現在、日本国内で販売されている公募投信の総数は5,959本(2021年4月末時点)。多くが一般NISAで購入可能だ。その中から将来良い運用成績をあげそうなファンドを探すには、過去の実績が重要な手掛かりとなる。運用実績の優れた投資信託の探し方と具体的な銘柄を紹介する。

1,投資信託の運用実績のはかり方

NISAで運用実績が良いファンドは?期間別にランキングTOP5を紹介!
(画像=琢也 栂/stock.adobe.com)

投資信託の運用実績をはかる基準はいくつかある。代表的な指標は、収益の高さをはかる「トータルリターン」と、運用効率の高さをはかる「シャープレシオ」だ。

投資信託の収益の高さはトータルリターンで

トータルリターンは、一定期間にその銘柄がどのくらい収益をあげたかを表す。値上がり益と分配金から費用や手数料を引いて算出するもので、一般的に年率(複利)で表示される。たとえば100万円で購入したファンドが5年後に12万円ふえていた場合、トータルリターンは年率2.3%になる。当然この数字が大きいほど運用成績が良い。

ただ、トータルリターンは算出対象とする期間が短期か長期かによって数字が大きく異なるので、複数の期間で比較してみることが重要である。

投資信託の運用効率の高さはシャープレシオで

トータルリターンには死角がある。リターンの大きい投資信託は価格変動リスクが高い。1年で2倍に値上がりするような銘柄は、翌年には半分に値下がりするリスクがある。そこで、価格変動リスクに対してどれだけのリターンを得られたかを表す指標「シャープレシオ」を使う方法がある。

リターンをリスクで割ることで、投資効率の高さをはかれる。値動きが激しくても十分なリターンがあるもの、あるいはリターンは最小限だが値動きも小さいものが評価される。一般的にシャープレシオが1を超える投資信託は優秀だとされている。ただリスク度合いが異なる商品を同列に扱えないので、同じカテゴリーの商品同士で比較することが必要だ。

2,NISAで運用実績の良いファンド(過去1年間)

シャープレシオに注目して過去の運用実績の良かったファンドを抽出した。どの金融機関でもNISAでの扱いがなかったものは除外、また、極端に投資期間が短い銘柄も対象外とした。

まずは過去1年間の実績から5銘柄を選出した。1年間だとファンドの優劣よりも相場の影響を受けやすいことを踏まえた上で参考にしてもらいたい。

商品名 カテゴリー シャープレシオ
(1年)
リターン
(1年)
信託報酬
(税込)
eMAXIS Neo
ナノテクノロジー
国際株式・北米 7.45 195.63% 0.79%
eMAXIS Neo
自動運転
国際株式・
グローバル・含む日本
7.22 230.50% 0.79%
フィデリティ・日本・
アジア成長株投信
国際株式・グローバル・
含む日本
6.80 53.82% 1.64%
グローバル・モビリティ・サービス株式(1年)
『愛称:グローバルMaaS(1年決算型)』
国際株式・グローバル・
含む日本
6.55 135.30% 1.93%
グローバル自動運転
関連株式ファンド(H無)
国際株式・グローバル・
含む日本
6.53 97.60% 1.90%
※投信格付け会社モーニングスター社のファンド検索機能より筆者試算、 2021年3月31日時点

1年という限られた期間においては、その時話題になったテーマ型投信や関連株式ファンドが高リターンをあげやすい。当期間においては「自動運転」がキーワードとなったようだ。

価格変動リスクも高いがそれを上回る収益があるとシャープレシオは高くなる。上位5本はシャープレシオ6以上と高ポイントだ。資産が1年で2倍3倍になるような銘柄が並ぶ。インデックスファンドシリーズであるeMAXISを除けば、信託報酬が2%にせまるなどコストが高めになっている。

3,NISAで運用実績の良いファンド(過去3年間)

もう少し期間を伸ばして、過去3年間ではどうか。

商品名 カテゴリー シャープレシオ
(3年)
リターン
(3年)
信託報酬
(税込)
三菱UFJ 先進国高金利債券ファンド(年1回)
『愛称:グローバル・トップ年1』
国際債券・グローバル・
除く日本
2.00 7.76% 1.21%
三菱UFJ グローバル・ボンド(毎月決算型)
『愛称:花こよみ』
国際債券・グローバル・
除く日本
2.00 7.77% 1.21%
三菱UFJ グローバル・ボンド(年1回決算型)
『愛称:花こよみ年1』
国際債券・グローバル・
除く日本
2.00 7.75% 1.21%
三菱UFJ 先進国高金利債券ファンド(毎月)
『愛称:グローバル・トップ』
国際債券・グローバル・
除く日本
2.00 7.76% 1.21%
USストラテジック・
インカム・アルファ毎月
国際債券・北米 1.71 7.20% 1.48%
※投信格付け会社モーニングスター社のファンド検索機能より筆者試算、 2021年3月31日時点

期間を3年にした場合、シャープレシオの高いファンドは国際債券を投資対象とするものが上位を占めた。少ないリスクで着実に収益をあげたことから投資効率が高いとの評価だ。高リスク高リターンだった過去1年間のランキング結果とは対照的だ。

投資信託のトータルリターンだけで運用成績をはかろうとするとまず出てこない5本がラインアップした。安定性重視でも収益はきちんと確保したい場合、シャープレシオの高い債券銘柄を選ぶのも一手だろう。

4,NISAで運用実績の良いファンド(過去5年間)

一般NISAの投資期間である5年間を基準に運用実績の良い投資信託を選ぶとどうなるか。

商品名 カテゴリー シャープレシオ
(5年)
リターン
(5年)
信託報酬
(税込)
東京海上・ジャパン・
オーナーズ株式オープン
国内小型グロース 1.51 26.71% 1.58%
米国NASDAQ
オープンAコース
国際株式・北米 1.41 20.14% 1.69%
netWIN GSテクノロジー
株式ファンド B(H無)
国際株式・北米 1.40 23.83% 2.09%
netWIN GSテクノロジー
株式ファンド A(H有)
国際株式・北米 1.39 22.10% 2.09%
米国NASDAQ
オープンBコース
国際債券・北米 1.36 21.79% 1.69%
※投信格付け会社モーニングスター社のファンド検索機能より筆者試算、 2021年3月31日時点

5年間を基準にシャープレシオの高いファンドを調べると、今度は株式を投資対象とするファンドが上位を占めた。1位以外はすべてNASDAQの登録銘柄に投資するものだ。GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)をはじめとする巨大IT企業の好調もあり、NASDAQはコロナショック後も力強い伸びを見せている。

海外資産に投資する銘柄には「為替ヘッジあり(H有/Aコース)」と「為替ヘッジあり(H有/Aコース)」の2種類があり、為替変動リスクが軽減できるヘッジありのほうはコストがかかる分、リターンがやや少なめだ。

5,NISAで運用実績の良いファンド(過去10年間)

10年間という長期では、運用実績が良い投資信託とはどのようなタイプだろうか。

商品名 カテゴリー シャープレシオ
(10年)
リターン
(10年)
信託報酬
(税込)
SBI 中小型割安成長株F
ジェイリバイブ 『愛称:jrevive』
国内小型グロース 1.25 22.53% 1.87%
スーパー小型株
ポートフォリオ
国内小型グロース 1.25 19.99% 1.32%
SBI 中小型成長株F
ジェイネクスト 『愛称:jnext』
国内小型グロース 1.22 22.62% 1.65%
(NEXT FUNDS)NASDAQ-100(R)連動型上場投信
『愛称:NASDAQ-100ETF』
国際株式・北米 1.21 22.73% 0.50%
DIAM 新興市場日本株ファンド 国内小型グロース 1.21 31.72% 1.67%
※投信格付け会社モーニングスター社のファンド検索機能より筆者試算、 2021年3月31日時点

意外なことに、過去10年でシャープレシオに優れた銘柄は国内小型成長株を対象とするファンドである。長期投資では話題の低コストインデックスファンドの好成績を予想したが、実際には個別株を調査分析して投資するアクティブファンドが名を連ねる。それも大型優良株ではなく小型成長株だ。

ただ、トータルリターンが20%前後とあるが、毎年安定的に20%の収益があるわけではない。1年で47%、3年で1.9%など、成績の変動が激しい。あくまでも10年間の実績を1年に平準化したリターンである点に注意したい。

6,NISAが不安な場合はつみたてNISA(積立NISA)という選択肢も

今回の調査では、シャープレシオを運用実績の基準とした場合、過去1年では「自動運転」関連ファンド、過去3年では国際債券に投資するファンド、過去5年ではNASDAQ銘柄に投資するファンド、過去10年では国内中小株のアクティブファンドの成績が良かったようだ。基準をトータルリターンにするか期間を変更した場合はまた違った結果になるはずだ。

このように、本数の多いNISA対象銘柄から運用実績の良い投資信託を選ぶ方法のひとつを紹介した。なお、初心者がシャープレシオやトータルリターンを参考に運用実績の良いファンドを選ぶ場合、短期では相場の影響を受けやすいため、期間は5年や10年など長めに設定することをおすすめする。

NISAは対象商品が多くハイリスク商品が含まれるため、長期安定投資を目指したい場合はつみたてNISAにするという選択肢もある。つみたてNISAではコストやリスクが低めの商品に限られ、少額ずつ積み立てることでさらにリスクを分散できる。

執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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