金(ゴールド)は、宝飾品あるいは投資の対象として、貴金属の中でもっとも古い歴史をもつ資産である。この金を投資対象とした投資信託とETFの違いや特徴、メリット・デメリットを解説するとともに、代表的な銘柄を4つ紹介する。

1,金(ゴールド)投資とは?代表的な4つの手法

金(ゴールド)投資信託・ETFのメリットやデメリット 代表的な銘柄や特徴は?
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

金(ゴールド)投資では、金の現物(金地金、金貨)、あるいは金価格などが対象指標になる投資信託またはETF、金から派生した金融商品などが主な投資対象となる。金投資のうち、個人投資家が取引しやすいものは主に下記の4種類である。

投資商品 投資対象 内容
現物投資 金地金(インゴット、延べ棒)
金貨(コイン)
現物をグラム数または金額を指定して
買付ける(スポット取引)
純金積立 金地金 金の現物を、同量または
同額で定期的に買付ける。
金投資信託 純金価格
純金ETF
金鉱企業銘柄のポートフォリオ
対象指標に連動する
パフォーマンスを目指して運用する。
金ETF 金地金価格、金先物価格 対象指標に連動する
パフォーマンスを目指して運用する

このうち、現物投資と純金積立は、従来から貴金属取扱業者が中心となって取引を行ってきた。現在、主要ネット証券のSBI証券や楽天証券、マネックス証券でも、金取引専用口座を開設すると金を取引することができる。

金投資信託と金ETFは、一般の株式や投資信託と同じように、ネット証券の証券口座で取引できる金融商品である。

2,金投資の4つの特徴

実物資産である金への投資は、株式投資などとは異なった特徴を持つ。ここでは主な特徴を4つ挙げる。

特徴1,金は有事に強い安全資産である

戦争やテロ、大規模な天災などの発生、世界あるいは国の経済不安といった有事においても、金価格が大暴落することはないため、金は「安全資産」や「代替通貨」と呼ばれている。

金は希少価値が高く、実体のある資産であり、信用を基盤に運用されている通貨や有価証券などと違って、その価値がゼロになることはない。

国の財政悪化による通貨価値の下落や、景気後退によって株式相場が暴落するような局面においても、金は比較的安定した価格推移を期待できる。

特徴2,株式や債券の値動きと相関性が低い

実物資産である金は株式や債券とは性質が異なる資産なので、金の値動きは株式や債券などの値動きと連動しにくいことで知られている。

そのため、金を価格の相関性が低い株式あるいは債券などと一緒にポートフォリオに組み入れることで、リスク分散効果を得られる。

特徴3,貴金属投資の中で取引量が多く、もっとも値動きが安定している

金は、その美しさと希少性の高さから、古代より装飾品や金塊として加工・保有または投資されてきた長い歴史をもつ貴金属である。現在では、資産価値の高い貴金属として認識されているだけでなく、投資対象としての認知度も、貴金属の中で格段に高い。

貴金属投資家からも、金の人気はダントツに高く、安定した取引量や値動きを誇っている。

特徴4,金地金や金貨を引き出すこともできる

金をはじめとする貴金属を販売する貴金属取扱業者や、金地金取引サービスを提供する主要ネット証券のうち、SBI証券とマネックス証券では、保有数量が一定量になると、金地金を引き出して、自宅で受け取ることもできる。

投資対象の金地金をネット証券でも引き出すことができるのは、不動の人気を誇り、流通量も比較的多い金ならではのサービスだ。

3,金投資信託と金ETFの違い

金投資の中でも、貴金属投資初心者が投資しやすいのは金投資信託と金ETFの2種類である。

金投資信託と金ETFはよく似た商品性をもち、いずれの商品も、どのネット証券からでも簡単に取引できる。似て非なる両者の違いについて、以下で簡単に説明しておきたい。

違い1,取引所に上場しているか、上場していないか

金投資信託と金ETFはどちらも、投資信託の形態をとっており、プロあるいは投資運用会社がファンドを設定し、運用と管理を行っている。対象指標が金価格や金先物価格などの金関連商品価格となっている点も同じである。

金投資信託と金ETFの最大の違いは、証券取引所に上場されている投資信託であるかどうかにある。

金投資信託は基本的に、投資家とファンドを仲介する証券会社との相対取引になる。一方、国内の金ETFは東京証券取引所に上場しており、上場株式同様に市場取引が行われる。

違い2,株式に準ずるか、純粋な投資信託か

上場投資信託である金ETFは、株式と同じ扱いとなり、ネット証券で売買する際には、株式の取引手数料が課せられる。市場で常に取引されているため、リアルタイムでの売買により、時価で取引できる。

非上場の金投資信託は投資信託なので、証券会社が受け取る手数料として、投資信託の買付手数料と解約手数料を支払う必要がある。もっとも、現在主要ネット証券では、投資信託の買付手数料と解約手数料は無料になっている。

金投資信託を含めた投資信託は、取引時間終了後にファンドの運用会社が計算した基準価額で取引されるため、いつ注文を出しても、基準価額1本での約定となる。

違い3,金投資信託のほうが金ETFより若干選択肢が多い

株式や債券などの個別銘柄のポートフォリオ、あるいは株価指数を投資対象とする一般的な投資信託には及ばないが、金関連商品を組み入れた投資信託は、金ETFより、選択できる銘柄数が若干多い。

2021年4月27日現在で、「金」あるいは「ゴールド」がファンド名に含まれる投資信託を検索すると、SBI証券は11件、楽天証券は6件、マネックス証券は6件、松井証券は7件、auカブコム証券は10件が抽出される。

それに対して、東京証券取引所に上場している金ETFは全部で4件(うち1件は外国籍の金ETF)である。

少しでも多い選択肢の中から金関連ファンドを選びたいならば、ネット証券を利用して、金投資信託を探すのがおすすめだ。

4,金投資信託・ETFの3つのメリット

金投資信託や金ETFに投資するメリットとしては、「コストが安い」、「取引が簡単である」、「確定申告が不要になる」の3点が代表的である。

メリット1,コストが安い

金の現物(金地金のスポット取引、純金積立)を取り扱っているSBI証券の場合、取引手数料は買付手数料が約定代金の2.2%(税込)、楽天証券とマネックス証券の買付手数料は買付代金の1.65%(税込)、3社とも売却手数料、口座開設料、口座維持費は無料である。

金投資信託の買付手数料と解約手数料は、上述のように3社とも無料なので、実質的に信託報酬が主たるコストになる。年率1.0%を下回る安い信託報酬の金投資信託もあり、低コストで運用可能だ。

金ETFについては、各社の株式取引手数料が適用される。

SBI証券と楽天証券では、約定代金5万円までが55円(税込、0.11%に相当)、10万円までが99円(税込、0.10%以下)のように格安の手数料が設定されており、口座管理料もかからない。マネックス証券では約定代金10万円以下で110円(税込、0.11%)、口座管理料は無料だ。

金投資信託と金ETFのうち、どちらの商品の、どの銘柄を選んでも、現物取引に比べてコストが安く済むか同等となる。

メリット2,取引には、使い慣れた株式や投信注文画面を利用できる

金投資信託は一般的な投資信託と同じ取引画面から売買の発注ができる。金ETFは、株式取引と同じなので、高機能トレーディングツールあるいはスマホアプリから注文可能だ。

金投資信託と金ETFのどちらも、日頃使い慣れている株式または投資信託の注文画面から注文できるので、気軽に手早く取引できる。

メリット3,確定申告が不要、損益通算も可能

金投資信託や金ETFからあがる利益は、株式投資や投資信託、債券などと同じ譲渡所得であり申告分離課税の対象になる。そのため、ネット証券の源泉徴収ありの特定口座を利用して、確定申告不要にすることができる。

たとえ金投資信託や金ETFから損失が出ても、確定申告不要のまま、同じ特定口座内の利益が出ている株式や投資信託などと損益通算することも可能だ。

5,金投資信託・ETFの3つのデメリット

金投資信託と金ETFは、金地金価格や金先物価格を対象指標とするファンドを利用して、簡単に金地金や金先物に投資することができる。その反面、現物取引でないことによるデメリットもあるので、以下で確認してほしい。

デメリット1,金地金や金貨を引き出すことはできない

貴金属取扱業者や、SBI証券、マネックス証券で、金のスポット取引や純金積立をすると、金地金が一定量になれば、現物を引き出して、自宅で保管することもできる。

一方の金投資信託と金ETFは、どれだけファンドを買い増しても、金地金を実際に引き出すことはできない。

安全資産として、金地金を自宅の金庫に保管したいという人には、金投資信託や金ETFへの投資は適さない。

デメリット2,1銘柄のみではリスク分散効果をあまり期待できない

通常、投資信託やETFは多数の個別銘柄がポートフォリオに組み入れられているため、もともと資産分散、リスク分散の効果が期待できる。

金投資信託や金ETFでは、1件のファンド組入銘柄だけで99%超を占めるファンドが大半であり、金関連ファンドだけでは十分なリスク分散効果を得られない。

金投資信託や金ETFに投資する際には、株式や債券など、さまざまな投資対象で組成された投資信託やETF、あるいは原資産が金以外の金融商品を組み入れて、ポートフォリオを構成することをおすすめする。

デメリット3,金投資信託は希望どおりの条件で取引できない

投資信託特有のデメリットであるが、金投資信託をはじめとする投資信託銘柄は、約定するのが夜間の1回のみ。組入銘柄の当日の評価額が確定して、ファンドの基準価額が算出されるまで約定しないので、日中の金地金や金先物の時価を念頭に置いて発注しても、そのとおりに約定することはない。

取引価格にこだわって取引したい人は、金投資信託ではなく、リアルタイムで取引ができる金ETFを選ぶべきだろう。

6,代表的な金投資信託・ETF4選

金投資が初めての人、金投資信託あるいは金ETFで投資をしてみたい人におすすめする、信託報酬が比較的低く、利益を見込める銘柄を以下に紹介する。

銘柄1,純金上場信託(現物国内保管型)<1540>

<銘柄基本情報>

銘柄名<銘柄コード> 純金上場信託(現物国内保管型)<1540>
通称 純金信託(愛称:金の果実)
2021年4月27日終値 5,940円
対象指標 大阪取引所上場の金先物価格
管理会社 三菱UFJ信託銀行
信託報酬(税込) 0.44%
取引単位 1口単位
分配金利回り 0.00%
トータルリターン(騰落率)
※2021年1月29日現在
過去6カ月 -7.14%
1年 +12.83%
3年 +31.43%
5年 +41.20%

本ETFの対象価格は、大阪取引所に上場する金の先物価格をもとに評価した、金地金の理論価格である。金の先物価格が基準になっているため、「グラム・円」単位で算出される。組入銘柄は金のみ。

上場する金ETFの中ではもっとも新しい(2010年7月2日上場)が、日次の取引高では最大規模を誇る人気の金ETFである。マーケットメイク制度の対象にもなっているので、取引不成立をあまり心配することなく取引できるのが魅力となっている。

純金信託(金の果実)を対象指標とする投資信託に、「三菱UFJ純金ファンド(愛称:ファインゴールド)」がある。

銘柄2,SPDRゴールド・シェア<1326>

<銘柄基本情報>

銘柄名<銘柄コード> SPDRゴールド・シェア<1326>
通称 SPDRゴール
2021年4月27日終値 1万8,060円
対象指標 金地金価格(LBMA金価格)
管理会社 ワールド・ゴールド・
トラスト・サービシズ・エルエルシー
信託報酬(税込) 0.4%
取引単位 1口単位
分配金利回り 0.00%
トータルリターン(騰落率)
※2021年1月29日現在
過去6カ月 -6.56%
1年 +12.15%
3年 +30.71%
5年 +40.78%

米国で初めてETFを販売したグローバル投資運用会社、ステート・ストリートのグループ会社が設定・運用する「SPDR」ブランドの、東証上場金ETFである。

対象指標になっている金地金価格(LBMA金価格)は、金取引の世界標準となっているロンドン金現物取引価格。本ETFの組入銘柄はロンドン金現物取引価格のみ。

東証マーケットメイク制度の対象であるため、取引が約定しやすく、LBMA金価格だけを対象指標としていることから、初心者でも価格を捕捉しやすいのが特徴といえるだろう。

銘柄3,ブラックロック-iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジなし)

<銘柄基本情報>

銘柄名(投資信託) ブラックロック-iシェアーズ
ゴールドインデックス・ファンド
(為替ヘッジなし)
2021年4月26日基準価額 1万3,793円
対象指標 金地金価格(LBMA金価格)
管理会社 ブラックロック・ジャパン
信託報酬(税込) 0.5085%程度
取引単位 1口単位
分配金利回り 0.00%
トータルリターン(騰落率)
※2021年3月31日現在
過去6カ月 -7.42%
1年 +4.94%
3年 +8.96%
5年 +5.32%

米国のブラックロックの日本法人が運用する投資信託であり、同社が展開する「iシェアーズ」シリーズの低価格ファンドの一つである。

対象指標は金地金価格の世界標準であるLBMA価格(円換算ベース)となっており、LBMA価格に連動するパフォーマンスを目指して運用されている。

上述の金ETF2銘柄に比べると、過去5年間以内の基準価額収益率(騰落率)は低いが、2013年9月26日の設定来騰落率は34.18%で好調な伸びを示している。

主要ネット証券5社(SBI、楽天、マネックス、松井、auカブコム)のいずれでも、購入することができる。

銘柄4,三井住友TAM-SMT ゴールドインデックス・オープン(為替ヘッジなし)

<銘柄基本情報>

銘柄名(投資信託) 三井住友TAM-SMT
ゴールドインデックス・オープン
(為替ヘッジなし)
2021年4月26日基準価額 1万2,290円
対象指標 LBMA金価格(円換算ベース)
管理会社 三井住友トラスト・アセットマネジメント
信託報酬(税込) 0.275%
取引単位 1口単位
分配金利回り 0.00%
トータルリターン(騰落率)
※2021年3月31日現在
過去6カ月 -7.58%
1年 +4.34%
3年 +8.01%
5年

本投資信託の対象指標は、上述の金ETF、「SPDRゴールド・シェア」が主体となっており(実質投資比率は純資産総額の100.3%)、ファミリーファンド方式で、為替ヘッジを行わずに運用されている。

実質的なベンチマークはLBMA金価格(円換算ベース)であり、LBMA金価格に連動するパフォーマンスを目指している。

リバランスによる総コスト削減を積極的に行っているファンドであるため、年率0.275%という金投資信託銘柄の中で最低の信託報酬を実現している。

低い信託報酬に加えて、主要ネット証券で取引すれば投資信託の買付手数料と解約手数料は無料なので、金投資信託としては最低コストで運用できるファンドである。

2017年11月18日に設定された比較的新しい投資信託であるが、設定来約3年半のトータルリターンは19.46%で堅調だ。

主要ネット証券5社のうち、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券の3社で購入可能である。

7,効果的なリスク分散には金投資信託・ETFが有効

金は希少性が高いため資産価値があり、有事の際の安全資産としても認知されている。株式や債券の価格とは相関性も低いため、実質的に金に投資する商品を自分のポートフォリオに組み入れれば、有効なリスクヘッジが可能になる。

投資目的で金関連商品を購入する場合、株式同様の低コストで運用できて、見慣れた取引画面から注文できる金投資信託や金ETFがおすすめだ。

貴金属投資を資産分散に活用するならば、金投資は一考の価値があるはずだ。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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