中村 太郎(なかむら・たろう)
税理士・税理士事務所所長。中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。
株主の権利や税務に関わる言葉として利益供与がある。正しく理解していないと、刑事責任の発生や税務上のトラブルに発展しかねない。今回は、会社法と税務の観点から利益供与について会社が注意すべきポイントをわかりやすく解説する。
利益供与とは
利益供与(りえききょうよ)とは、企業が関係者に対して何らかの利益を与えることをいう。企業活動を継続する上で欠かせない相手と、良好な関係を維持するために行われるものだ。
利益供与における「利益」には、物や金銭の他にも、会社として「何かをする・しない」といった経営判断などの役務提供も含まれるため、実に幅広い利益供与の形がある。
とは言え、多くの企業がまず思い浮かべやすいものといえば、取引先に対する販売促進のための利益供与や、自社の役員・従業員のモチベーションを上げるための表彰制度や福利厚生といった利益供与だろう。
例えば、日ごろの感謝を示すための交流会や、その功績を称えるための贈り物、慰労のための旅行や施設利用料金の補助などは、多くの企業が導入しているのではないだろうか。
利益供与は何か悪いことなのか?
会社からの利益供与のすべてが問題になるわけではない。しかし、その目的や相手によっては、罪に問われたり、税務上の問題が発生したり、コンプライアンスの問題によって会社の価値を損ねたりするリスクがある。
この記事では利益供与によって生じる問題を、会社法における問題、税務における問題、コンプライアンスの問題の3つに分けて解説する。