本記事は、谷厚志氏の著書『損する言い方 得する言い方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています

「嫌われたくない」と他人の批判を恐れない

コミュニケーション苦手
(画像=taa/PIXTA)

●何をやっても批判やクレームは起きる

あなたは周りの人から好かれたいですか?

私はできれば、誰からも好かれたいと思っています。でも、どんなに頑張っても人から嫌われることが必ずあるということは、わかっています。

私は京都府出身です。そのため、講演では関西弁で話をしています。講演が終了した後に参加者に記入してもらうアンケートの回答には、「バラエティ番組みたいで面白かった!」というコメントがある一方で、「関西弁が嫌いです。とても不快だった」といったコメントもあります。

こうしたコメントを見るたびに落ち込んでいましたが、苦い経験は人を強くするものです。この経験を繰り返すなかで、私は“嫌われることは必ずある”と考えるようになったのです。もっと言うと、“嫌われても構わない”と思うようにもなりました。

なぜ、そう思うことができるようになったのでしょうか?

“自分の軸をなくしたくない”と考えたからです。好かれようとしてフラフラと自分を変えたくない、自分の個性やキャラ(キャラクター)を大切にしたいと思ったからです。

何をやっても批判は起き、嫌われることはあると覚悟を決めておくことで、自分がブレないように心がけているのです。こうすれば、ストレスゼロです。

ただ一方で、他人からの意見にまったく耳を貸さないということではありません。私はクレーム対応の講演では、「クレームはアドバイスです」と伝えています。クレームから学べることがあるので、仕事のやり方を変えるきっかけにしてみようとも言っています。

クレームの専門家として仕事をしてきて気づいたことがあります。それは、発生するクレームのうち全体の10%のクレームはとんでもないほど、よい意見なのです。とても有益な批判があるのです。

過去の講演の後に実施したアンケートの回答で、「クレーム対応でやるべきことはわかったが、何をやってはいけないかを知りたかった」というコメントがありました。

この視点は、当時の私にはありませんでした。「こうやれば、うまくいく」という話を聞きたい人もいれば、「これをやっちゃダメ」ということを知りたい人もいるのだと学ぶことができたのです。

これがきっかけで、本当は話したくなかった、私がお客様を怒らせてしまった“しくじったクレーム対応”を失敗談として、これでもかと話すようになりました。その結果、講演会場での笑いの回数が増え、アンケートの回答にも「勇気をもらった」「よくぞ教えてくれた」などの好意的な意見も劇的に増え、口コミだけで全国から講演のご依頼をいただけるようになったのです。

●あえて“空気を読まない”ことも必要

この本を書くにあたって、コミュニケーションが苦手という20代〜30代の会社員の方々を中心に取材をお願いして話を伺ってきました。

そうした取材から、コミュニケーションが苦手な人の共通点の1つとして、嫌われることを非常に恐れている人や、周りに無理やり合わせようとしている人がとても多いという実態がわかりました。

嫌われることを恐れたり、周りに合わせたりする理由として、彼らは「傷つきたくない」とか、「組織内で変な目立ち方をしたくない」と答えます。確かに会社組織では、波風立てずに社内の雰囲気に合わせられる人が必要とされることもあるでしょう。でも、そのような人は、“何か嫌だなー”と思いながら流されているだけかもしれません。

昨今、空気を読める人が正しくて、嫌われない世の中になっているような気がしています。でも、これはとても危険な風潮です。なぜなら、コミュニケーションの軸が人に嫌われないことになってしまっているからです。

人に嫌われたくないという過度な恐怖心が、コミュニケーションを苦手にしているのではないでしょうか。これでは常に自分を犠牲にして我慢することが増えるので、ストレスが溜まってしまいます。我慢ばかりの毎日なんて、楽しいはずがありません。

では、どうすればよいのでしょうか?

私は“あえて空気を読まない意識”を持つことをおススメしています。

もし、「仕事は大変でつらいのが当たり前だ」と考えている上司がいるなら、あなたは「目の前の仕事をいかに楽しむか?」を常に考えて行動するようにしてください。周りが暗いなら、あなただけでも光り輝くようにしてもらいたいのです。嫌われたくないと考えてストレスを抱えてイライラするのではなく、あえて空気を読まずに自分だけは笑ってキラキラすることを実践するようにしてはどうでしょうか。

例えば、タクシーに乗ると、行き先を告げても返事をしないような愛想の悪い運転手さんが結構います。そうしたときに、「返事ぐらいしろよ!」と文句を言ったところでトラブルになるかもしれませんし、お互いに嫌な気持ちになるだけでしょう。誰も幸せになりません。

私はそんな運転手さんに遭遇したら、行き先に到着したときの支払いで千円札を運転手さんに渡しながら「ありがとうございます!お釣りはいりません」と最高の笑顔で伝えるようにしています。タクシー代は990円なのですが(笑)、最初は面喰らっていた運転手さんも「あっ!ありがとうございます。お忘れ物がないように」と、まるで別人のようにニコニコしながら千円札を受け取ります。

おそらくですが、こうした運転手さんは次のお客さんが乗ってきたときにはニコニコして接客すると思います。まさに“笑顔の襷リレー”の完成です。

あえて空気を読まないようにする場合、ほんの少しの勇気が必要です。想像した反応が相手から返ってこないケースもあるかもしれません。でも、嫌われることを恐れて何もしないより、はるかに楽しい気持ちで過ごせる時間が増えるようになります。

損する言い方 得する言い方
谷厚志(たに・あつし)
怒りを笑いに変えるクレーム・コンサルタント。一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事。クレーム評論家。1969年、京都府生まれ。近畿大学卒業後、広告会社の営業マンを経て、旅行会社のコールセンター、お客様相談室で責任者として2,000件以上のクレーム対応に従事。一時はクレームによるストレスで出社拒否状態になりながらも「クレーム客をファンに変える対話術」を確立する。現在は独立し、クレームで困っている企業などのために全国でコンサルティング活動を展開、具体的なクレーム対応法をアドバイスしている。圧倒的な経験知と人を元気にするトークが口コミで広がり、年間200本以上の講演・研修にも登壇する。最近はテレビ番組のコメンテーター、著名人のトークショーのナビゲーターとしても活動している。著書に『どんな相手でもストレスゼロ! 超一流のクレーム対応』(日本実業出版社)、『「怒るお客様」こそ、神様です! 』(徳間書店)、『ピンチをチャンスに変えるクレーム対応術』(近代セールス社)、『失敗しない! クレーム対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。

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