実物資産とは、形があり価格に換算することができる資産のことをいいます。不動産も実物資産の一種であり、金やプラチナなどの貴金属や、美術品やお酒などのコレクション資産も実物資産に含まれます。
実物資産は景気の変動を受けにくく、物価の上昇に強いため、保有することでインフレから現在の資産を守ることができます。実物資産は長期保有することで効果を発揮する資産ですが、保有を続ける上で発生するリスクに注意が必要です。本記事では実物資産の種類と保有するメリットとリスクについて解説します。
実物資産と金融資産の違い
資産には大きく分けて実物資産と金融資産の2種類に分類できて、金融資産は現金を含む、株式、債券、投資信託などの証券のことをいいます。お札や、株券は紙であるためその物自体に価値はありません。しかし、お札であればその額に見合った価値のある商品と交換可能であり、株券も株式市場での価値に基づいて現金と交換できます。
金融資産は電子マネーや、証券の電子化なども進んでいるため、紙である必要もなくなり必ずしも形として存在しているわけではない状態です。実物資産とは異なり、その物自体に価値がないのにも関わらず価値のあるものと交換できる理由は、現金であれば発行元の国、株式であれば発行元の企業に対する信頼があるからです。
実物資産はその物自体に価値がある資産であるため、購入・売却をして価値を価格に換算する場合は買い主と売り主次第で価格を自由に付けることができます。また、資産価値が国や企業への信頼によって成立しているわけではないので、需要がある限り価値がなくならないことも特徴です。
実物資産の種類について
実物資産はさまざまありますが、投資に利用される資産は主に下記の3種類です。
・不動産
・貴金属
・コレクション
それぞれ詳しく解説しましょう。
不動産
不動産投資は物件をはじめとした実物資産を利用して賃料収入や売買差益を得る資産運用の方法です。具体的な不動産系の実物資産は下記の通りです。
・マンション
・アパート
・一戸建て
・太陽光発電機
・駐車場
・土地(森林・畑・山など)
誰かに建物や土地を貸し付けることによって、定期的に安定した利益を得られるのが不動産系の実物資産の最大の特徴になります。定期収入を期待できない実物資産は利益を上げる方法が長期保有による価値の上昇を期待した売却益のみになるので、他の実物資産と比較しても収益を得る選択肢が広いです。
マンション・アパートなどの物件であれば入居者、駐車場であれば利用者、太陽光発電機であれば電力の売却先が必要となり、不動産を利用してくれる人がいなければ一切の収入になりません。売却益を期待して長期保有する他の実物資産よりも計画性が必要であり、手間がかかることには注意が必要ですが、保有しているだけで収益を得られる仕組みを作りやすい点に魅力があります。
貴金属
貴金属は希少性があり、需要がなくなることが考えにくいため価値が下がりにくい資産です。投資対象となる主な貴金属は下記の通りです。
・金
・銀
・プラチナ
・ダイヤモンド
金は銀よりも希少性が高く、プラチナよりは希少性が低い金属ですが、さまざまな用途で使用され需要のある金属であるため、実物資産として長期保有するのに適しています。また、金は有事の安全資産とも呼ばれ、主要な金融資産とは相関性が低い独特の動きをするのが特徴です。
大量の金を自宅で管理するのが難しい場合は純金積立というサービスを利用すれば、積立的に投資を行ないながら企業や銀行に金を保管してもらうこともできます。貴金属は金・プラチナ・銀に関しては市場も形成されているため売却に困ることはありませんが、基本的に定期的な収入を得る方法がなく、収益を得る方法は売却益のみとなります。
コレクション
コレクション系の資産は希少性が高い商品を集めるコレクターが存在する実物資産のことをいいます。不動産や貴金属と比較すると範囲が非常に広く、さまざまな種類があるため下記に投資に利用される代表的なコレクション系資産をまとめました。
・絵画・工芸品
・アンティークコイン
・ワイン・ウイスキー
・クラシックカー
・腕時計
・スニーカー
美術品・酒類・車に加えて、普段身につけるものまでがコレクション系の実物資産になります。美術品や工芸品の高額売買はビジネスとして成立していますが、コレクション系の実物資産はコレクターの趣味で売買されていることも多いです。
売却する場合はコレクターの金銭感覚に依存することも多いため、売買の安定性に欠ける点に注意が必要です。コレクション系の資産は保有する側も趣味として集めていたものに値が付いたという成功のケースも多いので、投資目的で資産を保有するなら希少価値の見極めや、適切な売却先を探す出口戦略の構築が重要になります。
実物資産を保有するメリット
実物資産を保有するメリットは2つあります。
・金融危機や景気変動の影響を受けにくい
・物価の上昇に対応できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
金融危機や景気変動の影響を受けにくい
金融資産と比較して実物資産は価値が下がりにくく、金融危機や景気変動の影響を受けにくい性質を持ちます。金融資産には金融危機や景気変動などの影響で為替や株価は大きく変動し、企業が倒産すれば発行している株式や債券の価値がなくなるリスクがありますが実物資産はその影響を受けにくいです。
特に金は金融資産とは異なる独自の値動きをする資産であるため、株式や債券などの金融商品の保有が多い方は適切に保有することでリスク回避の手段にできます。実物資産は価値が減少することはあっても需要がある限り価値がなくなるリスクが低い資産です。
物価の上昇に対応できる
物価が上昇し現金の価値が下がったとき、物の価値は上昇しやすくなるので実物資産はインフレに強い資産です。日本銀行は毎年2%のインフレを目標としているので、物価の上昇により現在保有している金融資産の価値が減少するリスクがあります。
不動産などのインフレに強い実物資産を保有することで、物価の上昇による金融資産の減少に対応できます。
実物資産を保有するリスク
実物資産を保有するリスクは2つあります。
・災害や盗難によって消失する可能性がある
・流動性が低く売却しにくいことがある
それぞれ詳しく解説します。
災害や盗難によって消失する可能性がある
実物で存在する資産は金融資産と異なり、災害や盗難によって物理的に消失するリスクがあります。不動産であれば火災や災害による焼失、貴金属やコレクション系の資産は持ち運び可能であれば盗難のリスクも考えられます。
不動産であれば保険の保証を手厚くすることでリスクヘッジを行ない、金などの貴金属であれば企業に管理してもらうことで対策を行ないましょう。
流動性が低く売却しにくいことがある
実物資産は流動性が低く、すぐに売却することが難しい側面があります。また、実物資産の資産価値が高いほど適切な価格で売却できる買い手が見つかりにくいので、売却に時間を要します。金融資産であれば市場が形成されているため、株式は市場が開いていれば当日中に売買が成立します。
流動性の低い実物資産を保有する上で売却先を探すことは大きな課題であり、購入の時点で出口戦略を考えておくことは実物資産への投資を成功させるポイントになります。
金融資産と実物資産はバランスを考えて保有する
実物資産は金融資産を多く保有しており、金融危機や景気変動の影響を大きく受けるのであれば一部の資産を実物資産に換えることは有力なリスク回避の手段になります。
一方で、保有する金融資産の大半を実物資産に換えるのは、キャッシュが必要なときに流動性の観点からすぐに現金化できないリスクがあります。よって、金融資産と実物資産はバランスを考えて保有することが重要です。
(提供:Incomepress )
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