本記事は、森川夢佑斗氏の著書『超入門ブロックチェーン』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。

選択肢
(画像=PIXTA)

ビジネス上の不確実性を排除するブロックチェーン

ブロックチェーンは確からしさを担保することに特化した記録基盤ですから、ビジネスプロセスの途中で生じる、これらの不確実性の多くを排除することができます。

まず、改ざんや事後編集ができない記録があるというだけで、その記録は高い証跡能力を発揮します。例えば、契約書等の原本管理はデジタルデータの改ざんリスクへの対処ですが、これをブロックチェーン上に記録することで、証跡能力を維持したままペーパーレス化を図ることが可能でしょう。

また、自分の有する情報と他者の有する情報が原則同期されており、双方の食い違いが起こる心配がないため、なにが正しい出来事だったのかを確認する際には、ブロックチェーンを参照するだけで完了します。また、第三者に証跡の提出を求められる、監査等の対応も簡易化することができます。

さらにブロックチェーン上には、過去から現在に至るまでの取引情報が網羅的に記録されているため、相手の与信を調査する際にも過去に遡って関連情報を調べることができます。また、サプライチェーンのように複数事業者が連鎖的に関与する取引も、最上流から最下流まで一貫した情報を取り出すことができるでしょう。

そして、スマートコントラクトを活用し、これらの情報を前提に支払いなどの手続きを自動化することも可能です。

ブロックチェーンに向いている用途・向いていない用途

このように、ビジネスとの親和性に期待が膨らみがちなブロックチェーンですが、IT技術の例に漏れず、用途の向き不向きがあります。

まず、ブロックチェーンが向いているのは、参加者全員が全体最適化を図りたいと考えている場合です。

ブロックチェーンは確からしさを担保するために参加者間の合意形成を丁寧に行うため、個別最適で見た場合には、既存のデータベースよりも非効率的な部分があります。例えば、1つのサーバーでデータを保管して参照できるようにすれば、システムの運用主体は1社のみで済みますが、5社がそれぞれサーバーを用意し、それをブロックチェーンのノードとして運用してデータを共有しあうと、各社がノード運用の負担を負うことになります。

しかし、仮に5社がノード運用の負担を負ったとしても、全く同じデータを別々に保管していながら、それぞれの整合性が取れておらず、データ連携もできていないような場合には、ブロックチェーンでデータを共有し活用することで、全体最適化を図ることが可能です。

また、A社とB社のシステムは繋がっているが、A社とC社のシステムは繋がっていない。あるいはA社とD社のシステムは繋がっているが、その仕様がB社の仕様とは異なる、などシステム間が複雑に絡まりあった場合にも、ブロックチェーン活用が有効打となり得ます。

逆に、そもそもデータを共有する必要がない場合や、誰の利害とも衝突せず自社のみでデータを管理すればよい場合には、ブロックチェーンを活用するメリットは小さいでしょう。

次に、ブロックチェーンを用いることに意義が生じるのは、正しさが問われたり、監査を受けたりするデータを扱う場合です。特に、これまで取り上げてきた資産や権利、取引といった情報や、生産地情報や流通ログなどのように虚偽の申告が紛れ込みやすい情報を扱う時に真価を発揮します。

反対にテキストメモや写真データなどのように、誰かから確からしさを要求されることのない情報を扱うことには適していません。

現在時点の情報だけでなく、来歴などを把握するニーズがある場合もブロックチェーンの活用が検討されています。これはブロックチェーンが、過去の履歴と現在の履歴を結びつけながら情報を蓄積していく形式をとっているからです。

一方で、今この瞬間の最新情報だけがパッと分かればいいという性質の情報は、ブロックチェーン上で扱うのに適していません。

また、多数のノード間で情報を常に同期しあう関係上、容量の大きいファイルを扱うことは得意ではありません。このようなケースでは、ブロックチェーンにはあくまでデータのダイジェストや操作履歴だけを取り込み、元のファイル自体は別のシステムで保管することとなるでしょう。

以上をまとめると、ブロックチェーンが有効活用できるビジネスシーンとは次のような条件を満たすものとなります。

● 複数の関係者間でデータを共有・突合(とつごう)する必要がある場合
● 常に確からしさを要求され、時に外部から監査を受ける場合
● 過去から現在に至るまでの変遷・来歴を遡って確認される場合
● その他、信頼性の問題から電子化することが困難だった情報を扱う場合

超入門ブロックチェーン
森川夢佑斗
株式会社Ginco代表取締役。1993年大阪府出身。京都大学法学部中退。大学在学中にブロックチェーンの研究開発事業を開始し、2017年12月に株式会社Gincoを創業。2018年にスマホで簡単かつ安全に暗号資産を一括管理できるウォレットアプリ「Ginco」を提供開始。累計数千億円以上の暗号資産が流通するサービスへと成長させる。2019年には事業者の暗号資産活用を加速させるため事業者向けのウォレットシステム「Ginco Enterprise Wallet」を開発。現在はさらにデジタル証券の管理を行うウォレットシステムの提供に取り組むほか、金融のみならず幅広い分野でのブロックチェーン活用とDX支援に取り組んでいる。 2019年には、ブロックチェーン業界を代表する起業家としてForbes Next Under30、BUSINESS INSIDER「BEYOND MILLENNIALS」などに選出された。著書にベストセラーとなった『ブロックチェーン入門』(KKベストセラーズ)ほか、『ブロックチェーンの描く未来』(KKベストセラーズ)、『未来IT図解 これからのブロックチェーンビジネス』(エムディエヌコーポレーション)などがある。

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