住宅ローンやアパートローンを利用してマイホームや投資用不動産を取得する際、団体信用生命保険(団信)を利用できる場合があります。団信は生命保険の一種ですが、通常加入している生命保険とは異なった特徴を備えています。

また、生命保険をすでに利用している場合、団信の加入は生命保険の契約を見直すチャンスともいえます。団信を有効活用し、保険により資産を守りつつ、保険料支出を見直すことで資産を築く助けとすることも可能です。本記事では団信の活用方法について解説します。

団信と一般の生命保険との違いとは?

住宅ローンの契約時は生命保険を見直すチャンス!団信を活用し支出を削減
(画像=MonsterZtudio/stock.adobe.com)

生命保険は基本的に「生命保険料を支払う人(契約者)」「生命保険の対象となる人(被保険者)」「保険料を受け取る人(受取人)」の3者で構成されています。一般の生命保険では世帯主が契約者と被保険者となり、配偶者や子どもを受取人として万が一の事態に備えます。

団信も一般の生命保険と同じ構成ですが、契約者と受取人がローン契約を行った金融機関で被保険者がローンの契約者となります。ローン契約者が死亡や高度障害など、一定の状態となった場合にローンの残債に相当する保険金が金融機関に直接支払われてローンが完済される仕組みとなっていますが、この保険金が支払われる相手の違いにより団信を利用する上で大きなメリットとなっています。

団信のメリットと注意点

生命保険の死亡保険金は課税対象です。直接受け取った場合は、契約者・被保険者・受取人を誰に設定していたかによって所得税・相続税・贈与税のいずれかが課税されます。受取人には納税義務が生じるため、特に控除額の少ない所得税と贈与税の場合はせっかくの保険金が目減りしてしまうかもしれません。

また、保険金を生活費などの他の支出の支払いに充ててしまい、ローンを完済できず遺族に支払い負担が残ってしまうリスクもあります。

一方で、団信の保険金は金融機関に直接支払われるため、保険金に対する納税義務は親族・遺族には生じず、団信の保険金によりローンが完済したマイホームや投資用不動産が相続財産として相続税の対象となります。

相続税は控除額も大きく、さまざまな特例も利用できます。不動産に関する相続税の特例として、同居中の子どもがマイホームを相続する場合は330平方メートル以内の土地の相続税評価額が8割減となる「小規模宅地等の特例」や、賃貸に供している投資用不動産の200平方メートルまでの土地の相続税評価額が5割減となる「貸付用事業用宅地等の特例」があり、他の相続財産の額にもよりますが、所得税・贈与税よりも税負担を小さくできる場合があります。

【死亡保険金の課税関係】

契約者被保険者受取人税区分
妻や子ども相続税
所得税
子ども贈与税

また、一般の生命保険は他の保障内容が同一であれば、基本的に契約している保険金の額によって保険料が決まります。このため保険金を必要以上に設定していると保険料負担が過大となってしまうため、定期的に保険契約を見直す必要がありますが、団信の保険金の額はローンの残債と連動しているため過大な保険金とはならず、無駄な保険料を支払うことがありません。

団信利用時の注意点として、団信の保険料はローン金利に含まれており、特約の保険料についてもローン金利の上乗せというかたちで負担するため、ローン契約者は直接保険料を支払うことができません。そのため所得税の所得控除のひとつである「生命保険料控除」の対象とはならず、住宅ローン減税として税額控除することになります。

また、団信は一度契約すると以後は特約を追加するなどの契約内容の変更が行うことができません。保障内容を変更したい場合は、原則として新たにローン契約を結びなおす必要があるため、ローンの借り換えなどのタイミングでしか契約を見直すことができません。また契約に際して再度審査が行われるので健康状態や既往歴によっては保険契約が結べず、借り換えが行えなかったり融資条件が不利になったりしてしまう点に注意が必要です。

団信のさまざまな特約

団信の基本的な保障内容は、ローン契約者の死亡または失明や常に介護を要する状態などで通常の生活を送ることが困難な高度障害状態に陥った場合に保険金が支払われます。ただし、これ以外の状態でも就労が困難となるケースも存在するため、現在はさらに団信の保障範囲を広げるさまざまな特約を利用できるようになっています。

主な団信の特約として、がん・脳卒中・心疾患の罹患に起因し所定の状態となった場合でも保険金が支払われる「3大疾病保障」や、3大疾病に高血圧・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎などを加えた「8大疾病保障」のほか、これら以外の病気やケガも保障する「全疾病保障」があります。

また、既往歴や健康状態に不安のある方でも団信に加入できるよう引受基準を緩和した「ワイド団信」もあり、自身のニーズに合った団信を選ぶことが可能となってきていますが、団信の特約の保険料は、ローン金利への上乗せで支払うため、返済金額が過大とならぬように気を付けましょう。

夫婦連生団信に注目

現在は共働き世帯が一般的となり、不動産価格の高騰もあいまって夫婦の収入で住宅ローンの返済を行っていくことが珍しくなくなってきました。

住宅ローンを利用する際、連帯債務型のペアローンを利用してマイホームを取得することがありますが、この場合、夫婦どちらか一方が働けなくなってしまい団信の保険金の支払いを受けたとしても住宅ローンが完済されず持分に応じた返済負担が残ってしまうため、配偶者へ大きな支払い負担が及び、以後の生活が立ち行かなくなってしまう恐れがあります。

そこで夫婦のどちらか一方が死亡または高度障害などで保険金の支払いを受けた場合に、持分に関わらず住宅ローンが完済される特約「夫婦連生団信」を有効活用してリスクへ備えるようにしましょう。

団信契約時は生命保険契約を再確認

マイホームや投資用不動産を取得する際に、住宅ローンやアパートローンを利用することがありますが、返済期間が最大35年と比較的長期間に及ぶため、ローン契約者が死亡した場合などに備え、金融機関を受取人とした団信を利用する場合があります。

また現在は夫婦共働きが一般的となっており、夫婦両方を対象としたリスク対策が重要となってきています。たとえばマイホーム購入時に連帯債務型のペアローンを利用している場合は、夫婦一方が死亡・高度障害状態となっても住宅ローンは完済されず、持分に応じた支払い負担が残ってしまうため、夫婦連生特約を利用するなど団信の重要性が増しています。

このほかにも団信にはさまざまな特約が利用できます。ローン契約者の死亡や高度障害だけでなく3大疾病や8大疾病のほか、病気やケガなどで就労不能になった場合も保険金を受け取れるようになってきており、一般の生命保険との使い分けが生命保険を有効活用する上でのポイントといえるでしょう。

一般の生命保険で世帯主などの死亡による収入の減少に備える場合、今後必要となる生活費に対応した死亡保険金を設定し生命保険を契約するのが一般的です。ただし死亡保険金の中には今後の住居費なども含まれていますが、団信の契約により万が一の際の住居費はかなり低減できると見込めるため、死亡保険金の額を見直し、保険料を節約することが可能です。

団信は万が一の際に資産を守る有効な選択肢となりますが、一般の生命保険と異なり、途中で契約内容を変更することができません。借り換えなどでローン契約を新たに結びなおすときにしか見直すことができないうえ、再審査もあるためその時の健康状態などによっては希望通りの利用ができない恐れがあるため、最初の契約時に要望に沿った団信選びを行うことをおすすめします。

(提供:Incomepress



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