銀行業界でいま、さまざまな動きが起きているが、包括的にその内容を把握できている人は決して多くはない。大手メガバンクを含む横の連携、みずほ銀行のメガバンク転落の危機など、銀行業界の最新動向を紹介していこう。

銀行業界がいま苦しい状況にある2つの理由

3大メガバンクからみずほ銀行が陥落? 地獄の銀行業界、変化する業界地図
(画像=picturecells/stock.adobe.com)

まず大前提として、銀行業界がいま苦しい状況にあることを理解しておきたい。理由は主に2つある。1つ目は「日本がいま超低金利時代であること」、2つ目は「貸し倒れに備えた費用が膨らんでいること」だ。

まず1つ目の「日本がいま超低金利時代であること」だが、銀行はお金を預かった人には少なめの利子を支払い、お金を貸し出した相手から多めの利子をとることで、収益を得ている。しかし、低金利時代になると貸し出し金利を下げざるを得ず、結果的に収益が削られる。

2つ目は「貸し倒れに備えた費用が膨らんでいること」だ。新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか収束しない中、銀行では融資先の経営悪化により起こる貸し倒れに備え、与信関係費用を増やしている。この点も銀行の収益を悪化させている。

また銀行業界は、IT企業などが展開するフィンテックサービスによって収益を圧迫されつつあることも知っておきたい。銀行にはITに詳しいエンジニアが決して多いわけではなく、この分野ではIT企業やベンチャー企業にも遅れをとってきた。

このような中で銀行が恐れているのが「顧客離れ」で、低金利時代でありかつコロナ禍の中でも、何とか利用者の利便性を高めようと努めている。その動きの1つとして認識されているのが、メガバンクなど5つの銀行による新会社の設立だ。

メガバンクなどがタッグを組んで新サービスを開発

NHKが報じたところによると、メガバンクである三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行が新会社を2021年7月に設立するという。この新会社で展開するサービスは、送金手数料を安くするという趣旨のものだ。

ATM(現金自動預け払い機)で送金すると、数百円程度の手数料が掛かる。この手数料は一度きりの振込では決して高くは感じないかもしれないが、「塵も積もれば」で10回振り込めば数千円、それを毎月繰り返せば数万円以上の負担となる。

新会社では、スマートフォンを活用した仕組みでこの送金手数料を安く抑えるようだ。具体的には、新会社が開発・提供する専用アプリをインストールすると、ATMより安い手数料で送金ができるようになるという。サービスの開始時期は、2022年度の早い時期としている。

ちなみに、送金額は「1回上限10万円」などと制限がかかるらしいが、少額の振込が多い人にとってはこの送金額の上限はさほど影響はない。銀行利用者の振込コストが軽減されるようになれば、顧客離れにも歯止めがかかりやすいだろう。

3大メガバンクからみずほ銀行が陥落?りそな銀行が浮上?

いま、銀行業界でもう1つ重要なトピックスがある。それが、みずほ銀行がいずれメガバンクから陥落するのではないか、とまことしやかに噂され始めていることだ。一方、陥落するみずほ銀行の代わりに浮上する有力候補としては、りそな銀行の名前をよく聞く。

そもそも、日本のメガバンクは「3大メガバンク」とくくられ、「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」とされる。各銀行の金融持株会社の時価総額は以下の通りで、三井住友信託銀行やりそな銀行の持株会社に明確な差をつけている。

<メガバンクを含む大手銀行の時価総額ランキング>

3大メガバンクからみずほ銀行が陥落? 地獄の銀行業界、変化する業界地図
※時価総額は2021年5月1日時点

みずほ銀行がメガバンクから陥落すると噂されているのは、度重なるシステム障害が主な原因だ。今年2~3月にかけて障害が相次ぎ、特に2月28日に全国のATMの70%強が一時動かなくなったことは、世間に大きな波紋を広げた。

このようなシステム障害の再発防止に向けて、今後かなりの投資が必要になるとみられ、みずほ銀行の収益の圧迫は避けられないものと考えられる。また、システム障害は顧客離れにもつながる。

一方、時価総額で5番手のりそな銀行は、地域金融の集合体を目指す「スーパーリージョナルバンク」として注目度を高めており、デジタル化もいち早く進めている。女性管理職比率もすでに政府目標である30%を超えており、銀行業界の優等生だ。

現時点ではみずほ銀行とりそな銀行では時価総額で3倍以上の差があるが、この差が詰まり逆転することがあれば、みずほ銀行のメガバンク陥落、そしてりそな銀行の浮上は現実的な話となるだろう。

銀行の業界地図そして力関係は大きく変わる?

このように、銀行業界ではいまさまざまな重要トピックスがある。低金利時代が今後どれだけ続くかということや、みずほ銀行の再発防止策の行方によっては、数年から十数年で銀行の業界地図そして力関係は大きく変わっているかもしれない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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