不要、上記税率で口座から天引きされる
必要 特定口座(源泉徴収なし) 税率20.315% 年間取引報告書をもとに簡易な確定申告をして納税
必要 一般口座 税率20.315% 自ら申告書を作成して確定申告、納税
不要 NISA口座 非課税なのでそもそも確定申告は不要
必要 FX取引 税率20.315% 自ら申告書を作成して確定申告、納税
必要 CFD取引、先物取引など 税率20.315% 自ら申告書を作成して確定申告、納税
 
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「特定口座」(源泉徴収あり)でも確定申告したほうが得する人は?

前述の通り、特定口座の源泉徴収ありを選択した場合、確定申告は不要です。ただし、確定申告を禁止されているわけではありません。状況によっては源泉徴収がある特定口座であっても確定申告をしたほうが有利になるケースがあります。ここでは、主な2つのケースについて解説します。

複数の証券会社に口座開設をしていて、片方で利益、片方で損失がある場合(損益通算)

あるネット証券会社に口座を保有している人が、その証券会社とは別の口座も持っているとします。一方の証券会社では利益が出ているのに対して、もう一方では損失が出ているのであれば、この両者のプラスとマイナスを合算することができます。これを「損益通算」といいます。

たとえば、ネット証券のA社で利益が出ている一方で、B社では損失が出ているとします。A社の証券口座が特定口座で源泉徴収ありの場合は確定申告が不要ですが、B社の損失分を含めた確定申告をするとA社の利益から損益通算によって差し引くことができるため、A社の利益を圧縮して節税に役立てることができます。

翌年以降に損失を繰り越したい人

投資による損失は他の所得と損益通算をすることにより、損失分を所得額から差し引く(控除)ことができます。これにより課税対象所得の圧縮が可能になりますが、本年分の損失が大きく控除しきれない場合は翌年以降、最長3年にわたって繰り越すことができます。

投資で大きな損失が出ることはいいことではありませんが、他の所得との損益通算を翌年以降に繰り越して節税メリットを得たい場合は、源泉徴収ありの特定口座であっても確定申告をすることでそのメリットが得られるようになります。

確定申告の方法は?

ここからは、確定申告の基本と書類、注意点について解説します。

確定申告の期間

確定申告の時期は、毎年2月16日から3月15日までです。この期間に、前年1年分の所得と経費を確定させて申告書を作成、提出する決まりになっています。

申告書類の準備

確定申告で必要になる申告書は、税務署で入手可能ですが、国税庁のホームページからもダウンロードできます。

なお、先ほども述べたように2019年4月からは申告者の利便性向上を図るために年間取引報告書や支払通知書といった証券会社から発行される書類の添付は不要になっています。

配偶者控除などの適用を受ける場合「合計所得金額」に注意!

配偶者など控除対象の人がいる場合、たとえば年収900万円以下の方が受けられる38万円の控除をはじめとする配偶者控除や配偶者特別控除などが適用されている方は多いと思います。こうした所得額の控除を受けている方が確定申告を行うと、株の譲渡益など投資による利益が加算され、合計所得額が変動します。

この合計所得額の変動によって、配偶者控除の適用外になってしまったり、社会保険料の負担額が変わってしまったりなどの不利益が生じる可能性があります。そのため、投資によって大きな利益が出ている場合は、確定申告によって確定する合計所得金額がいくらになるのか、注意が必要です。

なお、源泉徴収ありの特定口座であれば自ら確定申告をしない限りは投資による利益を合計所得金額に合算しなくてもよいため、配偶者控除や社会保険料などへの影響はありません。

税金と確定申告の知識を学ぶと同時に、利益もしっかりあげよう

ネット証券に口座を開設して投資を始める目的は、資産を増やすことでしょう。お金を増やすことで将来や老後の安心を得ることができ、今の生活をより豊かにすることにもつながります。それには納税や確定申告とのかかわりが避けられませんが、この記事で解説した情報を役立てていただければ、決して難しいものではありません。煩わしいとお感じの方は特定口座で源泉徴収ありを選択すれば大幅に負担は軽減されるので、それを選ぶのも有効です。

大切なのは投資と税金のかかわりをしっかりと理解しておくことです。基本的な知識を習得し、投資に集中できる環境を整えましょう。

田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。