2021年4月22日に菅首相は、2030年度までに温室効果ガスを2013年比で46%削減すると表明し大きな話題となっています。これを政府と大手企業だけの問題と捉えてしまうと、中小企業は今後の存続が危うくなる可能性があります。

具体的な指針や策はこれから政府より発表されるはずですが、それを待っていては業界の中で大きな後れを取りかねません。今後生き残るために企業が取るべきCO2削減の対策を解説します。

今、CO2削減対策に取り組むべき理由

環境対策担当者必読。2030年46%削減に向けて今すぐ行うべきCO2対策.docx
(画像=NicoElNino/stock.adobe.com)

今後は大手企業に限らず中小企業にもCO2削減の対策が強く求められるのは必至です。これまで現実的に削減できるCO2削減率は各業界が絞り出した29%でした。そこから20%の上乗せですからわずかでも排出削減を絞り出す必要があり、中小企業へも具体的な数字や対策が求められるはずです。

「CO2削減は大手企業がやること」「中小企業には余裕がない」と、対応を後回しにできる時代は終わったと言って良いでしょう。これからは各業界が末端までわずかなチリを拾うような努力が求められるはずです。今後そうした対策を怠る企業には、どのようなデメリットが生まれるのでしょうか。

企業の信用が失墜する

今後CO2削減に消極的な企業は、社会的な信用を大きく失墜させる可能性があります。近年の例では、ベトナムの石炭火力発電所建設に出資する三菱商事 が、国内外から多くの批判を受け計画からの撤退を表明しました。また三井物産もインドネシアの石炭火力発電所の権益を売却する方針を固めています。

CO2削減を多く排出する石炭火力発電所は世界的に減少傾向にあり、継続して事業を続ければ企業価値を損なうと判断したようです。またマクドナルドは、欧州においてプラスチックストローをCO2削減につながる紙製に切り替えましたが、リサイクル不能な素材であると判明し大きな批判を浴びました。

2030年に向けて、国がCO2削減の大きなキャンペーンを展開することも考えられます。このため多くの企業が、今まで以上にCO2削減へどのように取り組んでいるか厳しい目が向けられるはずです。

資金が集めにくくなる

現在はCO2削減への取り組みが不十分な企業は、機関投資家などから資金が集めにくくなっています。パリ協定の実現など脱炭素=ゼロ・カーボンに向かうことは世界的な流れですが、対応できない企業は今後企業価値を落としかねず、投資するには危ういと考えられるからです。

特に海外の機関投資家から投資先の企業や団体へ、CO2削減への取り組みを求める声が強まっています。逆にCO2削減に注力する企業は今後価値を高めると考えられ、その点を評価するESG投資資金などが集めやすくなるはずです。

さらに今後はCO2削減への取り組みが不十分な企業は、国内の金融機関の投融資も受けにくくなると考えられます。2020年に石炭火力発電所への投融資を、国内3大銀行が取りやめを表明したのはゼロ・カーボンに逆行する投資に世界から批判が集まったからです。

これからは他の金融機関も同じ姿勢になると考えられ、CO2削減への取り組みが不十分な企業は資金繰りが難しくなる事態もあるでしょう。

サプライチェーンから外される

サプライチェーンとは製品の原材料や部品などの調達から、製造、配送、販売と、消費者に届くまでの一連の流れを指します。環境への取り組みはこれまで企業ごとに判断していましたが、今後は大きなサプライチェーンにかかわる企業全体で、同じCO2削減目標を共有する動きが活発になるでしょう。

すでに海外の大手ITメーカーなどが、サプライチェーンにかかわる企業に強くCO2削減を求めています。日本でもNECや大日本印刷、ファミリーマートなど、業種を問わず企業がサプライチェーン全体でのCO2排出削減に取り組んでいます。

今後は大きなサプライチェーンを抱える企業に、国からさらなる排出量削減が求められるはずです。当然その流れに乗れない関連企業は、サプライチェーンから外される恐れがあります。

享受できるメリット

一方でCO2削減への取り組みを積極的に行うことは、企業にどのようなメリットをもたらすでしょうか。

エネルギーコストが抑えられる

CO2削減に効果のある設備の最もわかりやすいメリットは、長期的に見ればエネルギーコストが抑えられる点です。例えば、LED照明を社内施設に取り入れている企業は多いと思いますが、これは初期費用がかかるものの電気代の削減で初期費用回収が可能で、その後の電気代が大きく削減できるからです。

CO2排出削減で太陽光発電のような再生可能エネルギーを導入すれば、初期費用はかかりますが初期費用回収後は大きく電気代を削減できます。CO2削減への取り組みは社会貢献であるとともに、企業の支出も抑えてくれるのです。

企業イメージの向上

CO2削減につながる環境対策を行うことは、企業のイメージアップにもつながります。一般消費者を顧客にしている企業なら販売への好影響が期待できるでしょう。また企業を取引先にした業態でも、相手企業がCO2削減へ積極的な相手をパートナーに選ぶ時代がすぐに来るはずです。

他にも新社会人や優秀な転職者から選ばれる企業の条件として、CO2削減へ積極的な取り組みをしている企業であることが加わることも考えられます。

RE:Actionに注目する

これからCO2削減へ取り組む企業に注目してほしいのが「RE:Action」です。これは2050年までに再生可能エネルギー率100%を目指す日本の中小企業を対象とする枠組みです。世界的な影響力を持つ企業が参加する、再生可能エネルギー転換への国際的な取り組み「RE100」の国内版と言えるものです。

RE:Actionでは対外的にCO2削減への取り組みを表明し、再生可能エネルギーの総電力消費量を毎年報告するため、社会的な評価向上に大きな効果が期待できます。あるいはこれからは、RE:Actionのような一歩踏み込んだ取り組みが政府や業界団体から求められる可能性もあるでしょう。

実際に参加するには手間や人件コストがかかるため十分な検討が必要ですが、参加企業の動向に注目することは今後の大きな指針になるはずです。

再生可能エネルギーへの取り組み事例

RE:Actionのサイトで紹介されている企業の取り組み事例を紹介します。大企業やグローバル展開する企業ではなく、身近な規模の企業がどのような取り組みをしているかぜひ参考にしてください。

株式会社エコ・プラン

空調・ダクトメンテナンスを行う企業「株式会社エコ・プラン」では、2050年までに全拠点の使用電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指しています。現在はオフィスやサービス拠点の電力で、静岡県の太陽光発電所を主とした再生可能エネルギーを利用しています。

コマニー株式会社

建物用のパーティションを製造するメーカー「コマニー株式会社」は、2019年にRE:Actionに加入し使用電力の100%再生可能エネルギー化を目指しています。すでに導入している太陽光発電を徐々に拡大し、2030年には50%、2040年には100%の再エネ化を目指しています。

株式会社エスプールロジスティクス

物流や倉庫管理を行う「株式会社エスプールロジスティクス」では、CO2排出ゼロを目指す「カーボンフリー・ロジスティクス」を構築しています。倉庫を再生可能エネルギー100%で運用し、段ボールや緩衝材などは環境配慮素材を使用。倉庫内のオートメーション化も進め、作業でのCO2削減にも取り組んでいます。

三光ホールディングス

鳥取県の「三光ホールディングス」では、中核の産業廃棄物処理会社「三光株式会社」において、再生可能エネルギー導入によるCO2削減に取り組んでいます。また下水汚泥をバイオマス燃料としてリサイクルする技術を開発し、多角的にCO2削減を推進しています。

企業が早急に取るべき対策

紹介した企業を始めRE:Actionに参加する企業で行われているCO2削減では、やはり太陽光発電が目に付きます。太陽光発電は広く普及してきたことから低価格化が進み、他の風力や地熱といった再生可能エネルギーに比べ導入しやすいからです。

46%削減の宣言により国の補助金復活も期待できるため、これからCO2削減へ取り組むのであれば太陽光発電の設置が現実的でしょう。

環境・エネルギー対策資金融資の活用

再生可能エネルギー設備を導入するとしても、資金面がハードルになる企業も多いと思います。そこで検討したいのが、日本政策金融公庫が行う環境・エネルギー対策資金への融資です。非化石エネルギーを導入するための設備を設けるために必要な資金を低利で借り入れができます。

直接貸付で7億2000万円を限度とし、返済期間は最長で20年です。基準金利は19年超20年以内で1.4%(2021年5月6日時点)となっているほか、太陽光発電などで所定の条件を満たすと適用となる特別金利も用意されています。資金準備の1つの方法としてぜひ検討してみてください。

素早い対応が企業存続を左右する

時代の流れに敏感な企業はCO2削減対策へすでに動き出しています。そのため、これから取り組む企業はいかに素早くスタートできるかが、2030年までに生き残る条件になるでしょう。もし他社に先駆けられれば、社会への大きなアピールになるばかりか新たな取引先や投資資金が集めやすくなるはずです。

企業の存続はもちろん飛躍のためにも、再生可能エネルギー導入を一刻も早く検討しましょう。

(提供:Renergy Online



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