自己資本比率とともに他の指標もチェック
自己資本比率をはじめ、企業の財務状況を判断するさまざまな指標について解説してきた。自己資本比率が50%以上であれば、倒産の可能性が低く安全であると一般的には言われているが、必ずしもそうとは言い切れない場合もある。そのため、必ず他の指標も見ながら判断することが必要だ。
自己資本比率に関するQ&A
Q.自己資本比率から何がわかる?
A.自己資本比率とは、総資本に対する自己資本の割合で自己資本比率が高いほど企業の安全性が高いといわれている。総資本は、大別すると自己資本と他人資本の2つだ。自己資本は資本金や利益余剰金、他人資本は借入金や買掛金、未払金などが相当する。前者は返済不要だが、後者は返済しなければならないお金だ。
特に借入金は、元金に利息を上乗せして支払う必要がある。つまり「自己資本比率が高い」ということは、「返済しなくてもよいお金が多い」ということになり、経営の安定性につながる。自己資本比率は、一般的に40%なら安全な企業、70%以上が理想だ。また金融機関から融資を受ける場合は、50%が査定の合格ラインといわれる。
逆に自己資本比率がマイナスだと融資を受けるのは難しい。数年間かけて自己資本比率を改善する計画を立てるよう金融機関から指導されるだろう。
Q.自己資本比率の計算方法を教えて
A.自己資本比率は、総資本に対する自己資本の割合なので以下のように算出できる。
・自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100
単純な計算式ではあるが「自己資本」「総資本」としてどのような数値を採用するか問題になる。公表されている貸借対照表の数字を活用して計算すれば、簿価ベースの自己資本比率を出すことが可能だ。この方法は簡単なので多くの会社を並列して分析する場合に向いているものの、土地や関係会社株式などの含み損益が反映されていない。
そのため時価ベースに引き直し、さらに税金の影響も反映させて自己資本比率を出す方法もある。簿価ベースでの自己資本比率が経営の実態と離れていると思われる場合は、この方法が採用される。
Q.自己資本比率が高いことのメリットは?
A.「自己資本比率が高い」ということは、調達した資金のうち「返さなくてよいお金が多いこと」を意味するため、倒産しにくい会社といえる。資金繰りを気にせずに余裕のある経営が可能だ。また自己資本比率が高い企業は、コロナ禍のような予測できない経済的打撃に対しても強かったといわれている。さらに金融機関から融資を受けやすくなることもメリットの一つだ。
融資の審査でも自己資本比率50%が融資を受けるための目安とされている。ただし自己資本比率の高さがデメリットとして現れる場合もある。例えば自己資本比率の高さが借入金の極端な少なさが関係している場合、安定性はあるものの成長性や収益性の観点ではマイナス評価につながりかねない。
Q.自己資本比率を高める方法は?
A.自己資本比率を高める主な方法には、以下の3つがある。
利益を自己資本に回す
利益が出ると投資や消費に回してしまいがちだが、自己資本に回すことを意識したい。法人税などの税金対策という名目で使ってしまうと自己資本比率を高めるのは難しいだろう。計画を立て使うものと自己資本に回すものを分けることが大切だ。遊休資産を売却する
使うあてのない遊休資産や不良在庫などを売却して資金に代え、借入金を返済することも必要だ。ただし含み損のある資産を売却すると簿価ベースの自己資本比率を下げてしまうこともあるため、売却資産の吟味は、慎重に進めなければならない。役員借入金を資本金に振り替える
中小企業で自己資本比率が低い会社では、金融機関からの借入金に加え、役員からの借入金が多額になっているケースも少なくない。この場合は、役員借入金を資本金に振り替えることで自己資本比率を上げることができる。
Q.自己資本比率を見る際の注意点は?
A.自己資本比率の高い低いだけで単純に企業の安全性を見ることはできない。自己資本比率が高くても、すぐに現金化できる資産が少ない場合は要注意だ。反対に自己資本比率が低くても1年以内に返済する短期借入金などが多い場合は、次期に自己資本比率が改善される可能性がある。
また自己資本比率は、万能の指標ではない。一般的に自己資本比率50%以上は安全といわれているが、以下のような指標にも注意して総合的に経営の安定性を計る必要がある。
・流動比率:流動負債に対する流動資産の割合を表す
・当座比率:流動負債に対する当座比率の割合を表す
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業利益や受取利息など安定した事業から得た利益が、支払う必要のある支払利息・割引料に対して何倍あるかを示す
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