2030年の温室効果ガス46%削減に向けて、あらゆる企業が環境への貢献を求められる時代になりました。しかしどのような対策を取れば良いか、手探り状態の企業も多いと思います。そこで、ぜひ確かめていただきたいのが環境認証です。

環境貢献への取り組みで一定の条件を満たすと受けられる環境認証は、貢献手段を模索する企業の指針になるはずです。CO2削減の対策を立案しなければならない企業担当者なら必須の、代表的な環境認証を紹介します。

自社設備を環境認証製品へ

知らないではもう済まされない。日本企業が活用する環境認証の種類と課題
(画像=sharaku1216/stock.adobe.com)

環境認証を受けた商品と自社設備を入れ替えることでも環境貢献が行えます。設備入れ替えのタイミングに合わせれば、新たな出費を抑えながら実行できます。

統一省エネラベル

統一省エネラベルは、経済産業省告示により2006年から始まった電気製品の省エネ性を表示するものです。ラベルには省エネ基準達成率や年間消費電力量、相対的な省エネ性能を星の数で示す多段階評価、年間の目安電気料金、ノンフロン製品かなどが表示されます。

2018年4月1日現在は以下のものが対象となっています。
・エアコン
・電気冷蔵庫
・電気冷凍庫
・液晶テレビ
・電気便座
・家庭用蛍光灯器具

一見すると環境貢献に関係ないように思えますが、エネルギー消費削減は温室効果ガスの大半を占めるCO2削減につながります。企業で使用するエアコンなどに積極的に導入することで、環境貢献に結びつくのです。

燃費基準達成車標章

国土交通省と経済産業省が設けているのが、自動車の燃費性能を示す燃費基準達成車標章です。一般消費者に燃費性能の良い車を選んでもらい、排気ガスによる温暖化などの環境負荷を軽減するために設けられました。省エネ法による燃費基準値を上回る度合いに応じた標章が用意されています。

2021年3月末から施行された燃費基準や税制の改定に合わせ、従来のステッカー式かウェブサイトやカタログに掲載するかが選べるようになりました。そのため、改定以降はほとんどのメーカーで順次ステッカー式は廃止になる方向ですが、標章や基準は今後も残っていきます。

自動車全体のCO2排出量は非常に多く、その削減は常に求められてきました。今後企業が使用する車両は、さらに燃費性能の良い車種を選ぶことが重視されるでしょう。車両導入の際の目安としてこの標章を必ず確かめるようにしましょう。

国際エネルギースタープログラム

国際エネルギースタープログラムは、オフィス機器の国際的な省エネルギー基準です。各種の機器ごとに消費電力などの基準がアメリカの環境保護庁により定められ、それを満たした製品は国際エネルギースターロゴの使用が認められます。

主な対象商品はコンピューターやモニター、プリンターや複合機、サーバーなどです。基準はコンピューターやモニターなら消費電力が低く、スリープモードを搭載していることなどがあります。またプリンターなら印刷方式ごとにエネルギー消費量の基準が設けられています。

現在の企業においてコンピューターや関連するオフィス機器は必須の設備です。今後さらなる省エネへの取り組みが求められることから、こうした基準に適合した機器を導入することは当たり前になっていくでしょう。

自社商品への環境認証

ここから紹介するのは、自社商品に組み入れることで得られる環境認証です。商品の開発段階から検討するためハードルは高いかもしれませんが、自社商品が直接環境貢献になる独自性があります。このため企業価値向上にも大きなメリットが期待できます。

FSC認証

CO2を吸収する森林の量は年々減少していますが、原因は乱伐や無計画な農地などへの転換です。このためFSC認証では、森林を保護するための管理が地域社会に配慮しながら適切に行われているか評価します。この認証を受けた森林の木材を使った製品を作ることで、森林保護に貢献できるのです。

身近な製品では、セブンイレブンジャパンが扱うセブンプレミアムブランドの紙箱にFSC認証紙が使われています。他にもジュースの紙パックや、企業が使うポスターやパンフレットなどにFSC認証紙が用いられています。

近い将来、紙を使った製品を作る企業にとってFSC認証は常識となる時代が来るかもしれません。

MSC認証

MSC認証は、海洋環境や水産資源を保護する取り組みを行ったうえで漁獲された水産物に与えられる認証です。天然の水産物を存続させるには、生き物の成長スピードを考慮した量を捕ることが重要です。また他の生物や小さな魚まで捕らない漁獲方法をしなければなりません。

MSC認証を受けた水産物を選ぶことで、海の環境や水産資源の保護に貢献できます。さらにその基準に合わせた厳格な取り組みを行っている漁業者も支えます。

これから飲食店や海産物を販売する業種では、単に味や価格だけでなくどのような基準で漁獲された海産物かも問われる時代になるでしょう。仕入れる素材の由来も把握するうえで、MSC認証は重要な基準となるはずです。

ASC認証

ASC認証は海の保全や資源の過剰利用防止、責任ある飼料の調達、さらに労働者の人権に配慮するなどの国際基準を満たした養殖場に与えられる認証です。

天然の海産物が乱獲などで減少する中、養殖魚に対する需要が年々高まっています。しかしずさんな養殖場運営による水質汚染、生態系の破壊、劣悪な労働条件などが問題化しています。これらが環境や地域に与える悪影響を防ぎ、適正な養殖場を推進するためにASC認証が生まれました。

全国に展開するイオンリテールやセブンイレブンジャパンでは、ASC認証を受けた海産物や加工品を販売しています。前述のMSC認証と同様に海産物を扱う企業にとって、品質はもとよりそれが生まれた背景も重要な要素となってきています。

ABINC認証

ABINC認証(いきもの共生事業所認証)は、生物多様性に配慮した土地利用を行っている企業を認証する制度です。生物と人が共存できる仕組みを作り、科学的・技術的に検証したうえで事業化を推進します。

認証事例として、三菱地所が取り組んだ千代田区のホトリア広場があります。これは2棟の高層ビルの間に整備された2,800㎡の公開空き地で、多くの地域在来種の植物を植え皇居の水と調和した空間となっています。

水路の水をカルガモが飲んでも問題ないような方法で殺菌したり、皇居外苑濠(通称:内堀) の水質改善にも取り組んだりと、単なる緑地化におさまらない取り組みをしています。企業が社屋や工場などを新設する際に、環境貢献の目安となる認証になっています。

認証制度の課題と現実的な取り組み

環境認証は、環境保護や温暖化対策に取り組む企業であることを、わかりやすく裏付けしてくれます。しかし認証が設けられている分野は限られ、企業の取り組む活動や商品に適した認証が必ずある訳ではありません。

無理に近い分野の認証を取得しても、目的である環境貢献につながらなければ無意味です。自社で取り組むべき認証があるかは冷静に検証し、見当たらない場合は実効性の高い再生可能エネルギーや省エネ設備を整備することも検討すべきでしょう。

環境貢献はすべての企業に求められる

現在はCO2削減や環境保護にどれだけ貢献しているか、企業がより厳しく問われる時代になっています。特に2030年に目指す温室効果ガス46%削減目標への取り組みが進むにつれ、その流れはますます加速するでしょう。

もはや大企業やグローバル展開する企業以外も環境貢献をしなければ、企業イメージを大きく落としかねません。さらに金融機関からの投融資が受けられなくなる可能性すらあります。自社で取り組める環境認証がないか早急に調査し、未来につながる環境対策を取るようにしましょう。

(提供:Renergy Online



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