本記事は、はっしゃん氏の著書『普通の会社員でも10万円から始められる! はっしゃん式 成長株集中投資で3億円』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています
月次情報は投資情報の宝庫
銘柄探しは、四半期ごとの四季報をもとに行います。しかし、企業や社会の状況はつねに変わり続けるもの。四半期の間にも、新しい成長株が現れる可能性は十分あります。
そこで、成長の兆しをより早く見つけたいときに使えるのが「月次情報」。毎月の売上などを速報として公開しているもので、企業のWEBサイトに掲載されています。
月次情報は、すべての企業について手に入るわけではありません。公開している上場企業は現在277社で、そのほとんどは小売業やサービス業です。
探せる範囲は限られますが、タイムリーに業績を把握できる点で大変便利なので、四季報と併せて活用していきましょう。
●月次情報のポイント
月次情報にはいくつか項目がありますが、ポイントになるのは月次売上の数字です。
(1)既存店売上
月次売上には、「全店売上」と「既存店売上」の2つがあります。全店は文字通り全国すべての店舗。そこから、オープンから1年くらいまでの新店を除いたのが既存店です。新店は自然と人が集まり売上が高くなるので、より正確に実態を把握できるよう分けて記載されています。
ですから、新店を抜いた既存店売上が前年同月比100%を超えたときは、基本的に業績好調と見ていいでしょう。逆に100%を大きく下回る、あるいは100%割れが連続しているときは赤信号です。100%を超えた場合でも、前月から数字が大きく低下した場合は黄色信号かもしれません。
また、店舗営業を中心とする小売業やサービス業では、テナント代や人件費といった固定費がかさみます。既存店売上がマイナスだと、全店売上がプラスでもトータルの利益はマイナスになっている可能性があります。しっかり見ておきましょう。
(2)全店売上
全店売上も、前年同月比100%を超えていればOKです。
ただし一見好調に見えたとしても、市場の予想を下回ると期待値に届かず、株価が下がってしまうこともあるので注意してください。
市場の予想はさまざまな要素で動きますが、四季報予想や決算書の会社予想(後述)がコンセンサスになります。全店売上は四季報や決算書に載っている売上と対応する数字なので、比較して進捗を確認しましょう。
●月次情報から成長株を見つける方法
普通の株が成長株へと伸びていく様子は、月次情報からも読み取ることができます。月次売上に表れる変化は、おおむね次の3段階。
(1)成長の初動 :前年同月比100%割れが続く状態から、100%超えへと転換
(2)低成長からの加速 :前年同月比100%→110%→120%と、%くらい数字が上ブレ
(3)高成長入り :前年同月比130%以上
(1)(2)(3)状態であれば、成長株と見なすことができます。ただし1「成長の初動」に見えたものが実は一時的な好調である場合や、3「高成長入り」をしていてもすでに人気化していて購入には適さない場合もあるので注意しましょう。
こうして月次情報から成長株をピックアップしたら、四季報速読と同様に株価と業績推移を確認していきます。一般的には、月次売上が好調で「高成長入り」している企業ほど株価は右肩上がりとなり、増収増益傾向になるでしょう。逆に「成長の初動」段階にある企業は、まだ株価や業績の動きが少ないかもしれません。
●月次情報で成長株の業績変化を先取りする
図2-1は、全国で子ども服店を展開している西松屋〈7545〉の株価と月次売上の推移です。
2019年の既存店売上は、100%を前後する横ばい状態。しかしコロナショックが起きた2020年、流れは変わります。
百貨店や大型ショッピングモールが外出自粛のあおりを受けて営業休止となり、郊外型ロードサイド店が中心の西松屋に追い風が吹いたのです。
同年2月には既存店売上が112.6%、2020年3月には121.3%と成長が加速しています。成長の3段階のうち、2「低成長からの加速」に当てはまりますね。
しかし、業績が好転しているにも関わらず、3月には株価が623円と期間安値を記録しています。これは当時、市場全体がコロナショック暴落の影響を受けていたためです。
その後、既存店売上110%前後の好調が続いていくうちに株価も追いついていき、月には1864円にまで上昇しました。徐々に業績も落ち着いていきますが、株価はしばらく高値圏で推移しています。
月次情報を読むことで、株価に表れていない成長の兆しにも気付くことができるのです。
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