新たな収入源の確保や老後への備え、資産形成などの目的で不動産に興味をお持ちの方は多いと思います。不動産投資にはいくつかの選択肢がありますが、マンション経営やアパート経営が人気のある選択肢になるでしょう。
不動産の初心者からすると、マンション経営とアパート経営にはどんな違いがあるのか明確にはわからないでしょうし、自分はどちらを選択するべきか判断がつかないことでしょう。不動産投資は安くはないからこそ選択を間違え、失敗したくはないものです。
そこで本稿では不動産の大きな2つの選択肢、マンション経営とアパート経営の違いについて解説します。どちらを選択するべきか迷っている方はぜひ、この情報を判断材料にお役立てください。
1.賃貸経営を始めるならマンション経営?アパート経営?
これから賃貸経営を始めるのであれば、マンション経営か?アパート経営か?その違いを知って比較する前段階として、この両者がそれぞれどういうものかを定義しておきたいと思います。とくに理解いただきたいのは、初心者向きのマンション経営とは、一般的に「区分マンション」を指していることです。
したがいまして、本稿では区分マンション経営とアパート経営を比較していきますので、初心者の方にはこれが現実的な選択肢であることを念頭に解説を読み進めていただければと思います。
1-1.アパート経営とは?
アパート経営とは、一般的に木造のアパートを一棟丸ごと土地とともに所有して賃貸経営をすることを指します。多くのアパートは4戸、6戸、8戸といったように1つの建物のなかに複数の居室があり、そこからの家賃収入を得ます。
重要なポイントは、一棟丸ごとを対象にした賃貸経営であることと、建物のなかには複数の居室があってその数だけ入居者がいることです。
1-2.マンション経営とは?
アパート経営は一棟丸ごと所有する形が一般的ですが、それに対してマンション経営には区分マンションと一棟マンションという2つの形態があります。これはアパート経営にはない概念で、マンションの場合はより資金規模や目的に応じて細分化された投資が可能です。
一般的に初心者向けとされているのは、区分マンション経営です。なぜなら一棟マンション経営は投資規模が大きくなり、多くの場合、億単位の初期投資が必要になるからです。これからマンション経営を始めようとお考えの方のなかで億単位の資金調達ができる人は限られてしまうので、区分マンション経営が現実味のある選択肢となります。
1-3.両者は似て非なるもの
すべての方がそうであるかどうかはわかりませんが、マンションとアパートを比べるとマンションのほうが「上」との印象をお持ちではないでしょうか。資産性や賃貸経営の優位性などにおいて、「できればマンション、無理ならアパート」と考えている方が多いかもしれませんが、この両者は似て非なるものなので、単純にどちらが上でどちらが下とはいえません。
次章で10項目の比較をしていきますが、それを知っていただくと違いが見えてくると思います。このどちらを選択するかを決める際には、まずマンション経営とアパート経営はそもそも別物であることをご認識ください。
2.マンション経営とアパート経営の違い10番勝負
似て非なるものであると述べたマンション経営とアパート経営ですが、10番勝負で比較していくことで、その違いが鮮明になるかと思います。できるだけマンションかアパートかをあまり決めつけず、フラットな目線で読み進めていただくと違いがわかりやすくなると思います。それではさっそく見ていきましょう。
2-1.建物としての違い
マンションとアパートには、建物の形状や構造に大きな違いがあります。一般的にアパートは木造や軽量鉄骨造(プレハブ工法)であり、マンションは鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。
この構造上の違いもあってアパートは基本的に2階または3階建てまでですが、マンションはそれよりも高層建築であることがほとんどです。
【アパート】
基本は2階または3階建て
木造
軽量鉄骨造(プレハブ工法)
【マンション】
2階建て以上の建築が可能
鉄骨造
鉄筋コンクリート造(RC造)
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
建物の構造が違うと、敷地の候補にも違いが生まれます。高層建築に適した土地は候補が限られるので、アパートよりも建物そのものに希少性があります。アパートは狭い土地でも建築が可能であるなど、候補地の範囲が広くなるため、エリアによっては供給過多になってしまう可能性があります。
2-2.不動産としての違い
すでに解説したとおり、アパートは土地と建物を丸ごと所有するのが一般的な形態です。それに対してマンションは一棟丸ごとを所有する形と、区分マンションといって建物のなかの1戸単位で物件を所有して、賃貸経営をする形があります。
一棟マンションだと投資規模が大きくなりますが、区分マンションならサラリーマンの標準的な収入でも十分手が届きます。アパートは原則として一棟単位での所有になるので、マンション経営のほうが投資形態の選択肢が広いといえます。
2-3.耐震性の違い
耐震性は、やはり鉄筋コンクリートで建てられているマンションに軍配が上がります。東日本大震災では木造住宅の被害が圧倒的に多く、基礎部分のみを残して建物が根こそぎ流されてしまった事例が多発しました。
それに対して鉄筋コンクリート造の建物は壁などが流されたものの構造部分は残った建物が多く、やはり木造よりも頑丈であることが示されました。
だからといって木造アパートが危険な建物であるわけではありません。東日本大震災のような被害が発生することは極めて稀ですし、現在の耐震基準を満たしている建物であればマンション、アパートそれぞれが安全な建物であると考えてよいでしょう。
しかし、現実はそうであっても入居者からの目線が同じであるとは限りません。一般の認識では「鉄筋のほうが木造よりも頑丈」と考える人が多く、安全性を重視する意味からマンションを選択する人が多くなるかもしれません。その意味でアパートはマンションと比較すると入居者の募集において不利になる可能性はあります。
2-4.投資規模の違い
すでに述べてきているように、マンションとアパートを「一棟の建物」で比較すると大きな違いがあります。一棟マンションだと少なくとも億単位の投資規模になりますが、アパートだと数千万円クラスの資金で所有することもできます。
投資規模の観点から区分マンションと一棟アパートが比較の対象になりやすく、実際に多くの賃貸オーナーがこの両者を比較しています。
2-5.利回りの違い
物件によってケース・バイ・ケースの部分も大きいため一概にはいえませんが、一般的にアパート経営のほうがマンション経営よりも利回りが高くなりやすいとされています。
それは単純に運用戸数を比較しても想像がつきます。区分マンションだと1戸あたりの入居者は1世帯ですが、アパートの場合は1つの建物のなかに複数の入居者がいます。満室経営だとその全戸から家賃が入ります。
また、マンションとアパートは建物の構造が違うため、法的な耐用年数にも違いがあります。多くのマンションが該当する「鉄骨鉄筋コンクリート造」「鉄筋コンクリート造」は法定耐用年数が47年であるのに対し、木造アパートは22年です。なお、法廷耐用年数とは減価償却を利用できる期間のことをいいます。よく勘違いされやすいのですが、この期間を過ぎてしまうと住めなくなるわけではありません。
同じ投資額だったとすると、毎年計上できる減価償却費も倍以上の差が生じるため、アパートのほうが節税効果が高く、手残り金額を多くすることができます。減価償却による節税のみで比較すると、短期的な利回りはアパートに分があります。
2-6.資産性の違い
マンションとアパートの資産性を比較するにも、先ほどの法定耐用年数を見るのがわかりやすいでしょう。マンションは47年であるのに対してアパートは22年です。実に倍以上の差があるということは、それだけマンションのほうが資産価値を長く維持できることを国も認めているわけです。
所有している不動産の資産価値をより長く維持できるため、買値と売値(家賃収入を含む)の差を表す利ざやで考えるとマンションに優位性が生まれます。
2-7.空室リスクの違い
マンション経営とアパート経営、このどちらであっても最大の難敵は空室リスクです。空室になっている期間は家賃収入が全く入ってこないので、この空室リスクが高いほど賃貸経営は利益を出しにくい、失敗する可能性が高くなることを意味します。
それでは、インターネットによる「不動産評価」や「地価マップ」の情報提供を行う株式会社タスが発表した「賃貸住宅市場レポート」の2021年5月版を見てみましょう。
以下のグラフは一都三県のアパート系住宅の空室率推移です。
同社の分析によるほとんどの地域で空室率はおおむね、30%台で推移していることがわかります。続いて、こちらは、同じ条件で調査したマンション系住宅の空室率推移です。
こちらはほとんどの地域が10%台で推移しているのが見て取れます。両者を比較していると興味深いのは、神奈川県でアパートの空室率が突出して高く、その一方でマンションについては神奈川県だけ空室率10%を下回っていることです。神奈川県ではマンションが強く、アパートが弱い傾向があるようです。
この結果を比較すると、そもそも空室率の基礎的な水準が異なっており、マンションのほうがアパートよりも空室リスクが低いと読み取ることができます。
2-8.防犯性の違い
昨今、治安面やセキュリティを気にする入居者が多くなっており、賃貸経営と防犯性は切っても切れない関係にあります。それを反映するかのように多くのマンションではオートロックが採用され、部外者が建物に自由に出入りすることはできません。
それに対して大半のアパートにはエントランスがなく、オートロックもありません。そのため部外者であっても自室ドアの前まで来ることができてしまうのは、防犯性の観点からリスクを感じる人が多いかもしれません。
賃貸オーナーとして、この違いは大いに留意しておく必要があるでしょう。
2-9.リスク管理の違い
リスク分散は投資の基本です。もちろんそれは、不動産であっても同様です。リスク分散の観点から区分マンション経営とアパート経営を比較すると、1つの建物に複数の居室があるアパートのほうが家賃収入ゼロの状態になりにくい強みがあります。区分マンションだと入居者は1世帯なので、その世帯が退去し新たな入居者が決まらず空室になると、家賃収入ゼロの状態が発生してしまいます。
ただし、区分マンションを複数戸所有している場合は事情が異なります。同じマンションではなく異なるマンションにそれぞれ区分マンション物件を所有してマンション経営をする形態だと、アパート経営のように1つの建物と運命を共にするリスクがありません。
1つのマンションが全体的に不人気になってしまったとしても、他のマンションで安定経営ができていれば全体の経営リスクを軽減することができます。
単一の物件で比較するとアパートのほうがリスクの分散効果が高いですが、区分マンションであっても複数戸を所有するとマンション経営でもリスク分散を図ることが可能になります。
2-10.管理のしやすさの違い
近年の賃貸経営は、オーナーが自主管理をするよりも専門の管理会社に一任する形が一般的になっています。それだけ賃貸経営の業務が複雑化、高度化していることの表れであり、家賃滞納リスクなども考慮すると管理会社の存在意義は大きくなっています。
マンション経営では通常、すでに管理会社が建物の管理をしています。オーナーはほとんどの業務を外注化できます。
それに対してアパートは一棟所有なので自主管理をする選択肢もありますが、昨今の賃貸経営事情を考えると管理会社に委託するのが無難でしょう。
管理のしやすさではマンション経営のほうがその仕組みが整っているといえますが、アパート経営であっても管理会社に一任することで管理のしやすさを高めることは十分可能です。
【アパート経営とマンション経営の違い】
No | 項目 | アパートの場合 | マンションの場合 |
---|---|---|---|
1 | 建物としての違い | 基本は2階または3階建て 木造 軽量鉄骨造(プレハブ工法) | 2階建て以上の建築が可能 鉄骨造 鉄筋コンクリート造(RC造) 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) |
2 | 不動産としての違い | 一般的に木造のアパートを一棟丸ごと土地とともに所有 | 区分マンションと一棟マンションという2つの形態があるが初心者向きは区分マンションの経営 |
3 | 耐震性の違い | 弱い | 強い |
4 | 投資規模の違い | 一棟だと数千万円から | 区分だと数千万円からで一棟だと数億円 |
5 | 利回りの違い | 区分マンション経営よりも利回りは高い | 区分マンションの場合、アパートを一棟経営するよりも利回りは低い |
6 | 資産性の違い | 短い | 長い |
7 | 空室リスクの違い | 一都三県ではおおむね30%台 | 一都三県ではおおむね10%台 |
8 | 防犯性の違い | セキュリティが弱い | セキュリティが高い |
9 | リスク管理の違い | 一棟、全ての部屋が空室になる可能性は低い | 区分だと一世帯だけの入居なので空室リスクが高い |
10 | 管理のしやすさの違い | 自主管理するケースもあるが管理会社に委託することで管理しやすくなる | 管理会社に依頼することが一般的で、仕組みが整っている |
3.結局、どちらを選択するべきか
マンション経営とアパート経営の違いについて10番勝負で解説をしたうえで、次なる疑問は1つでしょう。「結局、どちらを選択するべき?」という現実的なものです。賃貸経営をやったことがない初心者の方に向けて、この「どちらを選択するべきか」という問いにお答えしたいと思います。
3-1.初心者に向いているのはマンション経営
結論から申し上げますと、賃貸経営の初心者に向いているのはマンション経営です。
10番勝負の比較においても述べたようにマンションは管理が容易で、全体的な空室率もアパートよりも低いため、失敗の可能性が低いところが大きな強みです。
次項では、マンション経営のほうが初心者に向いている理由を5つ紹介します。
3-2.初心者にはマンション経営が適している5つの理由
賃貸経営の初心者にはマンション経営が適していると述べている根拠は、以下の5つになります。
・管理がしやすい
・比較的少額から始められる
・入居者のニーズが安定している
・資産性があるので売却の選択肢も残る
・防犯、セキュリティ性
これらの理由はいずれも初心者が大きな失敗を回避しやすいものです。賃貸経営の豊富な経験を持ち、自分で優良物件を見極めて物件管理をできる人であれば、アパート経営のほうが高い利回りを期待できるかもしれません。
しかし初心者にとって最も重要なのは「失敗しないこと」です。それを最優先する意味でもマンション経営が適しているといえます。
3-3.アパート経営が向いているのは、こんな人
先ほど、賃貸経営に豊富な経験を持っている人であればアパート経営にも適性があると述べました。アパート経営はマンション経営よりも古くからある賃貸経営のビジネスモデルであり、今もなお健在です。
そのため、すでに賃貸経営の豊富な経験や知識を持ち、その土地や周辺に対する十分な情報も持っている人であれば、アパート経営のほうが高い収益を出せる可能性もあります。
今は初心者の方でも、経験を積んで賃貸経営の上級者になったときに、アパート経営を選択肢に入れてみてももいいでしょう。
3-4.マンション経営は長期的目線で取り組もう
アパート経営のほうがマンション経営よりも利回りを高くしやすいことから、アパート経営に魅力を感じる方は多いと思います。しかし、そもそも不動産投資は長期的な目線で取り組むものです。
アパートよりもマンションのほうが資産性が高く、老後や将来を見据えた資産形成を重視するのであればマンション経営のほうが適しているといえます。
もっとも、マンション経営は初期のキャッシュフローが赤字になることもあるなど、短期的な視点ではリスクを感じやすいかもしれません。
しかしそれを経てローンを完済すると、収益力のある物件が手元に残ります。マンション経営を検討する際には目先の利益ではなく、長期的な資産形成の視点を持つことが重要です。
4.超初心者ならばワンルームマンション経営
本稿をご覧になられたあなたは、マンション経営のベテラン、それとも初心者でしょうか?ベテランならば、その豊富な経験を活かしてアパート経営にチャレンジしてみてもいいでしょう。
もし初心者だとしたら、区分マンションの経営をおすすめします。なかでもワンルームマンションの経営は、比較的少ない投資額から始めることができることから、より初心者向きといえます。まったくの初心者の方は、ワンルームマンションに関す書籍が数多く出版されていますので、まずは本から基本的な知識を身につけてみましょう。
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