新電力に切り替えれば経費削減になると聞いても、新しい会社に任せて大丈夫なのか不安に感じる方もいるでしょう。しかし本当に電気代の削減になるなら、早く切り替えた方が企業のメリットは大きいはずです。

さらに今後は契約する電力会社によって、企業価値が変わる時代になりつつあります。本記事では新電力のメリット・デメリットを紹介し、具体的な依頼先の選び方を解説します。

新電力とは

経費削減に効果あり。法人が高圧電力を新電力に切り替えるメリットと選び方
(画像=AndreyPopov/stock.adobe.com)

2000年3月、特別高圧部門から始まった電力自由化により、電力の小売りへ新たな事業者が参入できるようになりました。この新しい事業者が「新電力」です。また以前からある、東京電力や関西電力のような電気事業者は「旧一般電気事業者」と呼ばれています。いずれも枠組みは小売電気事業者になります。

新電力に切り替えるメリット

現在は家庭や個人商店など小規模なところ(2016年〜)から、大型の工場や商業施設、オフィスビル、病院など法人まで、自由に電力会社や料金メニューを選べます。実際に新電力に切り替えると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

電気代を削減できる

新電力に切り替える最大のメリットは、電気料金が安くなることです。自由化により複数の新電力が電力小売市場に参入し、競争によって各社がさまざまな電気料金プランを用意するようになっています。電力の使い方に最適なプランを選べば、電気代を削減できる可能性は十分にあります。

事務処理をまとめられる

電力自由化以前は、東京電力や関西電力など電力会社が異なる地域に支店や工場があると、法人は別々に契約や経費処理を行っていました。しかし新電力の中には、広範囲に電力を供給しているところもあります。

法人側の条件が合えば契約先を1社にまとめられ、事務処理の時間短縮や人件費削減が実現できます。

新電力に切り替えるデメリット

企業にとってコスト削減は大きな魅力ですが、一方で注意しておきたいデメリットもあります。

契約先やプランの検討が難しい

新電力がいくつもあるうえに複数の料金プランが用意されているため、自社に最適な契約先やプランを探すのが難しいこともあります。また安い電気料金にするには、ネット回線の契約を結ぶなどいくつかの条件をクリアしなければならないプランもあります。

間違った選択をしてしまうと、期待したようなコスト削減ができなかったり、以前より電気料金が上がってしまったりすることも考えられます。新電力にはできる限りわかりやすい説明や資料を求めるようにし、十分に理解したうえで契約先を決定するようにしましょう。

アフターサービスの質に差がある

新規参入で急速に数の増えた新電力ですが、設立して間もない会社も多いためアフターサービスの質に差があるかもしれません。電力供給に不具合があったときに、迅速に対応してくれるかは第一に確認したい部分です。

また契約後に、電気料金をさらに抑える方法を考えたり、支店の拡大などでプランを見直したりなど、相談したいことが出てくるかもしれません。そのときに親身になってサポートしてくれるかは非常に大切です。

新しい企業の多い新電力は、契約後のアフターサービス体制も十分に確かめたうえで選ぶようにしましょう。

契約内容に注意が必要

新電力の契約の中には、一度契約すると自由に他社へ乗り換えができないものもあるため注意が必要です。手頃な料金プランを提供する代わりに契約期間に縛りがあったり、解約するには高額な違約金が発生したりする契約もあります。

比較するときはつい料金に目が行きがちですが、解約や条件の変更などに制約がないかもしっかり把握してから契約するようにしましょう。

新電力の電力供給は安定している

新電力の電力供給は不安定ではないか、停電が頻繁に起きないかと不安に思われるかもしれません。しかし多くの新電力で発電は東京電力などが行い、送電や配電も既存ものを使います。このため新電力に切り替えたとしても、電力供給の安定性は今までと変わりません。

また新電力が倒産や撤退をしても、すぐに電気が止まることはありません。利用者が新たな契約先を見つけるまでは、地域の旧一般電気事業者から一般的な料金プランで電力供給を受けられます。新電力に変えたとしても、電力供給の面で大きな心配はないと言えます。

新電力を選ぶ基準

新電力を選ぶ基準は、前述のデメリットがどれくらい解決されているかを目安にしましょう。まずプランの内容がしっかりと理解でき、自社が明確にメリットを得られることが大前提です。

アフターサービスは、不具合があったときだけでなく事業所の拡大や移転などプランの見直しをしたいときにも、丁寧に相談にのってくれる相手を選ぶべきです。また後々のトラブルを避けるため、契約期間や解約に過剰な条件が設けられていないかも確かめましょう。

さらに今後は、どのようなエネルギー源で電力を供給しているかも新電力を選ぶ基準にすべきです。新電力の中には、石油燃料や再生可能エネルギーなど電力供給方法の割合を示す「電源構成」を公表しているところがあります。

自社のCO2削減に対する取り組み姿勢を示すためにも、できる限り再生可能エネルギーの構成比が高い新電力を選ぶようにしましょう。

既存の電力を使い続けるリスク

現在は世界中の大小さまざまな企業が、地球温暖化を防ぐため石油燃料などCO2を排出するエネルギーから再生可能エネルギーへ転換しています。こうした流れに逆行する、大量にCO2を排出する火力発電が主力の日本の既存電力を使い続けることは、世論の批判を受け企業価値を落とすリスクがあります。

最近では三菱商事がベトナムの石炭火力発電所に出資し、国内外から多くの批判を浴び出資を撤回する事態になりました。これは出資というケースですが、現在は企業本体の事業以外でも脱炭素への取り組み姿勢が問われることを示しています。

企業融資が受けにくくなる

さらに国内企業へ事業融資する金融機関も、融資先企業の脱炭素への取り組みに厳しい目を向けています。融資先がどのようなCO2削減の活動をしているか、金融機関に対し明確な説明を求める海外の機関投資家が増えているからです。

「CO2削減は大企業のやること」と傍観し脱炭素への取り組みを怠ると、これからは企業融資を受けにくくなると考えられます。新電力への切り替えや再生可能エネルギー施設の整備を検討しない企業は、存続すること自体が厳しくなる時代になってきているのです。

今後の日本の流れを先取りする

日本は温室効果ガスを、2030年までに2013年度比で46%削減すると表明しています。46%削減は非常に高いレベルの目標であるため、これから大小さまざまな企業がCO2削減を強く求められるはずです。政府としては、太陽光発電を中心に再生可能エネルギー施設の拡大を強力に推し進めていく計画です。

これから2030年が近づくにつれ、太陽光発電の需要はますます高まると考えられます。また再生可能エネルギー比率の高い新電力は人気となり、現在の手頃な料金プランが改定されるかもしれません。そうした流れが表面化する前のできるだけ有利な条件のうちに、CO2削減への策を実行すべきでしょう。

切り替えは大至急検討すべき

法人としてどのタイミングで新電力に切り替えるかは、さまざまな要因で判断されると思います。しかしお伝えしたように世界的な脱炭素の流れや、2030年の温室効果ガス46%削減まで待ったなし現状を考えると、特に再生可能エネルギー比率の高い新電力への切り替えは大至急検討すべきです。

危機感を持つ企業は、電力切り替えはもちろん自社での再生可能エネルギー設備の採用にも積極的に動き出しています。経費削減も法人にとって大切なことですが、時代の流れに合った新電力を選び企業価値を向上させることも視野に入れるべきでしょう。

(提供:Renergy Online



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