株式や投資信託に投資する際、譲渡益や分配益、配当金が非課税となる制度がある。それが少額投資非課税制度「NISA」だ。そしてNISAには、ジュニア版もあることをご存じだろうか。

この記事では、NISAのジュニア版「ジュニアNISA」について詳しく紹介する。特徴やメリット・デメリット、NISAとの違いについても確認しておこう。

ジュニアNISAを始めるための基礎知識

ジュニアNISA,おすすめ
(画像=PIXTA)

まず、ジュニアNISAについて押さえておきたい以下の知識について解説していく。

ジュニアNISAとは

ジュニアNISAとは、2016年1月から始まった「未成年者少額投資非課税制度」のことである。主な特徴は以下の通りだ。


利用できる人 日本に住む0~19歳の人
※口座を開設する年の1月1日時点の年齢
口座開設可能数 一人1口座
非課税対象 株式や投資信託の譲渡益や分配益、配当金
非課税投資枠 新規投資枠で年間80万円まで
非課税期間 最長5年間
運用管理者 口座開設者(未成年者)の2親等内の親族(両親、祖父母など)

ジュニアNISAの口座は、未成年者の名前で開設し、運用するお金は口座開設者(未成年者)に帰属するものに限られる。そのため両親のお金を子供のジュニアNISA口座で運用し利益を親が受け取る行為は禁じられている。ただし運用の管理を行うのは両親などの2親等内の親族となる。またジュニアNISA口座は、一人1口座しか開設できない。

利用したい場合は、専用口座を開く必要があり、複数の金融機関で口座を保有することはできないため、注意が必要だ。

NISAとの違い

非課税で投資できる制度といえば「NISA」もある。NISAとジュニアNISAの違いについても見ておこう。以下の表は、2つの制度の相違点について挙げたものである。


ジュニアNISA NISA
利用できる人 日本に住む0~19歳の人 日本に住む20歳以上の人
非課税対象 新規投資枠で年間80万円まで 新規投資枠で年間120万円まで
運用管理者 口座開設者(未成年者)の二親等内の親族 口座開設者

上に挙げた相違点以外、ジュニアNISAとNISAにはほとんど違いがない。非課税期間が最長5年であること、運用できる金融商品も同じである。

ジュニアNISAのメリット

ジュニアNISAのメリットは主に以下の4つ。一つずつ詳しく確認しておこう。

  1. 年間80万円の非課税枠は相続税対策になる
  2. 5年間で400万円まで非課税で運用できる
  3. 非課税でロールオーバー可能
  4. 子供名義の投資口座を持てる

メリット1 年間80万円の非課税枠は相続税対策になる

「子供(孫)に少しずつでもお金を渡していきたい」と考えている親世代、祖父母世代も多いのではないだろうか。よく知られているように1年間の贈与額が110万円以内であれば贈与税の課税対象外となる。ただこのお金を子供や孫の銀行預金などに入れても2021年5月時点でメガバンクの預金金利は、普通預金で0.001%、定期預金(1年)0.002%と超低金利のため、資産を増やすことは期待できない。

また預金利息には20.315%(復興特別所得税を含む)の税金が課税され受取金額はさらに減ってしまう。そこでおすすめしたいのがジュニアNISAの利用である。年間80万円までだが贈与するお金をジュニアNISA口座で運用するのだ。ジュニアNISAでは、運用益にかかる税金は非課税となり預金金利よりも高い利回りで運用できる可能性が高い。

そのため、相続税対策としてもジュニアNISAは利用できるのだ。

メリット2 5年間で400万円まで非課税で運用できる

ジュニアNISAでは、年間80万円までは非課税で運用できる。一般NISAは120万円までのため、この金額を「意外と少ない」と感じる人もいるかもしれない。しかし80万円ずつ5年間投資していけば合計400万円までの非課税投資が可能となる。預金で資産を増やすことが期待できない時代でも、まとまった金額を運用することで、ある程度大きな金額の利益を狙うことも不可能ではないだろう。

メリット3 非課税でロールオーバー可能

ジュニアNISAの口座開設期間は、2023年で終了する。そのため2023年以降は、新たな口座を作ることができない。しかし2024~2028年の間に非課税期間が終了する金融商品については「継続管理勘定」に移管することが可能となった。つまり「ロールオーバー」ができるというわけだ。継続管理勘定に移管した金融商品は口座を保有する未成年が20歳になるまで非課税で運用を継続することができる。

ただし継続管理勘定にある金融商品は売却可能だが、新たな買付ができなくなる点については留意しておきたい。

メリット4 子供名義の投資口座を持てる

2022年度から高校の社会科および家庭科で「資産形成」の重要性について学ぶことが決定している。このような機会を持つことで若い世代にも投資が身近になることが予想されるだろう。学校と同様に家庭でも投資教育を行う必要があるかもしれない。子供が自分名義のジュニアNISA口座を保有していることは、資産形成や投資について親しむきっかけとなるだろう。

ジュニアNISAのデメリット

ジュニアNISAは、メリットばかりではなく当然デメリットもある。この章では、3つのデメリットを紹介していく。ジュニアNISA口座を開設する前には、必ずチェックしておこう。

  1. 2023年で制度が廃止される
  2. 途中で引き出すと課税される
  3. 投資商品を売るとその枠は再利用できない

デメリット1 2023年で制度が廃止される

前章で解説した通り2023年でジュニアNISA制度は終了となる。以降は、新規でジュニアNISA口座を作ることができないのだ。この点を知ったうえで口座開設手続きを行おう。

・ジュニアNISA廃止後の流れ

ジュニアNISAは、2023年の制度終了が決定している。制度終了後は、ジュニアNISA口座にある資産をどうすればいいのか、その手続きについて確認しておこう。2024~2028年にジュニアNISA非課税期間終了を迎える口座の金融商品は、期間満了時に「継続管理勘定」へ移すことができる。継続管理勘定に移す場合、今まで通り非課税で運用の継続が可能だ。

ただし継続期間は、口座名義人が20歳を迎えるまでとなる。その間金融商品の売却はできるが新規の金融商品の買付はできない。継続管理勘定の口座名義人が20歳を迎えると預かり資産は課税口座に払い出しされる。払出時の時価が新たな取得価格とみなされるため「売却代金-払い出し時の時価」で算出された金額が売却益となりその利益に税金がかかることになる。

デメリット2 途中で引き出すと課税される

ジュニアNISA口座で運用している資産は、18歳になるまで原則払い出しが禁止となっている。特に、0歳や1歳など小さいころからジュニアNISAで投資を始めると払い出し不可の時期が長期間となるため、注意が必要だ。もし途中で払いだしてしまった場合だが、譲渡益や分配金に課税されることとなる。

ただし、2024年からはジュニアNISAの払い出し制限がなくなることも覚えておこう。

デメリット3 投資商品を売るとその枠は再利用できない

ジュニアNISA口座で運用している金融商品を売却した場合、その枠の再利用はできない。例えば運用中の80万円のうち40万円分を売却したからといっても新たに40万円分の金融商品の買付はできないのだ。これは、他のNISA口座も同様。頻繁に売買する目的でジュニアNISAを利用するのは避けたほうがよいだろう。

ジュニアNISAでおすすめの投資商品は?

おすすめの商品を確認する前にジュニアNISAの注意点について再度確認しておこう。

・原則18歳になるまで、資産の引き出しができない
・投資商品を売ると、その枠の再利用は不可

これらの注意点から考えるとジュニアNISAには「売却益を狙わない」「長期間保有」が向いているといえる。具体的には「投資信託の積み立て」になるだろう。積み立てで毎月同じ金額ずつ投資することで買付価格を平均化する「ドルコスト平均法」も実現することができる。長期間かけて利益を積み重ねることを目指すことを狙うべきだと考えられる。

なお、上述したようにつみたてNISAで運用する商品を売却してしまうと投資枠の再利用ができないため、タイミングを見て売買し売却益を狙う「株式投資」「売却益を狙うタイプの投資信託」は不向きといえる。

ジュニアNISAを始める方法

ジュニアNISAを始める方法は、以下の通りである。

  1. 親権者が証券総合口座を開設
  2. (ネット証券の場合)親権者が自身の口座にログインし子供の証券総合口座(未成年口座)の開設手続きおよびジュニアNISA口座申込を行う。
  3. 以下の書類を提出
    ✓ マイナンバーカードのコピーなど子供の個人番号が分かるもの
    ✓ 親権者と子供の本人確認書類
    ✓ 親権者と子供の続柄が確認できる書類
  4. 税務署の審査後、ジュニアNISA口座開設。

金融機関によって若干の違いはあるが、おおよそこの流れで口座開設手続きを行う。ジュニアNISA口座は、親権者が申し込む必要があるため、親権者の証券口座と子供のジュニアNISA口座がある金融機関は必ず同じになる。またマイナンバーが分かる書類や本人確認書類だけでなく親権者と子供の続柄を証明するものの準備も必要だ。

ジュニアNISA口座開設は、一般的な証券口座開設に比べ多少手間がかかることは覚えておこう。税務署の審査も入るため、口座開設までに時間がかかる点にも注意しておきたい。

ジュニアNISAの注意点を知って上手に利用しよう!

ジュニアNISAは、NISA同様に5年間、譲渡益、分配益、配当金が非課税となるお得な制度である。年間80万円まで投資できるため、祖父母や親世代からの生前贈与に利用するのもいいだろう。メリットとデメリットをよく見比べてから利用するかどうか決めることをおすすめしたい。

なおジュニアNISA制度は2023年の廃止が決定している。2024年以降に5年目を迎えるジュニアNISAについては「継続管理勘定」に移され非課税での運用は継続可能だが新規での買付はできなくなってしまう。この点にも留意しておく必要があるだろう。