ネット証券は、PCやスマートフォンを使って時間や場所を選ばずに取引ができることが魅力だ。しかし、どこの証券会社で口座を開けばいいか迷う人も多いのではないだろうか。ネット証券は、それぞれに手数料や取扱商品、ポイント付与などで独自性を打ち出している。各証券会社の特徴を知り自分の投資スタイルに合った会社を選べば、おトクになるだろう。

この記事では、証券会社選びのポイントや大手ネット証券の特徴を解説していく。

ネット証券での口座開設のメリット

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(画像=PIXTA)

国内外株式や投資信託などの金融商品を買う際、証券会社に口座を開設する必要がある。ここでは、実店舗を構える証券会社ではなくネット証券で口座を開設するメリットについて見ていこう。

取引手数料が安い

ネット証券の取引手数料は、店舗を構える証券会社に比べて安い。店舗を構えている証券会社の場合、店舗を運営するうえで人件費がかかっている。しかしネット証券を利用するユーザーはインターネットで取引を行うため、ネット証券は人件費を削減できるのだ。多くのネット証券では、金融商品や取引コースで取引手数料を無料にしている場合がある。

例えば投資信託は買付手数料無料、国内株式は1日定額コースの場合、約定合計額が一定の金額以下であれば手数料無料といった証券会社もある。

オンラインで取引できる

当然ネット証券は、オンラインで取引を行うため、口座開設から各種商品の買付や売却などもオンラインで完結できる。スマートフォンが普及した現代では、インターネットを通じてまさに「いつでもどこでも」取引が行えるのだ。

便利な取引ツールがついている

ネット証券は、各社ともに投資家向けに取引ツールを提供している。取引ツールを使えば企業やマーケット情報の収集や注文が可能だ。ネット証券を利用する場合、店舗を構える証券会社のようにどの銘柄を買えばよいか営業マンなどからアドバイスを受けることはできない。そのかわり各ネット証券は、取引ツールにさまざまな機能を搭載し、投資家が自分で情報分析をして銘柄を選び取引できるようにしている。

自分のペースで取引できる

オンライン取引は、メンテナンス時間を除けばいつでも売り買いの注文を出すことができる。日中、仕事をしている人でもスキマ時間や外出先で取引ができる。また、PTS取引(東京証券取引所の営業時間外に、取引所を介せずに行う取引)に対応しているネット証券を選べば、夜間のリアルタイム取引も可能になる。

ネット証券を選ぶポイントは?

ネット証券は、投資家個人が情報収集し銘柄を選ばなくてはならないが自分のペースに合わせて取引ができる点はメリットだ。では、何をポイントに選べばよいだろうか。

手数料の安さ

ネット証券は、店舗を構える証券会社に比べて手数料が安く商品や取引コースによっては無料にしているところもある。「手数料が安い・無料」と一口にいっても以下のような条件が設定されていることが多い。

・国内株式の現物取引について1回の取引が一定の取引金額までなら〇〇円
・国内株式の信用取引の手数料無料
・投資信託の買付手数料が無料など

そのため、自分の取り引きする商品や頻度などを考慮したうえで、「どのネット証券を選ぶと手数料が有利か」比較検討する必要がある。

取扱商品

金融商品には、国内株式をはじめ先物や投資信託、FXなどさまざまなものがある。証券会社によって取扱商品には違いがあるため、確認したうえで証券会社を選ぶようにしたい。例えば、国内株式に限っても貸株に対応しているところと対応していないところがある。また投資信託を取り扱っている場合でも扱っている商品数は金融機関によって大きく異なる。

数百銘柄程度のところもあれば2,000以上の銘柄を扱っているところもある。目当ての金融商品があるなら各ネット証券の取扱商品とその詳細をチェックしよう。

取引ツールの充実度

ネット証券で口座を開くとその証券会社が用意している取引ツールを使って取引を行うことになる。各ネット証券会社の取引ツールでは、売り買いそれぞれの希望額を表示した「板」や銘柄の値動きを表す「チャート」、銘柄の条件検索機能、注文機能がある点は共通となっている。しかし、注文にかかわる細かな機能については会社によって異なるため、確認する必要があるだろう。

キャンペーン

各ネット証券では、口座開設や特定の金融商品購入など条件に応じて現金やポイントをプレゼントするキャンペーンが期間限定で行われていることが多い。特に多くのネット証券会社で口座の新規開設に伴うキャンペーンを行っているため、どの証券会社で口座を開こうか迷っている人はキャンペーン内容を見ながら選ぶのも一つの方法だ。

新規口座開設以外にも「期間中に投資信託積立を初めて行えば、現金プレゼント」「期間中に国内株式の信用取引を初めて行えば、ポイントプレゼント」など、投資家に新たな金融商品を勧めることを目的としたキャンペーンが積極的に行われている。金融商品の勉強のためにもキャンペーン企画は積極的に活用しよう。

ネット証券の口座開設の方法

ネット証券で口座を開設する流れは、どの証券会社もおおむね共通している。ここでは、口座開設の方法を見てみよう。

ネット証券の口座開設手順

・1.ネット証券のウェブサイトのトップページにある「口座開設」ボタンを押す

・2.メールアドレス登録画面にメールアドレスを入力するとメールに申込用URLや認証コードが送られてくるのでそれらを使って個人情報入力画面に進む

・3.個人情報(氏名・生年月日・住所など)を入力し口座の種類を選択。口座は「特定口座」「一般口座」のいずれかから選び「特定口座」を選んだ場合は、さらに「源泉あり」「源泉なし」のいずれかを選ぶ(※)

・4.本人確認書類と顔写真を撮影しアップロードを行う。本人確認書類は「個人番号カード(マイナンバーカード)」、または「運転免許証+マイナンバー通知カード」などが該当

・5.審査ののち開設通知をメールか郵送で受け取る。解説通知にはログインIDやパスワードなどが記載されていることが多い

・6.ログインし初期設定を行って投資資金を入金すれば取引が開始できる

※取引で利益が出た場合、税金が課されるが「特定口座」を選ぶと証券会社が税額を計算してくれる。しかし「一般口座」を選ぶと自分で計算し確定申告をすることが必要だ。また「特定口座」で「源泉徴収あり」を選ぶと証券会社から自動で税金が源泉徴収され「源泉徴収なし」を選ぶと源泉徴収されないため、自分で確定申告をすることになる。

ネット証券の口座開設にかかる日数は?

本人確認書類として「個人番号カード」または「運転免許証+マイナンバー通知カード」を用意できる場合、オンラインで開設申込後すぐに口座が開設される。その後、翌日にはログインに必要な情報がメールで送付されるため、記載された内容でログインし初期設定を行う。早ければその日のうちに取引が開始できる。

上記以外の書類を本人確認書類とする場合、審査後ログインに必要な情報は郵送されてくることが多い。審査からログインに必要な情報が到着するまでに約1週間かかることがある。

主要ネット証券5社

先述したネット証券を選ぶ4つのポイント「手数料」「取扱商品」「取引ツール」「キャンペーン」に着目し大手ネット証券5社(SBI証券・楽天証券・マネックス証券・松井証券・auカブコム証券)についてそれぞれの特徴を見てみよう。

SBI証券

SBI証券は、大手5社の中で口座開設数第1位を誇る(2021年3月22日時点)。ネット取引で国内株式を売買する場合、1回の取引代金に対して手数料がかかるスタンダードプランと1日の取引合計金額(現物取引・信用取引の合計)に対して手数料がかかるアクティブプランがある。スタンダードプランを選ぶと現物取引で1回の取引金額が5万円までなら手数料55円(税込み)。

アクティブプランを選ぶと1日の取引合計金額が100万円までなら手数料は0円となる。SBI証券の取扱商品の特徴は、社の中でIPO(新規上場株)と外国株の取扱銘柄数の多いこと。2021年3月期のIPO取扱銘柄は86社、2020年5月18日時点の外国株は約5,920銘柄だ。取引ツールはPC用として「HYPER SBI」、スマートフォン用として「SBI証券 株」「かんたん積立」など6種類のアプリを用意。

国内株と先物・オプション取引ができる「HYPER SBI」は、板情報画面でマウスを操作するだけで注文が出せる。SBI証券はTポイントと連携していることもあり、キャンペーンでもTポイントがもらえるものがある。Tポイントをよく使う人は、SBI証券で口座開設するとポイントが貯まる機会が増えるだろう。

楽天証券

「楽天市場」や「楽天カード」などを展開する楽天グループの証券会社。ネットで国内株式を取引する際の手数料は、SBI証券とほぼ同じだが楽天証券の取扱商品で特筆すべきは、投資信託の取扱銘柄数だ。2,698本(外貨建てMMF含む。2021年5月24日現在)は、ネット証券屈指の多さである。取引ツールは、PC用の「マーケットスピード」「マーケットスピードⅡ」「マーケットスピードFX」。

またスマートフォン用アプリ「iSPEED」「iSPEED FX」も用意されている。株用アプリの「iSPEED」は、シンプル注文とプロ注文の2つのモードから注文方法を選ぶことができ、初心者から上級者までレベルに合わせた操作が可能だ。キャンペーンについては、楽天ポイントが付与されるものが多い。楽天市場のユーザーにとっては、うれしいキャンペーンだろう。

また楽天カード決済で投資信託積立が行えることを周知するためのキャンペーンや楽天銀行と関連付けたキャンペーンなども行われ楽天グループのサービスをよく使う人にはおトク度が高い。

マネックス証券

複数の証券会社が合併しながら成長してきた証券会社だ。ネットで国内株式を取引する際の手数料は、他の大手ネット証券に比べると高めの設定である。国内株式の現物取引で1回の取引あたりに手数料がかかるプランの場合、1回の取引額が5万円までなら手数料は110円(税込み)とSBI証券や楽天証券の2倍だ。

ただ国内株式の信用取引にかかる手数料を見ると1回の取引あたりに手数料がかかるプランにおいては、取引額が100万円までならSBI証券や楽天証券と同水準。マネックス証券の取扱商品の特徴は、海外株式の多さだ。SBI証券が米国・中国・韓国・ロシアなど広範囲の海外株式を扱っているのに対してマネックス証券は米国株と中国株に集中。

2020年12月時点で米国株の銘柄数は4,000を突破、中国株は2,000以上を数えネット証券随一の規模である。取引ツールは、PCやスマホ、タブレット合わせて19種類と豊富。株式・先物・オプション向けのPCアプリ「マネックストレーダー」は、トレーディング画面が見やすいと評判だ。また株価急騰落分析をはじめとするさまざまな分析機能が搭載されている。

キャンペーンやプログラムは、米国株に力を入れるマネックス証券らしく米国株取引や米国ETF買付にかかる手数料のキャッシュバックを実施。米国投信の積立に対し抽選でマネックスポイントの付与も行っている。

松井証券

創業1918年で100年を超える老舗証券会社でありながら1998年に日本で初めて本格的なインターネット取引を導入。他のネット証券とは異なり1回の取引あたりに手数料がかかるプランがなく1日の取引合計金額によって手数料が決まるプランのみとなっている。国内株式の現物取引・信用取引ともに1日の取引合計金額が50万円までなら手数料は無料だ。

また25歳以下の投資家なら取引金額にかかわらず手数料は無料。取扱商品は、国内株式や投資信託、日経225先物・オプション、FXとなっている。国内株式の銘柄は約980、投資信託の取扱銘柄数は1,453本(2021年5月27日時点)と他の大手ネット証券に比べると少ない。注文取引ツールは、PC用トレーディングツール「ネットストック・ハイスピード」や、株式取引に対応したスマートフォン向けトレーディングツール「株アプリ」など12種類。

「ネットストック・ハイスピード」は、画面表示や注文方法などを自分好みにカスタマイズできることから多くの投資家から支持されている。キャンペーンは、他のネット証券に比べると控えめだ。現金のキャッシュバックや松井証券ポイントがもらえるキャンペーンを実施している。

auカブコム証券

auカブコム証券の大株主は、三菱UFJフィナンシャルグループとauフィナンシャルホールディングス。auカブコム証券の手数料体系は、1回の取引額ごとに手数料が発生するタイプのみ。国内株式の現物取引について、1回の取引額が10万円以下なら手数料は99円(税込み)。1日の取引合計金額に対して手数料が発生する取引コースはない。

同じ内容の取引でSBI証券や楽天証券はともに取引額5万円までなら手数料は55円だが、どちらも10万円までなら99円となりauカブコム証券と同じ水準である。auカブコム証券の取扱商品で特徴的なのが「プチ株」。上場株式の単元未満株を売買できるものだ。通常株式は100株単位で売買するがプチ株なら1株から売買が可能。分散投資をしたい人や少額でお試し投資をしたい人に向いている。

豊富な取引ツールもauカブコム証券の特徴だ。株価やチャート、ニュースの確認から売買注文までができる「kabuステーション」をはじめ、66種類のテクニカル指標を使ってチャート分析ができる「EVERチャート」、銘柄探しが楽になる「カブナビ」などシーンに合わせて使えるさまざまなツールが用意されている。

Pontaポイントと提携しているため、条件を満たすとPontaポイントをプレゼントするキャンペーンを実施することが多い。

手数料や取扱商品などを比較検討して自身の投資スタイルに合う証券会社を選ぼう

今回は、4つのポイントを軸に大手ネット証券の特徴を紹介した。手数料の安さは、証券会社選びの大きな要素ではあるが近年はどの会社も手数料を下げる傾向にあり差があまり出ない。また手数料が他社より少し高めであっても顧客フォローなどに力を入れているところもある。さらに手数料の安さよりも「取扱商品の豊富さ」「普段よく使っているポイントで投資できる」なども選び方の一つだ。

自分の投資スタイルを考えながら口座を開設する投資会社を選ぶとよいだろう。