100%再生可能エネルギーを利用して事業活動を行うことを目標とする「RE100」という企業連合があります。
原子力発電や火力発電に頼らない社会を実現するためには、加盟企業以外にも多くの企業が再生可能エネルギーの普及に取り組む必要があります。今回は、RE100加盟企業のなかから投資会社と金融機関の取り組みを紹介します。
RE100の概要と日本の取り組み状況
「RE100」のREは再生可能エネルギー(Renewable Energy)のことを指し、100は事業活動に利用するエネルギーがすべて再生可能エネルギーであることを表します。2014年に、国際環境NGOのThe Climate Groupが主体となって開始された国際的な企業連合です。
2021年6月現在、日本企業は55社が加盟しています。それぞれの会社が再生可能エネルギー100%を達成する目標年を明確にし、達成に向けて努力しているのが特徴です。
「環境省RE100」は何を目標にしているのか
RE100でどのような目標を立てるかは環境省の取り組みが参考になります。国としては環境省が2018年6月に公的機関として初めてRE100にアンバサダーとして参画しており、「環境省RE100」を達成するための行動計画を策定しています。2020年度の取り組み内容は以下のとおりです。
- 既に再エネ30%の電力を調達している新宿御苑において、再エネ100%の電力を調達する。
- すべての地方環境事務所管内で再エネ100%の電力調達に向けた取組を開始する。
- 国立水俣病総合研究センターなど電力消費量の多い直轄施設について、より安価な電力を調達できる共同調達を試行し、これらの施設での2021年度における再エネ100%の電力調達の可能性を探る。
RE100事務局が推奨する中期目標は、2020年30%、2030年60%、2040年90%で、最終的には2050年に100%を目指すとしています。
出典:環境省公式サイト
RE100目標達成には何が必要か
RE100の社会を実現するには、中小企業も含め各社が目標年度を定めて取り組むことが大事です。「2050年までに自社の消費電力を100%再生可能エネルギーで賄う」などと表明することで達成に向けて社員のモチベーションが上がります。また、電力需要が逼迫すると原発新増設の必要性が問われる恐れがあるため、節電や省エネに協力することも重要です。
もちろん目標達成には予算も必要です。太陽光発電設備等の再生可能エネルギーを生産する設備を導入する際は、国や地方自治体から出る補助金を活用することができます。環境省や東京都で公募を実施しているので、応募を検討するとよいでしょう。
RE100には工場で大量にエネルギーを消費するメーカー(製造業)が多く加盟していますが、RE100の活動が普及するにつれて、メーカー以外にも加盟する企業が増えています。今回紹介する投資会社・金融機関のほかにも、不動産、流通、飲食、建設など非製造業にもすそ野が広がっているのは喜ばしい限りです。
投資会社と金融機関はどんな取り組みをしているか
RE100に加盟している投資会社と金融機関はどのような取り組みをしているのか、各社のホームページを参考に見てみましょう。
野村総合研究所
野村総合研究所(NRI)は、証券業最大手野村ホールディングスのシンクタンクです。同社の特徴は多くのイニシアチブに参加していることです。RE100のほかにも、「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」ことを宣言する「気候変動イニシアティブ」、CO2削減に取り組む自主行動計画「JISA低炭素化社会実行計画」、産業界のリーディングカンパニーのCEOが率いる国際経済団体「持続可能な開発のための世界経済人会議」などに加盟しています。
証券系企業らしい取り組みとしては、2016年にNRIグリーンボンド「株式会社野村総合研究所第3回無担保社債」を発行しています。「NRIのグリーン投資の実践と国内のグリーン投資活性化を促し、持続的な未来社会をリードすることを目的」(公式サイト見解)として発行したものです。
アセットマネジメントOne
アセットマネジメントOneは、投資信託の販売を中心とする投資運用会社です。2019年に投資運用会社として初めてRE100に加盟しました。投資運用会社としての取り組みとしては、ESG投資を運用プロセスに取り込んでいます。
ESG投資の基本的な考え方は、「ESGを投資分析に活用し、顧客の中長期的な投資収益の拡大を目指す」「SDGsの課題解決に貢献する」「リスク抑制の観点だけでなく、事業機会拡大の観点を重視する」の3点を柱にしています。
また、責任投資の推進体制にも力を入れており、責任ある機関投資家の諸原則「日本版スチュワードシップ活動」を受け入れています。同社では2018年から「スチュワードシップレポート」を発行し、ESG投資への取り組みに関する詳しい内容を紹介しています。
城南信用金庫
城南信用金庫は、預金残高で信用金庫業界2位。約3兆7,000億円(2020年3月末時点)の預金残高を誇るメガ信用金庫です。城南信用金庫は「原発に頼らない安心できる社会」の方針を掲げ、「みんなのソーラーシェアリング広場」という活動を展開しています。ソーラーシェアリングは「耕作地の上に太陽光パネルを設置して、1つの土地で農業と発電事業をシェアする取り組みで、農業の経営安定と自然エネルギーの普及を両立させるシステム」(公式サイト見解)です。
SDGsへの取り組みも積極的で、17の目標のうち16の項目に関する活動を行っています。たとえば、ゴール2の「飢餓をゼロに」に関しては、賞味期限が近い非常食を貧困地域等に提供しています。また、ゴール7の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」では、「節電プレミアムローン・エナジーシフト」を取り扱い、地方自治体が発行する環境債「グリーンボンド」に投資を行っています。
第一生命保険
第一生命保険は、保有契約高で業界2位の生命保険大手です。RE100のほかに、機関投資家の立場から気候変動問題への取り組みを企業に促す「Climate Action 100+」にも参加しています。両方のイニシアチブ への参加は生命保険業界では初めてです。気候変動問題への取り組みに積極的で、2013年には清水建設が事業主体となる兵庫県赤穂市で行う「大規模太陽光発電プロジェクト」へのファイナンスを実施しました。
また、2019年には日比谷本社のすべての電力を、CO2を排出しない水力電力を使った電力メニューに切り替えを行いました。この取り組みにより、年間約3,600トンのCO2排出量の削減につながります。こちらも銀行・生命保険業界では初めての取り組みです。
参考:各社公式サイト
真似したい取り組みはどれ?
今回のなかで真似したいのは城南信用金庫のSDGsに対する取り組みの姿勢です。普通は17の目標のうち、自社の事業と親和性が高い項目で目標を立てるものですが、城南信用金庫は項目を特定せず16項目にわたり目標を立てています。日常の企業活動のなかで、SDGsに貢献できるものがあれば積極的に取り入れていく姿勢は見習うべきものがあります。ぜひ自社の取り組みにも活かしたいものです。
もう1点、城南信用金庫は公式サイトで「脱原発」の立場を明確に表明していることも評価できます。表明しているだけでなく、本支店(9拠点)の屋上等にソーラーパネルを設置するなど、具体的な再エネ普及活動も展開しています。
RE100を目標年度までに達成することは簡単なことではありません。予算の問題、人材の問題、自社事業との親和性の問題など検討すべき課題はたくさんあります。まずはRE100の目標策定に向けて社内にワーキンググループを立ち上げるのも有効な方法です。
(提供:Renergy Online )
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