本記事は、谷厚志氏の著書『損する言い方 得する言い方』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています

「やるじゃん」と上から目線でほめない

褒める
(画像=mits/PIXTA)

●他人をほめるとストレスがゼロになる

私が出演しているYouTube番組の人生相談コーナーで、婚活中の女性から「異性を一生好きでいられるか、自信がないので結婚できない」という悩み相談がありました。

この女性が相手を一生好きでいられる自信が持てない最大の理由は、異性の嫌なところを知ると、どんどん点数が下がっていくためだそうです。参加した合コンで目の前にイケてる男性が現れても、お箸の持ち方がおかしいとか、話にオチがないとか、欠点を見つけて、相手に対する興味がどんどんなくなってしまうそうです。

そのため、合コンに参加しても毎回、帰り道で「今日もいい出会いがなかった」と独り言を言って嘆いているようです。その番組に出演する独身の女性陣も「わかる〜」と共感のコメントをしていたので、このようなことは婚活中の多くの女性が抱える共通した悩みなのかもしれません。

私は、この婚活女性の悩みで一番気になった点があります。それは、相手のことを“減点法”で見ているところです。つまり、欠点ばかりを見ているということです。

もし、婚活必勝法があるとすれば、相手の悪いところに視点をおいて粗探しをするのではなく、よい部分を重視する“加点法”を心がけることだと思います。

例えば、「お箸の持ち方はよくないかもしれないけど、すごく美味しそうにご飯を食べる、元気な人」「話にオチはないけど、この場を盛り上げようと頑張ってくれている、やさしい人」といった感じでしょうか。

特に、合コンという初対面の人との出会いの場では、どこを見るのかで、その時間の価値は大きく変わります。人のよいところだけを見るようにすると、よい出会いに気づき、その時間の価値が高まります。

さらに、自分がよいと思ったところを“ほめ言葉”で相手にきちんと伝えることをおススメします。つまり、ほめ言葉は心に留めておくのではなくて、どんどん相手に伝えたほうが断然よいのです。ほめ言葉にして相手に伝えれば、相手を喜ばせることができるだけでなく、自分も相手に対してさらに興味や好感を持てるようになります。

当然ですが、ほめられた相手も悪い気はしませんし、あなたに対しても興味や好感を持つようになり、今度はあなたのよいところを見つけてほめてくれるようになります。

このように、人の“よいところだけ”を見るようになると、自分の周りはいい人だらけになり、人間関係のストレスを一気に軽減できます。

●効果抜群のほめ方とは?

私が担当するコミュニケーションをテーマにした企業研修でも、ほめ言葉を相手に伝えることの大切さをお伝えしています。相手を言葉できちんとほめるようにすると、仕事をしていくなかで周囲の人とよい関係を築けるようになります。ただ、研修後に受講者から「お話はわかりますが、毎日ほめるのは難しいと思います」と、ご意見をいただくことが少なくありません。

私もそうだと思います。仮に、毎日1個ずつ相手をほめようとしても、そう長くは続かず、そのうちにほめるネタが尽きてしまうでしょう。ほめるネタに困り、自分が思ってもいないことを無理やりほめ言葉として伝えても、それはほめ言葉ではなく、単なるおべんちゃらです。心にもない言葉はどうしても軽くなり、ほめられた本人にもまったくと言ってよいほど響きません。

そこで、毎日ほめ続けなくても、1回のほめ言葉で相手と良好な関係を築ける、コミュニケーションの伝家の宝刀とも言える効果抜群の方法があるので紹介します。

それは“自分が受けた影響力”を、ほめ言葉として伝えるという方法です。

相手のよいところを見つけて、それをそのままほめるのではなくて、よい部分を見て自分がどんな気持ちになったのかを伝える、“究極のほめ方”なのです。

例えば、職場でいつも元気で明るく大きな声で爽やかに「おはようございます!」「ありがとうございます!」と、挨拶や感謝の言葉を周囲に伝えている新入社員の男性がいたとしましょう。彼に対して、ほめるとしたら「いつも元気で明るい」「挨拶や感謝の言葉をしっかり伝えられてよい」といった言葉をかけることが考えられます。でも、これだけでは不十分です。ほめ方が上から目線だからです。

そこで、この新入社員の行動を受けて、あなたがどう感じたのか、自分の気持ちをさらけ出してほしいのです。つまり、自分が受けた影響をほめ言葉にしてもらいたいのです。例えば、次のようなほめ言葉を伝えてみましょう。

「〇〇君が、元気で明るく大きな声で爽やかに挨拶して、周囲の人に感謝しながら仕事をしている姿を見て私まで元気をもらっています。私自身が明るい気持ちにさせてもらっています」

どうでしょうか?

ポイントは、「私まで元気をもらっている。明るい気持ちにさせてもらっている」というように、相手のよい部分の影響を受けて自分の気持ちを素直に伝えているところです。こうすれば、上から目線のほめ方にもなりませんし、リスペクトの気持ちが伝わります。

こうした自分が受けた影響を表す言葉が特によい点は、ほめられたほうがものすごく嬉しい気持ちになることです。なぜなら、人間は、自分が相手にどれだけ影響を与えたかを知りたい生き物だからです。先ほどの新入社員の男性からすれば、「そうか、私の行動で目の前の人に元気と明るい気持ちを与えることができている」と、とても嬉しい気持ちになるわけです。

また、「こんなに人に喜んでもらえるなら、挨拶や感謝の言葉をもっと大切にしよう」と考えて、自らの成長意欲が高まることでしょう。

人は、ほめられて自分の長所に気づき、自信を持てるようになるのです。

損する言い方 得する言い方
谷厚志(たに・あつし)
怒りを笑いに変えるクレーム・コンサルタント。一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事。クレーム評論家。1969年、京都府生まれ。近畿大学卒業後、広告会社の営業マンを経て、旅行会社のコールセンター、お客様相談室で責任者として2,000件以上のクレーム対応に従事。一時はクレームによるストレスで出社拒否状態になりながらも「クレーム客をファンに変える対話術」を確立する。現在は独立し、クレームで困っている企業などのために全国でコンサルティング活動を展開、具体的なクレーム対応法をアドバイスしている。圧倒的な経験知と人を元気にするトークが口コミで広がり、年間200本以上の講演・研修にも登壇する。最近はテレビ番組のコメンテーター、著名人のトークショーのナビゲーターとしても活動している。著書に『どんな相手でもストレスゼロ! 超一流のクレーム対応』(日本実業出版社)、『「怒るお客様」こそ、神様です! 』(徳間書店)、『ピンチをチャンスに変えるクレーム対応術』(近代セールス社)、『失敗しない! クレーム対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)