J-REIT(不動産投資信託)は少額から不動産に投資可能で、分配金利回りが比較的高いことから、初心者向けの金融商品といえます。しかし、複数の銘柄が上場しているため、どのように投資銘柄を選べばよいかわからないのではないでしょうか。
そこで今回は、初心者がJ-REIT銘柄を選ぶときに確認しておきたいポイントと注意点について解説します。
J-REITは3種類に分けられる
J-REITは、投資対象不動産の用途に応じて以下の3種類に分けられます。
・特化型:特定の用途の不動産に投資する
・複合型:2つの用途の不動産を組み合わせて投資する
・総合型:3つ以上の用途の不動産を組み合わせて投資する
特化型は「オフィスビル特化」「住宅特化」など、特定の用途の不動産に絞って投資を行うJ-REITです。投資したい不動産の種類が明確であれば、特化型を選択するといいでしょう。
複合型や総合型は、複数の用途の不動産を組み合わせて投資するため、リスク軽減が期待できるのがメリットです。たとえば、オフィスビルと住宅、ホテルに投資を行う総合型のJ-REITなら、ホテルの収益性が下がっても、オフィスビルや住宅の収益でカバーできます。
J-REITの銘柄を選ぶときは、特化型と複合型・総合型のどちらを選ぶか検討しましょう。
投資対象不動産ごとの特徴
J-REITの投資対象不動産は主に以下の6種類で、それぞれ特徴が異なります。
オフィスビル
J-REITの保有不動産のうち、用途別比率が最も高いのがオフィスビルで、全体の約40%を占めています。オフィスビルは、景気の影響を受けやすいのが特徴です。好景気のときは賃料の上昇によって収益が増えますが、不景気になると空室が増えて収益性が下がる傾向にあります。
商業施設
J-REITは、ショッピングモールなどの商業施設にも投資を行います。J-REITの保有不動産のうち、商業施設が占める割合は約16%です。オフィスビルと同じく景気の影響を受けやすいため、景気が後退すると収益性が下がる傾向にあります。
住宅
マンションなどの居住用不動産は、J-REITの保有不動産全体の約14%を占めています。景気動向に関わらず一定の賃貸需要があるため、景気の影響を受けにくく、安定した収益が期待できるのがメリットです。
一方で、オフィスビルや商業施設などに比べると、分配金利回りは低い傾向にあります。また、投資対象エリアによって期待できる利回りは変わります。
物流施設
J-REITの物流施設の保有割合は増加傾向にあり、保有不動産全体の約18%を占めています。ネット通販の拡大に伴い、倉庫などの物流施設の需要が高まっていることが要因の一つだと考えられます。物流施設はテナントの入れ替わりが少ないため、比較的安定した収益が期待できます。
ホテル
J-REITの保有不動産のうち、ホテルが占める割合は約8%です。ホテルは好景気になると価格が上昇する傾向にあり、以前は外国人観光客の需要もありました。しかし、現在はコロナウイルスの影響を受けて収益性が低下しているため、利回りも下がっています。
ヘルスケア
J-REITの中には、病院や高齢者施設などのヘルスケア施設に投資を行う銘柄もあります。ヘルスケアは、J-REITの保有不動産の1%程度と少ないのが現状です。しかし、高齢化が進むことを考えると、ヘルスケアは有望な投資対象といえるかもしれません。
J-REITの投資指標
J-REIT銘柄を選ぶときは、投資指標をチェックすることも大切です。投資指標の読み方が理解できれば、投資すべき銘柄が見えてきます。ここでは、J-REITの投資指標の意味や目安について確認していきましょう。
分配金利回り
分配金利回りは、投資金額に対する分配金の割合を示す指標です。たとえば、100万円を投資して1年間に分配金が4万円(税引前)支払われる場合、分配金利回りは4%となります。分配金を目的にJ-REITに投資するなら、分配金利回りの高さに注目するといいでしょう。
ただし、分配金利回りは一定ではなく、決算期を迎えるたびに変動します。収益が下がると分配金利回りも下がる可能性があるので、定期的に決算内容を確認することが大切です。
時価総額
時価総額は、J-REITの保有資産を時価評価したもので、その銘柄の規模を表します。一般的には、時価総額が大きいほど安定した運用が可能です。また、多くの投資家が投資しているため、値動きが小さい傾向にあります。
時価総額が小さい銘柄は、取引量が増えると値動きが不安定になることがあります。分配金を目的に長期保有するなら、時価総額が小さすぎる銘柄は避けたほうがいいでしょう。
NAV倍率
NAV倍率とは、J-REITの価格が割安かを判断するための指標です。1口当たりの純資産額に対する投資口価格の割合を示すもので、以下の算式で求められます。
NAV倍率=投資口価格÷1口当たりの純資産(NAV)
一般的には、NAV倍率が1を下回ると割安、1を超えると割高と判断できます。
NOI利回り
NOI利回りとは、J-REITが保有する不動産の収益力を示す指標です。不動産投資から得られる純営業利益(NOI)を不動産価格で割ることで求められます。NOI利回りが高い銘柄ほど、保有不動産の収益力が高いと判断できます。
ただし、地価が安い地方物件は、NOI利回りが高くなる傾向にあります。そのため、NOI利回りの値だけでなく、投資エリアなども考慮して投資判断を行うことが大切です。
有利子負債比率(LTV)
有利子負債比率(LTV)とは、総資産に占める有利子負債(借入金)の割合を示す指標です。J-REITでは、借入金によるレバレッジ効果を利用しています。借入金を活用して不動産を購入することで運用効率が高まりますが、有利子負債比率が増えすぎるとリスクも高まります。
J-REITでは、有利子負債比率の上限を規約で定めています。上限まで余裕がある銘柄は借入金で物件を取得する余地があるので、収益や分配金の増加が期待できます。
格付け
格付けとは、第三者である格付け機関がJ-REITの財務状況を評価したものです。「AA」「B+」のようにアルファベットや記号で表記され、健全な運営がされているかの判断材料となります。日銀がJ-REITを買い入れる際は格付けがAA格以上の銘柄を対象としているので、銘柄選びの目安にするといいでしょう。
J-REIT銘柄を選ぶときの注意点
J-REIT銘柄を選ぶ際の注意点をまとめました。
分配金利回りだけに注目しない
J-REITは定期的に分配金を受け取れるのが魅力であるため、分配金利回りだけに注目しがちです。しかし、J-REITにはさまざまな投資指標があります。
たとえば、現在は分配金利回りが高くても、有利子負債比率が高い銘柄は収益性が低下する恐れがあります。また、時価総額が低いと値動きが不安定になり、タイミングによっては大きな含み損が生じるかもしれません。
分配金利回りも大切ですが、その他の投資指標も確認した上で投資判断を行いましょう。
投資銘柄や投資対象不動産を分散する
J-REITに投資するときは、投資銘柄や投資対象不動産を分散することを意識しましょう。複数の銘柄に投資資金を分散させることで、特定の銘柄の値下がりを他の銘柄の値上がりでカバーできる可能性があります。
また、不動産は用途によって特徴が異なるため、複数の用途の不動産を組み合わせるほうがリスク軽減につながります。
インデックスファンドやETFも選択肢の一つ
J-REITに投資する場合は、東証REIT指数に連動するインデックスファンド(投資信託)やETFを活用するのも選択肢の一つです。1本でJ-REIT市場全体に投資できるため、リスク軽減が期待できます。また、投資銘柄の選定に時間や手間がかからないメリットもあります。
利回りだけでなく、指標を確認しながら投資銘柄を選ぼう
J-REITは、投資対象不動産の用途の組み合わせによって特徴が異なります。投資銘柄を選ぶときは分配金利回りだけでなく、さまざまな投資指標を確認することも大切です。個別銘柄を選ぶのが難しいと感じる場合は、東証REIT指数に連動するインデックスファンドやETFを検討しましょう。
(提供:Incomepress )
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