住宅ローンアドバイザーが教える住宅ローンの返済額を賢く軽減する方法
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住宅を購入する際は、金額が大きいことから住宅ローンを組んで返済をしていく方が多いのではないでしょうか。とはいえ、住宅ローンの返済は長期間にわたるので、現在のような低金利であっても利息支払い分だけでも相当な額になってしまいます。そこで、元本部分と利息部分を含めた住宅ローンの総返済額を軽減する方法を解説いたします。

目次

  1. 繰上げ返済のポイントと注意点
    1. 一部繰上げ返済には2種類のタイプがある
    2. 一部繰上げ返済のタイミングに注意
  2. 返済期間を延ばすためのポイントと注意点
    1. 審査のポイントは収入の変化やローン状況など
    2. 返済期間が延びると利息の支払いも増える
  3. 住宅ローンの借り換えのポイントと注意点
    1. 住宅ローン借り換えのタイミングと団信の扱い
    2. 住宅ローン借り換えの際には削減効果を試算する
  4. 賃貸併用住宅にリフォームするためのポイントと注意点
    1. 自宅スペースが50%以上あれば低金利でローンが借りられる
    2. 賃貸併用住宅でのローン審査は通常より厳しい傾向に
  5. FPなどのお金の専門家に相談しよう

繰上げ返済のポイントと注意点

住宅ローンの繰上げ返済とは、毎月の返済とは別に、まとまった金額を返済することです。繰り上げ返済の効果は、まとまった金額を元本部分の返済にあてることで、それに対する利息分の支払いを削減することができ、最終的な総返済額の削減に結びつけることができることです。

繰上げ返済には、「一部繰上げ返済」と「全部繰上げ返済」があります。一部繰上げ返済においては、手数料を無料としている金融機関が多く見られますが、全部繰上げ返済の際には手数料がかかるケースが多いことを覚えておきましょう。

また、全部繰上げ返済を行う際には事前に連絡を必要とする金融機関もありますので、繰上げ返済を行う際には、自分が借りている金融機関の公式サイト上で必要な手数料や事前連絡の有無などを確認しておくようにしてください。

一部繰上げ返済には2種類のタイプがある

一部繰上げ返済を行う際には、以下の2つのタイプのどちらかを選択する必要があります。

  1. 期間短縮型
    期間短縮型とは、毎月の返済額を変えずに、繰上げ返済した分だけ返済期間を短くするものです。

  2. 返済額軽減型
    返済額軽減型とは、一部繰上げ返済を行う際に、返済期間は変えず、繰上げ返済を行った分だけ毎月の返済額を減額するというものです。

毎月の返済の支払いが苦しく、返済額を少しでも軽減したいと思うのであれば、「返済額軽減型」を選ぶこととなりますが、同じ繰上げ額であれば、「返済額軽減型」よりも「期間短縮型」のほうが最終的な利息軽減額は大きく、総返済額についても削減効果が高いといわれています。

一部繰上げ返済のタイミングに注意

住宅ローン控除の適用を受けている間であれば、繰上げ返済を行うベストなタイミングは1月です。なぜなら、住宅ローン控除額の計算の基となる年末時点の借入残高をできるだけ多くしておいたほうが、控除の適用を受けて還付される税金額も大きくなるからです。

とはいえ、現在の低金利の状況下では繰り上げ返済額や住宅ローンの契約形態にもよりますが、住宅ローン控除適用期間内に繰り上げ返済を行うよりは、住宅ローン控除の適用が終わった後のタイミングで繰り上げ返済を行うほうが効果的といえるケースもあります。

したがって、繰上げ返済を行う際には各金融機関の公式サイトに用意されているシミュレーションサイトなどを利用して、いつ繰り上げ返済を行うのがベストなのかを判断するようにしましょう。

返済期間を延ばすためのポイントと注意点

現在利用している住宅ローンの返済期間を延ばすことにより、毎月の返済額を削減することもできます。ただ、このような条件変更は誰でもできるわけではなく、まずは利用している住宅ローンを扱っている金融機関に相談する必要があります。

公式サイト上で条件変更の受付を可能と掲示している金融機関もありますが、どの金融機関においても条件変更を希望する事情を説明し、変更ができるかの審査を受ける必要があります。審査期間については、1~2週間程度を考えておくとよいでしょう。

また、フラット35を利用中であれば、住宅金融支援機構の「返済特例」を受けることができます。要件を全て満たすことで、最長15年(完済時の年齢が80歳となるまで)の延長を認めてもらうことが可能です。

審査のポイントは収入の変化やローン状況など

返済期間を延長する際の審査では、「新規申し込みから収入などの状況が変わっていないかどうか」を確認します。申込時よりも収入が少なくなっていたり、他の借り入れ(車のローンや教育ローンなど)が新たに発生していたりする場合は、返済能力が新規申込時よりも劣っているとみなされ、返済期間延長が認められないこともあります。

返済期間が延びると利息の支払いも増える

「返済期間を延ばすということは、その間の利息の支払いが増える」ということをしっかりと理解しておきましょう。また、返済期間の延長により、完済時期が退職時期を超えてしまうと、主な収入源が公的年金のみになってしまうことから、収入がある時期と比べて返済が苦しくなることが予想されます。

返済期間を延ばすことを考える際には、延長することによりどのくらいの利息負担増になるのか、そして完済までの返済計画をしっかりと立てておくことが大切です。

住宅ローンの借り換えのポイントと注意点

住宅ローンの返済負担を削減する目的でよく利用されるのが、住宅ローンの「借り換え」です。住宅ローンの借り換えとは、それまで借りていた金融機関の住宅ローンの残高分を借入れして完済し、それから金利の低い新たな金融機関にて住宅ローンを返済していくことをいいます。そうすることによって、利息分の削減と総返済額の削減効果を得ることができます。

住宅ローン借り換えのタイミングと団信の扱い

住宅ローンの借り換えを検討している場合には、次に説明するポイントを理解しておきましょう。

  • タイミングが早いほど高い効果を得られる
    住宅ローンの借り換えにおいて、メリットが出るのはまず借入残高が1,000万円以上あること、そして残りの返済期間が10年以上あることです。つまり、借り換えを行う場合は早ければ早いほどその効果を得ることができるといえます。

  • 団信の保障を手厚くする
    一般的には現在の金利よりも低い住宅ローンへの借り換えを行いますが、その際には合わせて団体信用生命保険(団信)の保障を手厚くすることも考えましょう。団信のプランについては各金融機関で異なりますが、最近では死亡や高度障害以外にも、特定の疾病に罹患した場合や、働けなくなった際に返済を保障してくれるプランも出てきています。

保障の内容が手厚くなればなるほど、金利の上乗せが発生するケースが多いことから、最終的な金利がどのくらいになるのかを考えながら、自分の現在加入している生命保険とのバランスも含め、団信の内容を見直すことも借り換えの際のポイントといえます。

  • 完済後を見据えて団信と生命保険のバランスをとる
    ただ、ここで注意していただきたいのは、「団信の保障は完済時点で終了する」ということです。いくら団信でカバーできるからといって、団信に比重をかけすぎると、完済後の自身の保障がないという事態を招くことになります。

完済後に生命保険の見直しをすればいいと思うかもしれませんが、生命保険の保険料は年齢が高くなるにつれ上がっていきますし、完済後の体況によっては生命保険に加入できないことも考えられます。したがって、団信と生命保険のバランスについては完済後の保障もきちんと考えて決めるようにしてください。

住宅ローン借り換えの際には削減効果を試算する

住宅ローンの借り換えの際には、新規借り入れの際と同様に審査を受ける必要があります。したがって、最初に借り入れたときよりも収入などの状況が悪くなっていたり、直近に大きな病気をしたなどで団信に加入できない健康状態であれば、借り換え自体ができないということになります。

また、借り換えの際には新規時と同様に諸費用(事務手数料や登記に関する手数料など)がかかります。諸費用の額については金融機関や借り入れる額によって異なりますし、その費用を借り換え後の住宅ローンに含めることができる金融機関もあればできない金融機関もあります。

したがって、借り換えを行うことによってどのくらい総返済額の削減効果があるのか、諸費用を含めて判断することはもちろんのこと、借り換えの諸費用がいくらかかるのかについても事前にシミュレーションサイトなどで把握しておきましょう。

賃貸併用住宅にリフォームするためのポイントと注意点

現在お住いの住宅をリフォームし、賃貸併用住宅にしようと考える方もおられるでしょう。賃貸併用住宅にすることで家賃収入を得ることができ、それを住宅ローンの返済にあてることができる点が魅力となっています。

自宅スペースが50%以上あれば低金利でローンが借りられる

通常、賃貸用の住宅に対して住宅ローンを利用することはできず、アパートローンや不動産投資ローンの対象となりますが、リフォーム後の賃貸併用住宅における自宅スペースが50%以上あれば、住宅ローンの適用対象となります。

アパートローンや不動産投資ローンは、住宅ローンと比べて金利が高く、また不動産投資ローンにおいては返済期間が短く設定されているものが一般的です。

したがって、「住宅の面積のうち50%以上を自宅スペースとする」という要件にあてはめ、住宅ローンを利用することで、低金利で借りることができ、かつ家賃収入を返済にあてることができるというメリットは十分に活用すべき点であるといえるでしょう。

賃貸併用住宅でのローン審査は通常より厳しい傾向に

賃貸併用住宅の場合、自宅だけの住宅と比べると水回りなどの設備が多くなることから、借入額も多くなる傾向にあります。借入額が多くなるということは、その分返済能力に対する審査も厳しくなることを覚えておきましょう。

さらに家賃収入を返済にあてるのであれば、空室リスクも考慮しておく必要があります。周辺地域の賃貸需要や立地条件などを事前にしっかりと調査し、空室の期間をできるだけ少なくするような努力が必要となります。

返済計画を立てる際には、満室状態で考えるのではなく、空室があった場合のことを考え、ある程度の余裕を持った計画を立てることを心がけましょう。

FPなどのお金の専門家に相談しよう

住宅ローンの返済額を削減する方法にはさまざまなものがあります。しかし、今後の金利の情勢や、自身のライフイベントなども考慮する必要があることから、どの方法を選ぶかを自分だけで決めるのはなかなか難しいものです。

その際にはファイナンシャルプランナーなどのお金の専門家に相談し、アドバイスを仰ぐことをおすすめします。専門家のアドバイスを仰ぐことで、自分では気づかなかった問題点に気づくこともたくさんあるでしょう。

それらの問題点をきちんと把握し、解決策も考えた上で、自身の老後資金や子どもの教育資金の形成手段も考慮しながら最適な住宅ローン返済額の削減方法を選ぶようにしましょう。

(提供:タツマガ

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