本記事は、森川夢佑斗氏の著書『超入門ブロックチェーン』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=PIXTA)

データの価値を担保するブロックチェーン

ビットコインに代表されるブロックチェーン上のデジタルデータは、「価値がある」と信じるに足る確からしさを与える性質を備えています。

■ データがなくならず、改ざんもされない

ブロックチェーンは、複数のノードが同一の情報を常に共有することによって生まれるデータ記録基盤です。このためノードが1つでも残っていれば、データが消えることはありません。

また、このデータはハッシュ暗号によって一貫性が保たれており、過去のデータへの不正な操作は検知されます。加えて、不正が行われたとしても、そこから他のブロックを追い越して最長のブロックを繋げなければ、正当なデータとしてはみなされません。

単一の管理者がいないことから、このルールは全てのネットワーク参加者に平等に課されています。

従来の記録管理手法の場合、管理者がいなくなれば記録上の価値も失われてきました。ところが、ブロックチェーンの場合、記録の管理に伴う負担には、それに見合うだけの報酬が自動で支払われます。管理に関わる参加者(マイナーなど)の持続可能なアイデアが、織り込まれた設計になっているということです。

このような背景から、純粋に情報の記録媒体としての信頼性が高く、価値の保存にあたる機能を果たすことができます。また、扱われているデータは残高という数値情報のため、価値の尺度となる交換の比率を表現することも十分可能です。

■ データが有限

お金のように交換の手段として用いるものだけでなく、誰にも渡すつもりがないものに価値を見出すことがあります。たとえば、世界的なアーティストの作った芸術作品や過去に限定販売されたコレクターズアイテムなどは、その多くが高額で売買されています。

これらの価値はほとんどの場合、その有限性・希少性によって支えられています。たとえば、大量に印刷されるカードやシールなどのグッズであっても、乱丁や落丁といった希少な特徴を備えていれば、コレクター市場で高い価値が認められます。

アダム・スミスに始まる経済学の一般論として、価値を求める基本的な算出方法は需要と供給のバランスです。供給に限りがあるものは、価値がつきやすい傾向にあります。

ブロックチェーン上のデータは、次の2つの観点から有限と言われています。

第1に、「全体の発行量」と「発行の方法」が、どちらも限定されたデジタルデータであるという観点です。

ビットコインや次章で詳述するEthereum(イーサリアム)のように各ブロックチェーンで発行される基本の通貨は、それぞれの仕様により総発行量が定められています。また、発行の方法も、マイニングのように各ブロックチェーンのコンセンサス・アルゴリズムに紐づいて定められており、それ以外の方法で総量が増減することはありません。

第2に、ブロックチェーン上のデジタルデータは、発行時の出自が明らかになる、という特徴があります。

これはマイニングによって発行されたものに限りません。ブロックチェーン上にデータを記録する場合、そのデータにはタイムスタンプが割り振られ、以降の来歴も残ります。そのため、オリジナルがオリジナルとして判別可能であるという性質を持ちます。

■ 誰でも使える

銀行口座を開設しようと思うと、国籍や住所、職業、その他の与信に関する情報が求められるでしょう。銀行口座がないとそれに紐づくクレジットカードや決済サービスの利用を開始することもできません。また、これらの決済サービスを実際に導入しようとした場合、専用のサービスや機材を導入する必要が生じます。

ビットコインを始めとするブロックチェーンは、単にデータを取り込み、記録するだけの仕組みではなく、ユーザー同士の取引や交換を前提とするアプリケーション、あるいはプラットフォームとして設計されています。

ブロックチェーン上のデータには世界中のどこからでもアクセスすることができますし、利用の際にユーザー登録などをする必要がありません。

実際にブロックチェーン上で取引や送受金を行おうとする場合、一般的にウォレットや取引所アプリをダウンロードすることになります。しかし、オープンソースで提供されている各種アプリケーションを利用するノウハウがあれば、それすら必要がなくPC1台・スマホ1台ですぐに利用を開始することができます。

また、たとえば店舗でビットコイン決済を受けつけようとする場合、自身のウォレットのアドレスをQRコードとして出力し、それをレジ横に置くだけでかまいません。契約や導入手続きが、ほぼ不要な決済サービスは他に類を見ません。

これらの性質は、人々に「ブロックチェーン上のデータは複製が容易ではないことから価値が希薄化ぜず、価値がつくものだ」ということを信じさせるに足るものです。そして、多くの人がそう信じるからこそ、そこに記録された価値は強固なものとなり、時にお金のように交換の媒介に利用することができるのです。

記録された価値を扱いやすくする「トークン」

ビットコインのように、ブロックチェーン上で価値を表現されたデジタルデータのひとかたまりは、「トークン」とも呼ばれています。トークンという言葉は、日本人には耳馴染みのない言葉かもしれませんが、実は、私たちの身の回りにあふれています。

たとえば、誰もが子どもの頃に利用したことのある、算数セットをイメージしてみてください。そこに入っていたおはじきや算木(さんぎ)がまさにトークンです。そろばんの珠もトークンですし、麻雀をする人にとって馴染み深い点棒もトークンの一種です。

つまり、トークンとは数字などのイメージしにくい抽象的な概念を、視覚的に理解できるようにするための代替物のことです。

現在、ブロックチェーンを用いてさまざまな価値に換算できる残高情報がインターネット上に記録されており、日夜更新され続けています。これを視覚的なイメージに変換するために、ブロックチェーン上のさまざまな価値はトークンとして表現されています。

ビットコインなどの暗号資産も含めて、より広い概念が「トークン」だということを理解していただけたでしょうか。

超入門ブロックチェーン
森川夢佑斗
株式会社Ginco代表取締役。1993年大阪府出身。京都大学法学部中退。大学在学中にブロックチェーンの研究開発事業を開始し、2017年12月に株式会社Gincoを創業。2018年にスマホで簡単かつ安全に暗号資産を一括管理できるウォレットアプリ「Ginco」を提供開始。累計数千億円以上の暗号資産が流通するサービスへと成長させる。2019年には事業者の暗号資産活用を加速させるため事業者向けのウォレットシステム「Ginco Enterprise Wallet」を開発。現在はさらにデジタル証券の管理を行うウォレットシステムの提供に取り組むほか、金融のみならず幅広い分野でのブロックチェーン活用とDX支援に取り組んでいる。 2019年には、ブロックチェーン業界を代表する起業家としてForbes Next Under30、BUSINESS INSIDER「BEYOND MILLENNIALS」などに選出された。著書にベストセラーとなった『ブロックチェーン入門』(KKベストセラーズ)ほか、『ブロックチェーンの描く未来』(KKベストセラーズ)、『未来IT図解 これからのブロックチェーンビジネス』(エムディエヌコーポレーション)などがある。

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