要旨
今年の10月31日は第49回衆議院議員総選挙の投票日とハロウィンが重なる。株式市場では「ハロウィンの時期に株を買うと値上がりしやすい」とされる経験則があるが、まずは総選挙から2週間後の株価に注目だ。
日米株式のハロウィン効果
株式市場にはアノマリーと呼ばれる経験則がいくつかある。有名なのは「セル・イン・メイ」(5月に株を売れ)、「4月効果」(4月の日本株は上昇しやすい)、「1月効果」(1月の米国株は上昇しやすい)などだ。いずれも明確な根拠は無いが、よく当たるとされている。
「ハロウィン効果」もアノマリーのひとつで、「毎年10月31日のハロウィンの時期に株価が低くなり、翌年の春頃にかけて上昇しやすい」というものだ。昼の時間が短くなる時期は投資家が弱気になり株価が下落しやすい一方、冬至を過ぎると投資家が楽観的になるため株価も上昇しやすいなど諸説あるが、はっきりとしたことはわかっていない
実際、2000年以降について各月末から6ヶ月後の日経平均の騰落率(各月20回ずつの平均騰落率)を調べると、10月末から6か月が7.1%で最も高かった。しかし、これだけでは偶然ある年の騰落率が非常に高く平均値を引き上げたのかもしれない。
そこで上昇・下落した回数と各々の騰落率を確認すると、10月は20回のうち15回上昇で勝率トップとなった。上昇した15回の平均騰落率は12.9%だ。日経平均のハロウィン効果は信じるに値するかもしれない。
米国株でも同様に調べたところ、NYダウの平均騰落率は10月から6か月が5.9%で最も高かった。また、上昇・下落回数は12か月で単独トップの17勝3敗で、当然、勝率でも10月が最も高い結果となった。
今年のハロウィンは衆議院総選挙と同日
今年もハロウィン効果を期待したいところだが、ハロウィン当日の10月31日は衆議院総選挙の投票日と重なる。コロナ禍で政治への関心が高まっている中では特殊ケースともいえ、過去の経験則が当てはまらないかもしれない。
国政総選挙に絡むアノマリーに「選挙は買い」がある。「解散から投票日までは株価が上昇しやすい」とされ、背景には選挙戦で各党が大型の経済対策や社会保障制度の充実など“明るい未来”を掲げることがあるようだ。
では、投票日以降はどうか。2000年以降7回あった衆議院総選挙について、投票日直前の日経平均を100として、その後の騰落を示したものが図表3だ。株価が投票直前より高い状態を維持し続けたのは7回のうち3回のみだ。この結果を見る限り、総選挙後に株価が上昇し続けるとは言い切れないようだ。
より詳しく見ると、1週後や2週後の株価が高い場合は12週後にかけてさらに上昇する傾向があった(2012年、2005年、2017年)。2012年はアベノミクス始動、2005年は郵政解散で、「日本が変わる」と強く印象付けられた海外投資家の資金が流れ込んだ。
一方、総選挙の直後に株価が下落した場合は、12週後まで軟調な展開が続いたり(2009年)、投票前の水準程度までしか株価が戻らなかったりした様子も見られる(2003年)。
2000年と2014年は総選挙後の株価が安定しなかった。因果関係ははっきりしないが、与党第一党の議席数が4議席減にとどまった2014年は4週後に一旦下落した株価が再び上昇したのに対して、38議席減となった2000年は12週後にかけて株価の下落率が拡大した。
国内では新型コロナウイルスの新規陽性者数が目に見えて減少し、経済活動の段階的な再開が進む。一方、原油価格高騰など世界的な物価上昇が消費意欲や企業業績を圧迫しかねず、これまで順調だった景気回復に影を落としている。
今年もハロウィン効果がみられるかは来春にはっきりするが、まずは選挙結果とその後の株価に注目しておきたい。
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井出真吾(いで しんご)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 上席研究員 チーフ株式ストラテジスト
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