PPM分析のデメリット3つ

PPM分析は、メリットだけではなくデメリットもある。「規模の経済」「製品のライフサイクル」が前提ということもあり、次のような3つの限界や欠点もある。

1.事業間の関係を考慮できない

PPM分析の限界のひとつは、事業同士の影響を考慮していないことだ。

製品や事業を単体として見るだけで、相互に与えている影響を鑑みない。そのため、「負け犬」に区分された事業をバッサリ切り捨てると、「花形」「金のなる木」が衰退してしまう恐れがある。現実には、一見利益や成長性が見込めない事業でも、間接的に企業全体の収益に貢献していることもあるからだ。

2.破壊的なイノベーションを見落とす

PPM分析は、「規模の経済・経験効果」「製品ライフサイクル」を前提としている。見方を変えれば、「既存のビジネスや製品だけしか分析できず、将来の戦略を立てられない」ため、破壊的なイノベーションの発掘は見込めない。

PPM分析では、「市場シェアが低い=高い利益は生み出せない」と考えてしまう。しかし実際には、一部のベンチャー企業が、革新的な技術や商品であっという間に高収益のビジネスモデルを構築し、高いシェアを占有してしまうことはよくある。

PPM分析のメリットで、「判断ミスを防げる」と説明したが、数字以外の複雑な要素を含めた予測まではできないのだ。

3.指標の取り方で結果が変わる

市場シェアも市場成長率も、絶対的な数字を使うのではなく、さまざまなデータからどの数字を採用するかで分析結果は変わってくる。また、「トップ企業はどこか」「市場はどこか」の考え方ひとつで、採用する数字は異なる。1つの製品や事業が複数の分野にまたがる場合は、競合他社や市場を慎重に選ばなくてはならない。

PPM分析を経営に活かす方法

PPM分析を行った後には、各製品・事業の資源配分を決める必要がある。以下では一例として、PPM分析をもとにした経営戦略の立て方を見てみよう。

PPM分析を経営に活かす方法

投下できる資源には限りがあるため、基本的には成長性や将来性が高い製品・事業を優先することが重要だ。収益面では「金のなる木」が優れているが、将来性の低い事業に多くの資源を投下すると、長期的な成長が難しくなってしまう。

PPM分析は万能ではない!使いどころを間違えずに活用しよう

PPM分析は、財務諸表などの経営の数字だけでは分からない製品や事業の市場での立ち位置を明らかにしてくれる。ただ、客観視や経営判断として使えるのは、これまでの経験値に基づくものがほとんどだ。そのため、PPM分析は万能の経営分析ツールとは言い難い。

PPM分析を実際に使う際は、「財務諸表での経営判断を補う」「製品や事業の立ち位置を視覚化して判断しやすくする」程度に割り切った方がよいだろう。