本記事は、谷厚志氏の著書『損する言い方 得する言い方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています

「できないです」という“否定の言葉”を使わない

否定,言葉
(画像=ELUTAS/PIXTA)

●否定や批判の言葉はコスパが悪い

「まったく役に立たない!」「共感できない」「面白いことが書かれてなかった...」――。これらは、私が過去に出版した著書のインターネット上に読者の感想として投稿された言葉の数々です(涙)。

怒りを笑いに変えるクレーム・コンサルタントとしては、こうした書き込みをされた人たちの怒りを、どうやって笑いに変えるのかと読者のあなたは興味を持っているかもしれませんが、残念ながら、どうすればよいのか、私にもわかりません(笑)。

目の前にそのような書き込みをされた本人がいたなら、「お役に立てなかったようで申し訳ありません。どの辺が面白くなかったですか?」と聴くことができ、「そうでしたか。お話、よく理解できました。次は、お役に立てる面白い本を書くようにしますね」とお伝えし、次は笑ってもらえるような本を出版することで、怒りを笑いに変えることができたかもしれませんが、おそらく、その機会が訪れることはないと思います。

正直なところ、これまで数多くのクレームを受けてきた私でも、自分のことを否定されると傷つきます。

テレビのお仕事の現場で休憩中に、あるお笑いタレントの方に「ネットに書かれている悪口とか見たりしますか?」と、それとなく質問したことがあります。

その方は「匿名で書かれていることなので、気にしないようにしてますね。落ち込んでいる時間がもったいないので」と、笑いながら仰っていました。

その後、その方のお名前をネット上で検索したところ、私だったら立ち直れないぐらいの誹謗中傷する酷いコメントばかりでした。

「そうか、このぐらいの強い気持ちがないと芸能界では生きていけないのか」と素直に感心したものです。

でも、それ以上に私の心に一番残ったのは、「落ち込んでいる時間がもったいない」という言葉でした。時間をコストとして意識されていることでした。

これは、とても重要な考え方だと思います。「酷い書き込みに落ち込んでいる暇などない。

自分のやるべきことに集中しよう」という、超一流の考え方です。

人の意見を否定したり、批判したりしてストレスを発散しようとする人がいますが、否定や批判をしたところで、自分の人生がよくなることはありません。

もっと具体的に言うと、私の著書の悪口をネット上に書き込んだ人は、せっかくお金を払って私の著書を買って、読む時間というコストをかけたうえに、さらに「まったく役に立たなかった」という怒りのコメントを書く時間まで浪費してしまっています。一体、どれだけ、お金と時間をムダにしたのかを考えてほしいのです。

人生の中で他人を否定したり批判したりすることは、コストパフォーマンスとして非効率で、いかに自分が損することになるかを意識するべきです。

そして、時間をムダにせず、毎日楽しく生きていくためには、“否定の言葉”を使って怒るのではなく、笑って過ごせるようなよい言葉を使うことが大切です。

例えば、先ほど取り上げた私の著書の場合、せっかく購入して読んだ本の批判をするのではなく、その本の中でよいと思ったことを1つでも見つけて実際に試してみることがコストパフォーマンスもよく、人生が大きく好転するきっかけになるのではないでしょうか。

ですから、あなたは、この本の悪口をネット上に書き込むのではなく、ぜひよい部分を見つけて、それを実践してみてくださいね(笑)。

●言葉を変換して相手を嫌な気持ちにさせない

接客の場面で、お客様からクレームを最も言われるのはどんなときか、ご存知でしょうか。それは、お客様に対して“否定の言葉”を使ってしまったときです。

代表的なものに「それは、厳しいですね」という“拒否する言葉”、「無理だと思います」「できないです」という“拒絶する言葉”が挙げられます。

例えば、買ったスマホ(スマートフォン)が故障したという場面では、「お急ぎかもしれませんが、2時間ほどお時間をいただかないと、直らないです」という否定の言葉を使うと、「2時間も待たされる」という印象を与え、お客様がさらに不満を募らせてしまうことが少なくありません。

接客時には否定ではなく、“肯定の言葉”を常に使うようにすれば、お客様を怒らせることがなくなります。

先ほどのスマホの故障の例であれば、「それはお困りですね。2時間ほどお時間いただけましたら、お使いいただけるようになります」という表現にすると、随分印象はよくなります。おそらく、お客様は“2時間待てば、使えるようになる”という前向きな気持ちになるはずです。すなわち、待つ時間が同じ2時間でも、使う言葉次第でお客様の受け取り方が大きく変わるのです。

このように、肯定の言葉を使う最大のメリットは、目の前の人を嫌な気持ちにさせなくて済むということです。それだけでなく、あなたの印象や評価も大きく変わります。

コミュニケーションで重要なのは、自分の使う言葉が相手をどんな気持ちにさせるのかを常に意識することです。自分ではなく、言葉の受け手である相手の気持ちを軸にして言葉を慎重に選ぶ必要があるのです。

今、あなたが使っている言葉は、相手を笑顔にする言葉ですか?

それとも、嫌な気持ちにさせてしまう言葉ですか?

相手のことを考えてコミュニケーションをとれば、どんな相手ともうまく付き合うことができるようになります。

損する言い方 得する言い方
谷厚志(たに・あつし)
怒りを笑いに変えるクレーム・コンサルタント。一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事。クレーム評論家。1969年、京都府生まれ。近畿大学卒業後、広告会社の営業マンを経て、旅行会社のコールセンター、お客様相談室で責任者として2,000件以上のクレーム対応に従事。一時はクレームによるストレスで出社拒否状態になりながらも「クレーム客をファンに変える対話術」を確立する。現在は独立し、クレームで困っている企業などのために全国でコンサルティング活動を展開、具体的なクレーム対応法をアドバイスしている。圧倒的な経験知と人を元気にするトークが口コミで広がり、年間200本以上の講演・研修にも登壇する。最近はテレビ番組のコメンテーター、著名人のトークショーのナビゲーターとしても活動している。著書に『どんな相手でもストレスゼロ! 超一流のクレーム対応』(日本実業出版社)、『「怒るお客様」こそ、神様です! 』(徳間書店)、『ピンチをチャンスに変えるクレーム対応術』(近代セールス社)、『失敗しない! クレーム対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。

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