商品やサービスを提供する過程でCO₂が発生する際、排出量を公表する企業がある。カーボンフットプリントの制度を知ると理由がわかる。今回は、環境問題と密接に関係するカーボンフットプリントの意味やメリット、認証の流れなどについて解説していく。

カーボンフットプリントとは?

購入した商品のCO2排出量がわかる、カーボンフットプリントとは?
(画像=malp/stock.adobe.com)

カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products)とは、商品の製造から廃棄・リサイクルまでに発生する温室効果ガスの合計量をCO₂に換算し、その数値を商品やサービスなどのパッケージに記載する仕組みだ。各商品のCO₂排出量を意識するために設けられた。

カーボンフットプリントの例

たとえば缶ジュースの場合、アルミ缶・ジュースの製造中に発生する温室効果ガス、配送中にトラックから排出される温室効果ガス、冷蔵庫から排出される温室効果ガス、空き缶の処分・リサイクルで発生する温室効果ガスなどの合計数値を記載する。

カーボンフットプリントの目的

前述のとおり、CO₂排出量を意識するために設けられた。

CO₂の排出量について、関連する用語としてカーボンニュートラルがある。

カーボンニュートラルは、CO₂の排出量をトータルでゼロにする考えだ。排出を完全に減らすことは難しいため、吸収や除去によって差引ゼロを目指す。

電気やガスを使用するときなど、生活でCO₂が排出される場面は多い。しかし、CO₂は削減できる。たとえば、太陽光発電や省エネ製品を活用する方法がある。

カーボンフットプリントも、カーボンニュートラルの実現に役立つ考え方だといえよう。

カーボン・オフセットの例

日本では、2008年にカーボンフットプリント制度が閣議決定された。カーボンフットプリントの広報活動や自主的な取り組みも始まった。

関連する取り組みとしてカーボン・オフセットがある。カーボン・オフセットとは、どうしても削れないCO₂を埋め合わせる取り組みだ。CO₂の削減を行っている企業や団体などに投資する。

【CO₂の削減活動を行う企業に出資】

➀AがB社に出資する
➁B社はAが出資した金額分をCO₂削減量としてカウント
➂B社からAに対して出資したお礼が送られる(送られない場合もある)
④出資金は排出権として国に納めたり環境問題の解決プロジェクトに使われたりする

【カーボン・オフセット対象商品の購入】

➀AがB社のカーボン・オフセット対象商品を購入する
➁B社の基準に則ってCO₂の削減がカウントされる
➂商品の売上は排出権として国に納めたり環境問題の解決プロジェクトに使われたりする

カーボンフットプリントのメリット

商品のCO₂排出量がわかると、CO₂が少ないという理由で商品を購入してもらえるかもしれない。商品の売上と業績の向上が期待できる。

消費者の中には、環境問題と向き合う企業を支持する人もいるだろう。カーボンフットプリントのマークが商品に記載されるため、環境問題に取り組む企業であることをアピールできる。

環境問題に向き合っていることを伝えたい企業は、カーボンフットプリントを商品のパッケージに記載しておくとよいだろう。

カーボンフットプリントのマークを取得する流れ

カーボンフットプリントのマークを取得する手順を確認してみよう。

ステップ1.商品の選定・認定

カーボンフットプリントの対象としたい商品やサービスを選び、PCR(商品種別算定基準)として認定してもらう。認定にあたってPCRの原案を作成し、申請する必要がある。

ステップ2.認定後にCFPの測定

PCRの認定を得た後は、ルールに沿ってCFPの測定を行う。検証申請書を作成し、事務局に提出する。

ステップ3.CFPマークの取得

測定値が認可されたらCFPマークの取得を行う。これで製造から廃棄までに発生するCO₂を載せられるようになる。

カーボンフットプリントに関連する取り組みを行う企業

カーボンフットプリントに関連する取り組みは国内の企業でも行われている。ここでは5社を紹介しよう。

企業1.ミドリ安全株式会社

ミドリ安全では、カーボン・オフセットに貢献できるユニフォームを販売している。1着購入するとCO₂3kg分の排出量に充てられる。3kg分とは、自家用車が12km走行したときのCO₂排出量に相当する。

ユニフォームにはカーボン・オフセットのマークが縫われている。ユニフォームはオリジナルのデザインがある。

企業のユニフォームを制作したいとき、カーボン・オフセットの対象商品も検討するとよいだろう。購入すると証明書をもらえる。

企業2.ハート株式会社

ハート株式会社では、封筒や名刺の一部売上額をCO₂の排出権に充てる取り組みを行っている。対象の封筒や名刺には、CO₂削減のための製品であることを示すマークが印字してある。

取り組みの流れは下記の通りだ。

➀消費者がカーボン・オフセット対象製品(封筒・名刺)を購入する
➁ハート株式会社が三菱UFJ信託銀行から排出権を購入(封筒・名刺100枚に付き10円)
➂三菱UFJ信託銀行を通じてCO₂削減をするために出資したり政府への無償提供に充てたりする

ちなみに2021年3月20日現在、967,790kg分のCO₂がカーボン・オフセットの対象として処理されており、その一部は国に寄付されている。

企業3.HIS株式会社

旅行会社のHIS株式会社では、カーボン・オフセットの寄付を募っている。1口550円(税込)、2口1,100円(税込)で販売されており、資金はブラジルにおける森林保全や農業訓練に充てられる。

ちなみに、1口につき400kg前後のCO₂と相殺される扱いになっており、申込者には証明書とタグが送られる。

企業4.株式会社ウェイストボックス

株式会社ウェイストボックスでは、カーボン・オフセットに関心を寄せる企業にコンサルティングやサポートなどを行っている。

まず、顧客から課題をヒアリングし、カーボン・オフセットについてわかりやすく説明する。

聞き取った内容から企画を組み立てたり、提案をしたりする。そして、企画や提案の内容をもとに排出量の適切な測定方法を提案していく。

その後には、広報活動まで支援してくれる。カーボン・オフセット対象製品の販売経路を紹介してもらうことも可能だ。

企業5.環境経済株式会社

環境経済株式会社も、カーボン・オフセットを考えている企業にコンサルティングや支援などを行っている。

過去には、関東経済産業局の委託事業や、東邦大学の文化祭、東京都北区のイベントなどに携わり、カーボン・オフセット対象の商品についてPRした実績を持つ。

そのほか、長野県のふるさと納税返礼品としてカーボン・オフセット対象製品を用意するなど、自治体の取り組みにも携わった。

カーボンフットプリントで企業のブランドを向上

企業側から見るとカーボンフットプリントは、環境問題に取り組んでいることをアピールできる絶好のツールだ。活用すれば企業のブランド向上につながり、経営成績や財政状態の改善が期待できる。カーボンフットプリントの制度をビジネスに活かしてみてはどうだろうか。

文・津田剣吾(フリーライター)

(提供:THE OWNER