企業がIPビジネスを始める3つのメリット

では、一般的なビジネスと比べた場合に、IPビジネスにはどのようなメリットがあるのだろうか。ここからは企業が特に押さえておきたい3つのメリットを紹介する。

1.人気が定着すると息の長いビジネスになる

前述の通り、IPビジネスによって生み出した知的財産にはさまざまな活用方法がある。そのため、キャラクターや作品などに多くのファンがつくと、息の長いビジネスモデルを構築しやすい。

実際にアニメやゲームの製作会社の中にも、人気キャラクターのライセンス使用料によって経営を安定させている企業が存在する。

2.本業として取り組む必要がない

キャラクターなどの知的財産をライセンスとして販売すれば、グッズ製作やイベント運営などを自社で行う必要がない。これらのサービス展開はライセンスの購入者が行ってくれるので、IPビジネスは本業として取り組まなくても十分に成り立つ。

一方で、グッズ製作などを自社のみで行おうとすると、工場や機器を調達するためのコストや人件費がかかってしまう。ビジネスが成功するかどうか分からない状態で、これらのコストを負担することはハイリスクだ。

その点、グッズ製作などを外部に任せられるIPビジネスは、資金や人的リソースを削りたくない企業にうってつけなビジネスと言える。

3.自社のイメージアップや宣伝につながる

グッズ製作などの二次利用・三次利用が成功すると、一部の消費者は知的財産の考案者に目を向けてくれる。そこで新たなファンを獲得できれば、さらに多くの企業がライセンスを購入するようになるため、IPビジネスはスピード感のあるイメージアップ戦略として活用されるケースもある。

このような循環を作ることは簡単ではないが、消費者や顧客にアピールできるものは考案した知的財産だけではない。例えば、ホームページやSNSなどをうまく活用すれば、自社が取り組む別事業や別製品の宣伝にもつなげられる。

IPビジネスのデメリットと注意点

一方で、IPビジネスには深刻なリスクも潜んでいる。そのリスクによって経営が傾く恐れもあるので、次はIPビジネスのデメリットや注意点を確認していこう。

1.短期間では大きな収益につながらない

知的財産のライセンスを販売するIPビジネスは、長期間続けてこそ大きな利益になるビジネスだ。短期的な利益を重視するのであれば、知的財産そのものを売却したほうが目的を達成しやすい。

また、キャラクターやゲームをはじめ、知的財産には流行に左右されやすいものも存在する。もし多くのファンが離れると興味を示す企業も減っていくため、次第にライセンスの売上は落ちていくだろう。

したがって、IPビジネスにつながる知的財産を考案した際には、「短期・長期のどちらの収益を取るべきか?」を慎重に判断しなければならない。

2.知的財産の管理に手間がかかる

IPビジネスは副業としても成り立つが、知的財産の管理が不要になるわけではない。ライセンスの販売先にサービス展開を任せきりにすると、いつの間にかブランドイメージが低下することもある。

例えば、キャラクター本来のデザインとはかけ離れたグッズが販売されれば、原作が好きなファンは愛想を尽かしてしまう。どれだけ人気を得た作品であっても、一度離れたファンを呼び戻すことは難しい。

したがって、IPビジネスではライセンスの販売先を慎重に選び、契約内容についても細かく調整することが必要だ。知的財産のブランドは自社のイメージにもつながるので、IPビジネスを行う企業自身もサービスの展開方法を考えなくてはならない。

3.一部の地域では権利が無視されることも

IPビジネスの最大の脅威とも言えるものが、「海賊版」の存在だ。海賊版とは、知的財産権や著作権を無視して作られる製品を指す。

本来、ベルヌ条約の加盟国では知的財産権や著作権が守られるものの、一部の地域ではこれらの権利が無視されることもある。海賊版製品の販売によって生じた利益は、発案者の元には当然入ってこない。

なぜ「IP(知的財産)ビジネス」が注目されている?現代企業が押さえたいIP戦略の実情やポイント

IPビジネスを成功させるには、メリットだけではなくデメリットも理解しておく必要がある。中でも海賊版の存在は深刻なリスクであるため、サービスの展開方法やライセンスの販売先は慎重に見極めよう。