PPM分析の流れ

次に、PPM分析の流れについて解説する。

製品や事業を4つのフェーズに分けるにあたり、PPM分析の座標面において、「市場成長率:x軸」「市場シェア:y軸」に置く。

この2つ以外に「売上高」の要素が必要であり、これはバブルの大きさを意味する。

1.市場成長率を計算する

市場成長率は、基本的に「今年の市場規模÷前年の市場規模」で計算する。例えば、2021年の市場規模が120億円、2020年の市場規模が100億円ならば、「120億円÷100億円=1.2(120%)」だ。したがって、市場成長率は120%となる。

なお、「市場規模」は、各業界団体や民間調査会社、財務省、経済産業省などが公開しているデータを参考にする。

2.市場シェアを計算する

市場シェアには、以下の2種類存在する。

  • 絶対的市場シェア:市場規模に対する自社の売上高
  • 相対的市場シェア:業界トップ企業の絶対的市場シェアに対する自社の絶対的市場シェアの割合

PPM分析に用いるのは「相対的市場シェア」である。

PPMの市場シェアは、「自社のシェア÷自社以外のトップ企業のシェア」で計算する。もし業界トップ企業のシェアが60%、自社のシェアが20%ならば、「20÷60=0.3」で30%が市場シェアだ。

ただし、自社や他社のシェアが分からないときは「売上高÷市場規模」で計算する。市場規模が20億円、売上高が10億円なら、「10÷20=0.5」で50%のシェアとなる。

3.バブルの大きさを決める

PPM分析におけるバブルの大きさは、xy座標面の目盛りの大きさとなる。

バブルの大きさは売上高によって決まるが、業種や企業によって経済規模が異なるので、1目盛りを1億円とするか10億円とするかは、その都度、売上高で調整するしかない。

PPM分析のメリット2つ

PPM分析で今ある事業を見直すと、より効率よく収益を上げるための選択と集中の判断が可能となり、事業拡大につなげられる。具体的には、PPM分析には次のようなメリットがある。

1.自社の製品や事業を客観視できる

いったん事業を始めると、例え収益性がなくても撤退を決断しにくいのが現実だ。開始して間もない事業だと、なおさら判断は難しい。事業に将来性が本当にないのか、あるいは単に機が熟していないだけなのか、判断する材料が少ないからだ。

PPM分析を使えば、こういった事業の状態を「市場シェア」「市場成長率」といった指標で可視化し、客観的に分析できる。事業の状態を可視化できれば、どの事業に資金を投じ、どの事業から撤退すべきか判断しやすくなる。

2.事業判断のミスを防ぎやすい

事業判断の指標としてよく用いられるのが、財務諸表だ。各事業に関わる損益を基準にすると、「赤字だから撤退しよう」「黒字だから資金を投じよう」と、単純に考えがちだ。

財務諸表による判断は正しいように感じられるが、事業は単純に「赤字」「黒字」で切り分けられるものではない。赤字でも、将来性のある赤字と先行きのない赤字がある。同じ黒字でも、これから伸びる黒字と既に成熟しきった黒字がある。また、始めたばかりの事業でも将来性があるとは限らない。

財務諸表の数字だけで判断してしまうと、本来まだ伸びる事業を切り捨ててしまったり、あるいは既に安定化して投資のいらない事業に資金を投入してしまう可能性もある。財務諸表の数字も経営判断上は大事な指標だが、PPM分析で別の視点から事業を見直すことで、事業の判断ミスを防ぎやすくなる。