7月相場がスタートしました。

7/1(木)と7/2(金)の相場を見る限りでは、あまり大きな動きを感じられません。7/2(金)に予定されている6月米雇用統計の発表や、7/5(月)の独立記念日代休などを控え、買いポジションを形成しにくいことも理由のひとつかと思われます。ここは夏相場をにらみ、物色対象を見定める時期と割り切りたいところです。

そこで今回は今後、好決算や業績予想上方修正・株価上昇の期待が大きい10銘柄を選びました。企業の景況感を示す『日銀短観』(6月調査)をヒントにしています。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。 ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん

「短観」をヒントに選ぶ上方修正・株価上昇期待の10銘柄

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

『日銀短観』は、全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することを目的としています。年4回、3月と6月、9月、12月に行われ、全国で9,407社(2021年6月調査の場合)が回答しています。3月決算企業等の四半期決算発表の直前に発表されることもあり、四半期決算数字を予想する際の参考になります。

今回、大企業・製造業の業況判断指数は「14」でした。現在の景況感について、「良い」と答えた大企業・製造業関連の割合(%)から「悪い」と答えた企業の割合(%)を引いた数字(%ポイント)が「14」になっているということです。この数字は、前回の「5」から9増え、前回時の予想「4」に対しては10上振れました。ただし、先行きは「13」と1減る見通しです。

大企業・製造業の景況感は良くなっており、それは「予想以上」であるものの、先行きは楽観できないと、企業は考えていることになります。同様に、大企業・非製造業の業況判断指数は「1」で、前回から2増え、前回時の予想に対しても2上振れました。ただし、先行きは2増える見通しです。非製造業の業績回復は、製造業に比べて遅れていると考えられます。

こうした『日銀短観』(図表1)をベースに、以下の条件をすべて満たす銘柄を、52週高値からの株価下落率が大きい順に10銘柄並べたものが図表2となります。

(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)『日銀短観』の業種区分で「造船・重機等」、「生産用機器」、「卸売」、「窯業・土石製品」、「紙・パルプ」、「対事業所サービス」、「繊維」、「鉄鋼」に関連深いとみられる銘柄であること。
(3)時価総額500億円以上1兆円未満の銘柄であること。
(4)2名以上のアナリストが予想EPSを公表している銘柄であること。>
(5)過去4週間で今期市場予想(Bloomberg集計の市場コンセンサス)営業利益が横ばい、または上昇した銘柄であること。
(6)今期市場予想営業利益が前期比で、黒字転換または10%以上の増益予想であること。
(7)来期市場予想営業利益が前期比で10%以上の増益予想であること。

今回の『日本株投資戦略』は、好決算や業績予想上方修正・株価上昇の期待が大きい10銘柄を選ぶことが目的ですが、そのためにまず、業種について、図表1の(C)-(B)の値がプラスの業種に絞りました。ここがプラスの値を取る業種は「3ヵ月前に予想していたよりも、6月の景況感の方が強い」ことを示しており、2021年4~6月期の業績について、相対的に上積み期待が大きい業種であると考えられます。

さらに、(C)-(A)がプラスの値を取る(前回よりも景況感が改善している)業種であること、(D)-(C)がプラスの値を取る(先行きも横ばい、または良化が予想されている)業種であること、等の条件を追加し、残った業種が上記の(2)で指定された業種であり、図表1において、赤色で背景を塗りつぶされた業種になっています。

図表1 日銀短観(2021年6月調査)の業種別・業況判断指数

日銀短観(2021年6月調査)の業種別・業況判断指数
(画像=SBI証券)

※「日銀短観」(2021年6月調査)をもとに、SBI証券が作成。黒字は製造業で、青字は非製造業。今回調査の「最近」から、前回調査の「先行き」を引いた(C)-(B)の値が大きい順(全体数字の部分は除く)に並べ替えています。
※「日銀短観」における「造船・重機等」は、自動車以外の輸送用機器を指しており、該当銘柄は限定的となります。

「短観」から選ぶ上方修正・株価上昇期待の10銘柄
(画像=SBI証券)

図表2 「短観」から選ぶ上方修正・株価上昇期待の10銘柄
コード / 銘柄 / 株価(7/1) / 52週高値比株価下落率 / 東証33業種
<6240> / ヤマシンフィルタ / 697 / -47.4% / 機械
<4290> / プレステージ・インターナショナル / 695 / -32.1% / サービス業
<6284> / 日精エー・エス・ビー機械 / 4,935 / -27.9% / 機械
<6055> / ジャパンマテリアル / 1,319 / -27.0% / サービス業
<2127> / 日本M&Aセンター / 2,775 / -26.7% / サービス業
<6099> / エラン / 1,286 / -25.9% / サービス業
<5406> / 神戸製鋼所 / 714 / -23.1% / 鉄鋼
<2175> / エス・エム・エス / 3,300 / -22.4% / サービス業
<6471> / 日本精工 / 939 / -21.9% / 機械
<5301> / 東海カーボン / 1,540 / -21.4% / ガラス・土石製品

※Bloomberg、「日銀短観」をもとにSBI証券が作成。

抽出銘柄の投資ポイント

ここでは、図表2の銘柄のうち、数銘柄について投資ポイント等を解説します。

ヤマシンフィルタ(6240)~“グローバル・ニッチ・トップ企業”に株価底入れのチャンスか?

ヤマシンフィルタ(6240)
(画像=SBI証券)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
期間:2019/7/6~2021/7/2(週足)

■建機用フィルタで推定世界シェアが約70%

「建設機械用フィルタ」が売上高(前期)の75%を占める主力事業で、他に産業用のエアフィルタが18%、マスクを製造するヘルスケアが7%となっています。

建設機械は油圧で動くので、その故障原因の多くは油の汚れと言われます。当社は建機に使われる複数種類の油向けにフィルタを生産しており、推定世界シェアは70%の“グローバル・ニッチ・トップ企業”となっています。

ろ過技術を駆使して、オフィスや工場、車両等での使用を意識したエアフィルタ、感染症拡大に対応した高機能マスクの生産も行っています。

■52週高値から47.4%下げ、底入れの様相も

株価は昨年8/24(月)の52週高値1,324円から、7/1(木)に付けた同安値697円まで47.4%も下げました。新型コロナウイルスの感染拡大等を背景に、主力の建機用フィルタで一時費用が発生した他、マスク事業の立ち上げに苦戦し、業績が悪化したことが主因とみられます。

2021/3期は売上高は前期比15%増の約146億円を確保したものの、営業損益が前期比で9.2億円悪化し、約1.5億円の赤字になりました。

当社が販売先とする建機市場は、日本、米国、欧州、アジアで需要が回復し、中国では過去最高販売台数となっています。これを受け、2022/3期は業績回復が期待できそうです。

株価は目先、700円台を割ると、そこを回復する展開で底入れの様相が強まっているようにも思われます。

日本M&Aセンター(2127)~12期連続最高益を予想。株価は調整中。

日本M&Aセンター(2127)
(画像=SBI証券)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
期間:2019/7/6~2021/7/2(週足)

■中堅・中小企業を対象にM&Aを仲介

「全国の公認会計士・税理士の共同出資により設立された独立系のM&A(企業の合併・買収)仲介会社です。中堅・中小企業を対象とした案件を中心に、専門的なサービスを提供しています。

譲渡側である中堅中小企業の経営者後継問題や先行き不安の問題を解決。同時に、買収側である中堅企業(上場企業および上場予備軍含む)の発展を実現するための「戦略としての友好的M&A」を推進しています。

2021年4月23日、京都銀行(8369)との業務提携を行い、TOKYO PRO Market上場支援を行うと発表しました。J-Adviser企業として、プロ投資家向け市場TOKYO PRO Marketへの上場を目指す企業に対し、東証に代わって上場審査や上場後の情報開示等のサポートを行っています。京都銀行との連携をより強固にし、TOKYO PRO Market上場を含めた企業の成長戦略を支援するとともに、地域企業のさらなる発展を通じて、地域経済の活性化や雇用創出に貢献していく方針です。

■株価調整の中、12期連続最高益を目指す

2021年3月期の連結業績は、売上高が361億円(前期比12.9%増)、営業利益が164億円(同15.2%増)となりました。新型コロナの影響で営業活動が制限されたものの、過去最高となる914件(前期比3.3%増)のM&Aを成約させました。

2022年3月期の連結業績予想は、売上高375億円(前期比3.8%増)、営業利益172億円(同4.8%増)と12期連続の最高益を目指します。

経営者の高齢化などで中小企業の後継者探しは年々増加しており、年間3~4千件の中小M&Aが実施されている模様。市場コンセンサスでは、営業利益は2022年3月期の192億円から、2025年3月期は360億円超に膨らむとみられています。

52週高値からの下落率は26.7%に達していますが、株式市場の成長期待に大きな変化は少ないようです。

神戸製鋼所(5406)~大手高炉。低PER・低PBR銘柄も当面は業績拡大を予想

神戸製鋼所(5406)
(画像=SBI証券)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
期間:2019/7/6~2021/7/2(週足)

■高炉で国内3位

高炉国内3位で非鉄、機械などにも展開しています。

1905年9月に合名会社・鈴木商店が小林製鋼所を買収し、神戸製鋼所として創業。1926年には日本初のセメントプラントを完成し、国産1号機の電気ショベル製造や、アルミ・銅製品、溶接材料の生産を開始しました。

以降、工場の新設が相次ぎ、事業領域も拡大。1988年4月に米国総合統括会社(Kobe Steel USA Inc.)を、2017年6月には東南アジア及び南アジア地域統括会社(Kobelco South East Asia Ltd.)を設立するなど海外事業を深耕しています。

2021年3月期の連結業績は、売上高1兆7,056億円(前期比8.8%減)、営業利益は304億円(同3.1倍)となりました。新型コロナの影響から自動車や航空機、建築向けを中心に売上高の大幅な減少を余儀なくされましたが、固定費の圧縮などの緊急収益改善や素材系事業を中心とした収益改善に取り組みました。

22年3月期の連結業績予想(会社側)は、売上高が1兆8,700億円(前期比9.6%増)、営業利益は550億円(同80.9%増)と急回復を見込みます。市場コンセンサスの営業利益は、この機に620億円超となったあと、2025年3月期までは毎期10%超の営業増益が続く見通しです。

■典型的なバリュー銘柄

当面業績回復期が予想される当社ですが、予想PERは約11倍でPBRも0.4倍を割れるなど、典型的なバリュー銘柄と言えそうです。

鉄鋼株は市場のインフレ期待を背景にもっとも株価が大きく上昇した業種のひとつであり、目先は自律調整とみられます。市場で再びインフレ期待が高まれば、買い直される可能性も大きそうです。

東海カーボン(5301)~半導体関連の側面も。当面は業績拡大継続へ。

東海カーボン(5301)
(画像=SBI証券)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
期間:2019/7/6~2021/7/2(週足)

■世界シェア80%の半導体製造向け材料の成長に期待

国内では、昭和電工(4004)に次ぐ、黒鉛電極の大手企業です。

鉄鋼(電炉)の主要材料で、世界経済の減速と鉄鋼の需要減で2020年12月期は営業赤字になりました。なお、タイヤの補助剤で国内トップシェアのカーボンブラック事業もこの期は減益でした。

シリコンウエハの回路を形成する際、不要な酸化膜を除去する炭化ケイ素に使用する材料(ソリッドSiC)は世界シェア80%を有します。こうした半導体向け材料は成長期待分野であり、東京エレクトロンやサムスン電子などを顧客としています。

■中期計画を策定

2020年12月期の営業利益は78億円でした。市場では、黒鉛電極やカーボンブラックの回復により、2021年12月期は225億円へ増益となる予想で、2022年12月期は461億円、2023年12月期は525億円を見込みます。

一方、2021年5月11日に当社は、ローリングプラン中期経営計画「T-2023」を策定したと発表。主力事業の成長軌道回帰、事業ポートフォリオの最適化、連結ガバナンス体制強化を基本方針としました。

2023年12月期の連結売上高3,200億円(20年12月期は2,015億円)、営業利益570億円(同78.6億円)を目標に掲げています。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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