会社売却価格を相場より高める3つのポイント
会社売却では、売却価格を相場よりも高くしたいと考えるのが通常だ。買手の視点に立って売却価格を高めるポイントを3つ紹介する。
ポイント1.成長可能性
買手からすると、対象会社の成長可能性が極めて重要である。成長というのは、売上や利益、会社規模の拡大をさす。成長しなければ十分な利益を得られないため、投資をする意味がなくなってしまう。しかし、必ずしも対象会社だけの成長が求められるわけではない。
買手が対象会社と同様の事業を行っている場合、取得後のシナジー効果が期待できれば、全体としての成長につながるからだ。
ポイント2.生産性
買手が対象会社に対して初めに行うことは、決算書を過去3年程度見ることである。決算書によって対象会社の経営状況がある程度わかるからだ。
たとえば、貸借対照表の「固定資産」や「投資その他の資産」に、事業とは直接関係ないゴルフ会員権やリゾートマンション施設などの資産が含まれていないかを確認できる。また、「棚卸資産」に説明のできない在庫金額が積みあがっていないかも確認できる。
損益計算書では、役員報酬や地代家賃、交際費などが多額かどうかもわかる。目につきやすい項目から、無駄のある会社と無駄のない会社を判別できるだろう。
無駄のない筋肉体質の会社は生産性が高い。必然的に会社の売却価値が高くなる傾向がある。
ポイント3.組織力
会社の売却を期に、オーナーであった創業社長は一般的に退任する。しかし、社長がすべての経営判断を行ってきた会社も珍しくはないだろう。
買手からすると、創業社長が会社から抜けてしまうデメリットがある。たとえば、重要な取引先を失ったり、重要な幹部がいなくなったりして、会社が回らなくなってしまうという懸念を抱く。
創業社長に顧問という役職を与え、2~3年は会社に残ってもらう方法もあるが、やはり社長がいなくなった後の心配は尽きない。
したがって会社の売却価値を高めるためには、社長がいなくても回る組織を普段から作っておくことが重要だ。社長が朝から晩までオフィスに張り付いていなくても、各自の判断で適切に行動できる組織が理想だろう。
会社売却の注意点
買手は、買収時のみならず買収後のリスクも忘れてはならない。
会社組織には、創業当時からの従業員がいるほか、取引先との強力な信頼関係もある。しかし、新しくオーナーになった買手は、一から信頼関係を確認していくことになる。
通常は株式譲渡契約で、重要な取引先の取引継続や、重要な従業員の継続雇用を求める文言が記載されている。しかし、新体制の方針に反発する古参社員が大量に退職し、重要な取引先との契約に影響を及ぼすことも十分に考えられる。これらの可能性は、どのような契約でも完全に排除できない。
また、当初予定していた収益が得られるとも限らない。買収時の前提条件に変化がないかどうか、事業の推移をみていく必要がある。