中南米エルサルバドル が、中央銀行発行の独自のステーブルコインを水面化で検討していることが判明した。16日、現地メディア・El Faroが報道した。
報道によると、エルサルバドルが検討中のデジタル通貨は、「コロン・ドル」と名付けられ、米ドルにペッグしたステーブルコインである。同国政府は、このコインを年内に立ち上げることを計画しているという。
既報の通り、エルサルバドルはNayib Bukele大統領主導の下、6月に世界初となるビットコインの法定通貨化法案が可決された。9月7日から、米ドルに次いでビットコインが正式に2つ目の法定通貨として認められることが決定している。
すでに同国ではビットコイン法の承認後に、政府発行の暗号資産(仮想通貨)ウォレットの作成や、ウォレットの使用を奨励するために政府が国民1人あたり30ドル相当のビットコインを支給することが発表されている。
一方で、El Faroの報道によると、大統領の兄弟であり最側近のアドバイザーであるIbrajim Bukele氏とYusef Bukele氏が2年前から米ドルにペッグしたステーブルコインの発行を念頭にプロジェクトが進められていた模様だ。
同紙によるとビットコイン法が可決された後も、同国では独自のステーブルコインを立ち上げる計画はそのまま継続した。
エルサルバドルは、自国の法定通貨の価値が不安定であることから、2001年に経済政策の一環として法定通貨に米ドルを導入した。
しかし、米ドルを導入したことで自国通貨の発行権が失われてしまったことから、中央銀行から独自のステーブルコインの発行を検討していたという。
また政府の計画には、ステーブルコインの発行で通貨のデジタル化の普及と同時に、ブロックチェーン技術を使用することで個人のIDカードから不動産証書まで、広範囲の公的・私的文書のデジタル化も視野に入れているようだ。
エルサルバドルがビットコインを法定通貨と認める法案が可決されて以降、インフレに悩む中南米国家の政治家から支持する声や同調の動きが広がったが、世界的には懸念が広がっている。
世界銀行や国際通貨基金(IMF)は、マネーロンダリングや脱税を助長するタックスヘイブンになる危険性があることなどから、政治、経済面から反対の姿勢を示した。国際決済銀行(BIS)も、ボラティリティが高く、価格が安定しないビットコインを決済手段として認めることはできないと表明した。
また日本政府も1日、エルサルバドルが扱うビットコインは「外国為替」に相当せず、「暗号資産」に該当するとの見解を示している。
今回のエルサルバドルによる中央銀行発行の独自ステーブルコイン計画が順調に進めば、ビットコインと並行して国内で普及する可能性もあるが、世界がどのような反応を示すか注目される。(提供:月刊暗号資産)