府中スーパーマーケットとして創業してから60年以上の歴史を持つ、株式会社ハローズ。現在は、中国・四国及び近畿地方6県にまたがる瀬戸内商勢圏の主要都市で、365日24時間営業の食品スーパーマーケット『ハローズ』を展開している。

今期も出店攻勢を緩めることなく成長を維持しつづける同社だが、その背景を代表取締役社長の佐藤利行氏に伺った。

「買い物時間における究極のサービス」としての全店舗365日24時間営業――株式会社ハローズ
佐藤 利行(サトウ トシユキ)
株式会社ハローズ代表取締役社長
広島県出身。大東文化大学卒業。1971年ハローズ入社。1991年代表取締役社長就任。1994年、アメリカの大手SMで実施されていた24時間営業を現地で学び、当社に導入。24時間トータルオペレーションシステム、600坪型店舗のNSC化、製造・物流・販売の一括管理によるSCM構築などのビジネスモデルの確立により店舗網を拡大し、2021年9月現在全94店舗24時間営業中。長期ビジョンは「瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想」。

24時間営業とNSC化をきっかけに大きく成長

―まずは御社のビジネスや、その特徴をお聞かせください。

当社は現在、広島、岡山、香川、愛媛、徳島及び兵庫の瀬戸内沿岸部の瀬戸内商勢圏で、全店365日24時間営業の食品スーパーマーケット『ハローズ』94店舗を展開しています。もともとは広島県府中市で個人創業し、昭和33(1958)年に株式会社府中スーパーマーケットとして法人化。店舗の拡大に伴い、昭和63(1988)年にCI(コーポレートアイデンティティ)を導入するとともに、「ハイクオリティ&ロープライス」を語源としたハローズに社名を変更しました。

先ほど挙げた365日24時間営業を軸に、ハローズのビジネスモデルには、大きく3つの特徴があります。

特徴①:24時間トータルオペレーションシステム

株式会社ハローズ
(画像=株式会社ハローズ)

平成6(1994)年にハローズ引野店(広島県福山市)で導入したことをきっかけに、全店舗で365日24時間営業に取り組んでいます。当時は店舗面積が200~300坪で非24時間営業の小型店がメインでしたが、営業成績はなかなか上がらず苦戦していました。そうした中、ハワイのスーパーマーケット『Safeway』が24時間の店舗運営で好調だと業界紙の記事で知り、現地で視察の上、導入に至ったのです。

正直なところ、スタートの時点では、24時間営業にするとお客様の利便性が上がり売上が上がるという、短絡的な考えでした。すでにコンビニエンスストアは24時間営業を始めていたので、品ぞろえを充実させようと、青果や生鮮など相手にはないラインナップで迎え撃とうとしたわけです。ところが、深夜に刺身を買うお客様はなかなかおらず、この時間帯は商品を加工するのではなく、あるものを売っていくなど、試行錯誤しながら運営スタイルを変えてきました。今は、お客様の少ない深夜に商品の補充陳列や清掃を集中的に行うことで、昼間の混雑時もゆったりとお買い物ができるなど、オペレーションを見直すことでお客様の利便性を高めた店舗運営スタイルを構築しています。これを「買い物時間における究極のサービス」と当社では考えています。また、家庭内の事情により深夜に働きたいケースもあり、この営業形態は従業員のライフスタイルにも合わせた勤務を可能にしています。

24時間営業を支えるために、自社で24時間稼働の物流センターも運営しています。これにより、各店舗へ必要な商品を必要なだけ、必要な時間に安定的に供給することが可能です。また、配送業務を当社が管理することで中間コストが下がり、物流機能を集約することで配送コストも低減。加えて、店舗の配員計画に合わせた配送により店内作業コストの削減も図られ、品質管理においても商品の一括管理ができます。なお、物流センター内にはエコセンターを併設し、自社トラックが各店舗で回収したペットボトルや食品トレーなどをリサイクルしています。

そして、24時間店舗運営システムと24時間物流システムをつなぐのが、24時間情報システムです。商品の販売計画や受発注データ、販売データ、各店舗の配員計画を連携することで、お客様のニーズに合った新鮮でより良い商品を提供することができ、効率性を高めることができます。店舗運営、物流、情報の3つのシステムにより、買い物時間における究極のサービスを実現しているのです。

特徴②:600坪型のNSC(近隣購買型ショッピングセンター)

多店舗展開を始めたころは売場面積が300~400坪型の小型店がメインでしたが、現在は600坪型の大型店を主体として出店し、その割合は全店舗のうち約80%を占めています。次いで450坪型が15%で、300坪型は5%にまで縮小しました。店舗面積が広いことで豊かな品ぞろえが可能になり、適正数量の陳列や補充頻度の低減、在庫管理の改善により作業も軽減します。また、店内は前面ガラス張り、天井高5m、通路幅を広く取ることで開放感があり、お客様に気持ちよく買い物をしていただくこともできます。一周すると欲しい物が店内で調達することができ、複数の出入口を設けることで、青果が必要な時は青果側、惣菜を買いたいときは惣菜側というように、ショートタイムショッピングにも対応することが可能です。コロナ禍でも店内は三密にならず、安心・安全な買い物に寄与できたと考えています。

一方で、平成11(1999)年のハローズ神辺店(広島県福山市)にテナント3棟を新設したことを機に、NSC(近隣購買型ショッピングセンター)化にも力を入れています。これは、食品スーパーマーケットと来店頻度の近いドラッグストアや100円均一ショップ、クリーニングなどの業種、業態との複合化を図り、生活に密着したオープンモール型のショッピングセンターを作ることで、
お客様のワンストップかつショートタイムショッピングを実現するというものです。当初はスーパーマーケットを中心に助さん格さんというように「水戸黄門型」と呼んでいました。

特徴③:SCM(サプライチェーンマネジメント)

株式会社ハローズ
(画像=株式会社ハローズ)

本部・自社物流センターを中心に、「製造・産地開発」「集荷配送」「販売」を一括コントロールし、お客様に安心・安全・安価な商品を安定的に供給することも、我々の務めです。お客様の多様化するニーズを背景に、安全で安心かつ健康志向食品の充実を図り、商品の品質を下げることなく自助努力により商品価格を下げるための努力は惜しみません。適切な品質と低価格、安心・安全・健康をキーワードに国内のみならず世界のベストソースから調達・開発を行うPB(プライベートブランド)の「ハローズセレクション」がまさにそれで、売上高の11%を占めるまでに成長しています。日本では全国のスーパーマーケットが加盟の上、PB商品を開発・販売する供給会社がありますが、当社は自社開発しているのも特徴です。さらに近年は、核家族の増加や少子化などライフスタイルの変化に伴い、家庭料理に代わる調理済み食品の開発にも努めています。

30年をかけて人材の育成と出店に注力

―社長に就任なさって30年たちました。どういったことに注力してきたのでしょうか。

出店と人材の採用・育成に取り組んできました。チェーンストアの原理原則は出店であり、標準化された店舗の多さが売上につながります。当社の場合は、平成13(2001)年に岡山県に初出店してから600坪型のNSCが加速し、利益率が大きく向上しました。つまり、300坪型の小型店と600坪型の大型店のどちらかで年間売上20億円を目指すのかという時、我々は後者を選んだのです。300坪でそれだけ売るには人力が必要で、重い労働・労務負担を従業員が負わないといけませんが、広い店舗は品ぞろえの面で有利で、システム化することで効率的なオペレーションが可能になり、売上が上がります。かつ、システム化することで出店攻勢もかけやすくなります。こうしたことは、一つ一つ仮説を立て経験を通じてわかったことです。

―平成14(2002)年にJASDAQ市場に上場、平成27(2015)年に東証1部に市場を変更されています。何をきっかけに上場を意識したのでしょうか。

スーパーマーケットは人の採用が難しく、会社の信用力を高め人材を確保・育成しやすくするために、意識し始めました。事業規模が小さかった頃は従業員が確保できなかったため教育にも手が回りませんでしたが、上場して採用の課題がクリアできたからこそ、教育・育成を強化することができました。具体的には階層別(入社年度、職位、職務別)に合わせ知識教育と技能訓練をバランスよく行い、業容の拡大により新たなポストも生まれるので、体系的な教育訓練計画と計画的な配転を実施し、キャリアアップモデルと増加するポストを明示することで、自発的で挑戦的な意欲を醸成しています。資金調達もさることながら、上場したことで組織・人材開発がすすめられたことは大きいと考えています。

長期ビジョン「瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想」に向けさらなる躍進

株式会社ハローズ
(画像=株式会社ハローズ)

―佐藤社長の普段の学びについてお教えください。

最大の勉強は、日々の営業活動です。その中から何かを見出し、吸収する姿勢を大切にしています。また、日本リテイリングセンターのチェーンストア研究団体のペガサスクラブに入会し、チェーンストアの原理原則を学んでいます。仕事だけでは煮詰まるのでリフレッシュの時間も大切にしていて、ガーデニング歴はかなり長くなりました。

同業他社を意識することも重要だと考えています。今であれば米フロリダ州を中心に9つの州に約2000店舗を展開している「Publix(パブリックス)」は、高品質な食品の提供や好感度の高い顧客サービスで満足度が高く、注目している会社です。当社は社内外に向けてメッセージを出すときに「私たちの会社、ハローズは~」と切り出しますが、Publixも同じなようでシンパシーを覚えますし、その考え方や店舗運営をお手本にしたいと考えています。コロナ禍になるまでは毎年アメリカ視察に行っていたので、少しでも早く収束し再開したいです。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

業界を見渡すと、昨年は新型コロナによる巣ごもり消費の影響を受けて、食料品の販売が好調という結果でした。スーパーマーケットの経常利益率は平均2%ですが、3~5%を記録したところもあります。ただし、今年に入ると収束感が漂い、第1四半期の業績は明暗がわかれました。食料品が中心の小型店は前期が好調な分、今期に入ってからの落ち込みが目立ち、食料品は売れたものの他が足を引っ張った大型点は前期からの回復が際立つという、対照的な動きを見せています。

こうした中、当社はコロナ前に4%台だった経常利益率が前期は5%に上昇し、今期1Qの時点でも維持できました。店舗当たりの売上高が増えたと同時に、24時間トータルオペレーションシステムにより経費を一定に保つことができたことが要因です。こうした状況を堅持したいと考えています。

今期は6店舗を新規出店し、総店舗数は97になる予定です。前期の営業収益は約1500億円でしたが、今期の業績予想は1,568億円としています。当社は本部・物流センターを構える岡山商勢圏を中心に、広島・兵庫・愛媛・香川・徳島の計6商勢圏で事業を展開していますが、ドミナント戦略を基本にしつつ、特定の商勢圏に店舗が増えすぎると人材の確保が難しくなるので、バランスを考慮しながら出店していきたいと思います。

長期ビジョンとしては「瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想」を掲げています。先に挙げた6つの商勢圏内の年間食料品需要合計は約2兆円で、その14%に相当する3000億円の営業収益を目指します。また、長期ビジョンを達成するための重要な中期経営計画として2025年度までに120店舗体制で営業収益2000億円を目指す「2125計画」も進行中です。積極的な出店と計画的な既存店舗のリニューアルを通じて、実現したいと考えています。利益が出て生産性が高く、地域貢献を実現する会社になることも目標です。

プロフィール

氏名
佐藤 利行(サトウ トシユキ)
会社名
株式会社ハローズ
受賞歴
2020年「食品ロス削減推進大賞内閣府特命担当大臣賞」
役職
代表取締役社長
出身校
大東文化大学