種苗法改正には反対の声が多い? 具体的な意見やその理由

実は種苗法の改正には、農家からの反対の声も多い。本来は農家を守ることが目的であるはずだが、なかには前述のようにダメージを受ける農家も存在するためだ。

では、実際にはどのような反対の声が多いのか、農家に発生するメリットと合わせて紹介していこう。

○種苗法改正によって生じるメリットと反対の声

食材高騰の可能性も?農家を守る種苗法とは?

上記を見ると分かるように、種苗法改正の反対派は「自家増殖の規制が農家にとって負担になる」と考えている。確かに、登録品種の割合が高いサトウキビやコメ、果樹などを自家増殖している農家にとって、この規制は厳しいものになるかもしれない。

農林水産省はこの点について、「改正の影響を受ける品種は少ない」「種苗費に占める許諾料の割合は低い」と説明している。しかし、明確な影響が明らかにされていなかったり、許諾料の相場が固まっていなかったりなど、政府の説明不足を指摘する声も多く聞かれるのが現状だ。

このままの状態で新種苗法を施行するとなれば、広範囲に混乱が生じるようなリスクも考えられる。

種苗法改正について、経営者が考えておきたい3つのこと

最後にここまでの内容を踏まえて、経営者が今後考えておきたいことをまとめていこう。種苗法の改正は多方面に影響を及ぼすため、農作物との関連性がそれほど高くない企業に関しても、以下のポイントは強く意識しておくことが重要だ。

1.どこにどのような影響が生じるのか、しっかりと予測しておく

種苗法改正にスムーズに対応するには、改正の影響をしっかりと予測しておくことが必要になる。前述では「農家・一般家庭・企業」への影響を解説したが、そのほか以下のような影響も考えられるだろう。

・農作物の転換によって化学肥料や農薬が必要になり、その結果として土壌が痩せる
・利益率が低い登録品種は、生産継続が難しくなる
・外国企業が種苗の支配に乗り出す

改正によってどこにどのような影響が生じるのかは、実際に新種苗法が施行されてみないと分からない。しかし、事前に影響を予測しておけば、さまざまな変化に対して迅速な行動を起こせるはずだ。

2.制度を正しく理解し、新たなフローを整理しておく

新しい制度を正しく理解しておくことも、国内企業にとっては必須となる。本記事では簡単に概要を解説したが、自家増殖の対象範囲や登録品種の扱われ方をはじめ、改正内容については誤解されている部分も多い。

また、制度を正しく理解した後には、改正後に発生する新たな業務フローを整理しておくことも重要だ。企業によっては仕入先やサービスの調整、登録品種に関する手続きなどが必要になるため、混乱しないように早めに動き出すことを意識しよう。

3.海外の動向をこまめにチェックしておく

海外企業の動向によっては、農家や国内企業を取り巻く状況が一変したり、さらなる法改正が加えられたりする可能性も考えられる。そのため、新種苗法が施行された後の海外の動向は、可能な限りこまめにチェックすることが必要だ。

種苗の流出は国益に関わる問題なので、海外の動向次第では頻繁にルールが変わるかもしれない。どのような改正が加えられてもスムーズに対応できるよう、日本の現状と海外の動向は常に意識しておこう。